増税のニュースが続く中、自分や家族の生活を守るために「税」に注目する必要があります。税金の意識が低いサラリーマンは、知らないで損をしていることが多いです。YouTube登録者数約35万人超(2023年3月現在)のYouTuberでもある税理士の田淵宏明氏と、本書で聞き手として登場する平岡直也氏の共著『なんで私の給料からイロイロ引かれるの? 税金弱者サラリーマンのお金の取り戻し方』(KADOKAWA)の中から一部を抜粋して紹介します。

世界一わかりやすい〈インボイス制度〉の解説

[平岡さん]

2022年夏の参議院選挙でも争点のひとつとなった「インボイス制度」。導入は2023年10月の予定だから、起業する方にもすごく重要なことだと思うんだけど、世論調査でも「よくわからない」の声が多かったり、フリーランスの方から「死活問題」と反対の声が上がったりと、スムーズに始まるか不透明だね。

そんな世論を見て、自民・公明両党の税制調査会は「納税を免除されてきた売上高1,000万円以下の事業者がインボイスを発行する課税事業者になる場合、納税額を売上時に受け取る消費税の2割に抑える特例を3年間設ける」という方針を掲げたんだけど……。そもそもインボイスって? 納税を免除されてきたって? 課税事業者って? 先生、お願いします(笑)。

[ヒロ税理士]

インボイス制度開始が近づき、正直これまで5000万回くらい説明をしてきたけど(笑)、制度が複雑すぎて、残念ながらほとんどの人が理解できていない様子……。そこで〈世界一わかりやすい〉インボイス制度の解説を目指します。

まず、インボイス制度とは、ざっくり言うと消費税に関する大きなルール変更です。個人事業主、会社経営者だけでなく、会社員が行う副業もアルバイト等の雇用契約でなければすべて対象。売上規模や業種等も一切関係なく、全事業対象です。

まず、インボイス制度がスタートすると自社が発行する「適格請求書」(または「適格簡易請求書」、以下略)に「適格請求書発行事業者の登録番号」=インボイス番号の記載が必要となります。この「適格請求書」はざくっと言うと請求書を、そして「適格簡易請求書」は領収書を意味すると覚えておいてください。「適格請求書等」にインボイス番号がないと、受け取った側、つまり支払い側では消費税の計算上、経費を支払った証明にならないこれってどういうこと? を説明していきます。

適格請求書等保存方式(インボイス制度)とは?

売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝えるものです。 具体的には、現行の「区分記載請求書」に「登録番号」、「適用税率」および「消費税額等」の記載が追加された書類やデータをいいます。

インボイス番号は、大文字のT+13桁の数字で構成されます。

法人の番号=法人番号(いわゆる法人のマイナンバー)の前にT 個人事業主=全く新しい番号を付与

このインボイス番号は国税庁の「インボイス制度適格請求書発行事業者公表サイト」にて、実際に取得された有効な番号かどうかの検索が可能となります。なお、氏名等からの逆検索はできないので、これが勤務先への副業バレにつながることはほぼないので、ご安心ください。

 

[ヒロ税理士]

さて、いよいよ本題に入っていきます。消費税の計算の仕組みは、ほかの所得税法人税等と異なりちょっと複雑です。事業者が商品を販売・サービスを提供する場合は

お客様から本体価格の8%または10%を預かる ➡国に納める

と、「儲け」となるわけじゃなく「預かっているだけ」です。

一方、事業者は、さまざまな経費を支払い、その経費の支払いの際にも、8%または10%の消費税を支払っています。これをさきほどの「預かった消費税」から差し引きすることができます。これを専門用語で「仕入税額控除」と言います。

これが、その支払領収書や請求書にインボイス番号の記載がないとできなくなるのです。

適格請求書等保存方式(インボイス制度)とは?

 

個人事業主の伊佐川さん。これまでは

 

売上が1,000万円で、経費が500万円 納めるべき消費税は 売上 1,000万円 ×10%=100万円 経費 500万円 ×10%=50万円 100万円-50万円=納めるべき消費税は50万円 

 

ところが、インボイス制度が始まり、仕入先がインボイス番号を持っていないと、「仕入税額控除」ができなくなるため、結果、100万円の消費税を納めないといけないことになります。つまり、インボイス番号のない仕入先の消費税を負担するという意味です。

だから伊佐川さんも仕入先の領収書や「請求書」にインボイス番号の記載を義務付けるわけです。

 

[平岡さん]

じゃあ、みんなインボイス番号を取得したらええやん……と思うけど、そう単純じゃないのか。

[ヒロ税理士]

番号の取得手続き自体は国税庁のサイトで簡単にできますが、ポイントとなるのは、インボイス番号を取得できるのは、消費税課税事業者」であることなんです。

[平岡さん]

なるほど。さきほど、「個人事業主も法人も、最初の1期は消費税免税事業者、2期目も条件はあるけれど消費税免税」とあったけど、これだと取得できないんや……。

[ヒロ税理士]

そう! 「消費税免税事業者」でも、事前申請をすることによって「消費税課税事業者」となれるけど、免税という“特典”を手放すことになる。しかし、インボイス番号を持たない「消費税免税事業者」は取引から排除される可能性が高いため、「消費税課税事業者」にならなければならない。

もちろん、絶対そうなるわけじゃない。仕入先の貢献度や能力、今までの人間関係を考えて、ひょっとしたら伊佐川さんは相手がインボイスを持たなくとも、消費税分を支払ってあげるかもしれない。そこは双方の合意があればどちらでも良いのだ。

とはいえ、いきなり2023年からスタートすると、特に小規模な免税事業者にとっては死活問題となりかねないので、一応下記のような経過措置を設けています。仕入先がもしインボイス番号を取得していなかったとしても、一部は仕入税額控除ができる形です。

小規模クリエイター・フリーランスへの救済措置

【当初6年間の経過措置】

取引先が「消費税免税事業者」でも…… 2023年10月1日2026年9月30日 ➡ 80%控除可 2026年10月1日2029年9月30日 50%控除可

さらに平岡君もご存じの通り、令和5年度税制改正によって消費税の激変緩和措置が講じられる予定だ。課税売上1,000万円以下の事業者がインボイス番号を取得して免税事業者から課税事業者になった場合、当然ながら今まで納める必要のなかった消費税の負担が増えて、確実に手取り収入は減少する。

この急激な負担増が大きすぎるので、3年間は預かった消費税の20%だけ納めればOK、という措置だ。これ、小規模なクリエイターやフリーランス等の人にはとても助かるね!

(※画像はイメージです/PIXTA)