近年、気候危機により、多くの国が環境を配慮して温室効果ガスを排出しないよう、風力タービンや地熱発電および太陽光発電などの再生可能エネルギーの開拓と普及に力を入れている。
スイスもその国の1つだが、他国同様それらを設置するための物理的なスペースや制限、環境への規制などの問題がありなかなか容易ではない。
そこで、スイスにある新興企業「Sun-Ways(サン・ウェイズ)」は、線路間のスペースに着脱式の太陽光パネルを設置するという世界初の試みに挑戦した。
現在、連邦運輸局からの承認待ちだという。
【画像】 5月にテスト導入予定の線路上の着脱式ソーラーパネル
Switzerland set to roll out carpet-like solar panels between railway tracks | SWNS
スイス西部の町エキュブレンスに本拠を置く新興企業「Sun-Ways(サン・ウェイズ)」は、連邦運輸局からの承認がおりれば、今年の5 月に西部ビュート駅近くで、世界初の取り外し可能な太陽光発電設備を開始する予定だ。
ローザンヌにあるスイスの連邦技術研究所「EPFL」 の協力を得た“着脱式”の太陽光パネルの設置は、スイスが世界初となる。
Sun-Ways は、線路間に太陽光発電パネルを配置するシステムの特許をすでに取得済みだ。
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特別設計の列車でピストン式にパネルを敷き詰める
スイスの軌道整備会社「ショイヒツァー(Scheuchzer)」 が開発した特別設計の列車は、ピストン機構を使用して、幅1メートルの太陽光発電パネルを敷設しながらレールに沿って走行する。
2つの線路間のスペースにぴったりと収まる標準サイズのパネルは、個別に配置する代わりにカーペットのように展開していく。
これにより、設置が迅速かつ安価になるだけでなく、鉄道会社が定期的な軌道保守を行う必要がある場合に、一時的に撤去することも可能だ。
太陽光発電システムによって生成された電力は、家庭電力として使用されることになるという。
再生可能エネルギーの新たな可能性
エコ・イノベーションに大きな野心を抱いている同社は、将来的にはスイスの 5,317km(総面積サッカー競技場760面分)に及ぶ鉄道網全体(ただし、トンネル内や日当たりの悪い場所以外)に、さらには国境を越えてドイツやオーストリア、イタリアにも進出して、パネルを展開していくことを目標としている。
同社は、ソーラーパネルをスイス全土の鉄道網に設置すれば、年間 1 テラワット時 (TWh) の太陽エネルギーを生成できると見積もっている。
これは、スイス国内の年間電力消費量の約2%に相当する。
Sun-Waysの共同設立者バティスト・ダニヘルト氏は、このように話している。
世界には 100 万kmを超える鉄道路線があります。私たちは、世界の鉄道の 50% が当社のシステムを装備できると信じています。
ただし、ビュート近郊での試験的プロジェクトでは、同社はまだ多くのことを証明する必要があるようだ。
現時点では、国際鉄道連合(International Union of Railways)は、次のような懸念を示している。
・パネルからの太陽の反射が列車の運転手の注意をそらす可能性がある
・大雪が降る地域ではパネルが大きなお金の無駄になる
・レールの振動により、パネルに生じるかもしれない微小のひび割れや破損、ほこりの付着問題
Sun-Ways は、パネルの設計と材料はこれらすべての問題を考慮していると応えている、
同社のパネルは従来のものよりも耐性があり、パネルにつけた反射防止フィルターが電車の運転手のまぶしさを軽減することが可能だそうだ。
また、電車の下に取り付けたブラシが、通過時にパネルを自動的に掃くことで、ほこりはきれいに掃除できることが保証されている。
氷や雪が降ると、パネルが役に立たなくなる可能性があると指摘する声もあがっているが、Sun-Ways は凍結した沈殿物を溶かすシステムにも現在取り組んでいる最中であることを明かしている。
この取り外し可能なソーラーパネルシステムは、気候危機によってヨーロッパのエネルギー移行を加速することが求められている開発者たちにとって、新たな可能性を見出すことになりそうだ。
References:Solar panels could be installed in the spaces between railway tracks in world first / written by Scarlet / edited by parumo
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