
腕時計投資家の斉藤由貴生です。
新車も中古車も高いといわれている現在ですが、その一方で中古車情報サイトを見ると、総額30万円といった「激安中古車」が多々存在します。しかし、そんな「激安中古車」を実際に購入する人は少なく、一般的に激安中古車は「安物買いの銭失い」になるのではないか、と思われているようです。
ということで、実際に激安中古車を何台も買ったことがある私が、自分自身の経験をもとに「激安中古車はありなのか?」ということをお伝えしたいと思います。
◆激安中古車の定義
クルマの購入には様々な方法がありますが、今回紹介するのは、オーソドックスに「中古車屋さんで買う」という場合。現在、中古車情報サイトを見ると、支払総額が最も安い商品は「4万円」となっています。
とはいえ、総額4万円のクルマは走行距離が10万キロ以上の軽自動車。修復歴なし、走行距離5万キロ程度といった条件にすると、10万円ぐらいが最安値となります。
ただ、それでは選択肢が少なく車種も偏り気味となるため、今回は支払総額50万円程度ぐらいまでを「激安中古車」としたいと思います。総額50万円でもクルマの金額としては、十分安いといえますが、これぐらいの予算を出すと、選択肢はだいぶ広がります。
◆総額50万円で買える車種
総額50万円という予算だと、どういった車種が購入可能なのでしょうか。先程のように、修復歴なし、走行距離5万キロ程度といった条件の場合、以下の車両が現在売られています。
・軽自動車(2013年式のスズキワゴンR等)
・5ナンバーハッチバック(2013年式のトヨタヴィッツ等)
・5ナンバーセダン(2012年式の日産ブルーバードシルフィ等)
・5ナンバーミニバン(2010年式の日産セレナ、2011年式のホンダオデッセイ等)
・3ナンバーセダン(2009年式スバルレガシィ、2004年式日産シーマ等)
・3ナンバーミニバン(2005年式のホンダエリシオン等)
・輸入車(2012年式のVWゴルフ、2004年式のBMW5シリーズ等)
以上のように、総額50万円も出すと、軽自動車から国産高級車、新車価格700万円近い輸入車まで選り取り見取りといった状態です。
これら車種には、エアバッグはもちろん、サイドエアバッグやカーテンエアバッグといった安全装置、またミニバンには両側電動スライドドアといった快適装備が備えられており、キーレスエントリーも当たり前についています。
ですから、現在の新車と比べても“ハッキリとした差”は少なく、普通に便利に普段遣いできる内容のクルマが「普通に総額50万円で購入可能」であるわけです。
昨今、新車価格はどんどんと上昇し、今や軽自動車でも200万円超えが当たり前という時代。また、半導体不足によって新車の納期が長くなったことにより中古車需要が増え、中古車相場も高くなっているといわれています。
しかし、そういった一方で、快適装備がついたクルマが総額50万円で買うことができるのです。そうなると、激安中古車を検討する価値があると思うわけですが、多くの人は、「安すぎる」ということに抵抗感があるようです。
◆激安中古車の怖さ
一般的にクルマの予算として、なんとなく「安くても100万円から200万円ぐらい」という感覚があるようで、中古車を選択する場合でもそのぐらいの金額で検討する方が多いように感じます。実際、200万ぐらい出すと、新車に近い年式のクルマを狙うことができる場合が多いですし、なんとなく「故障リスクが低そう」という感覚があるのでしょう。
となると、総額50万円以下の激安中古車には、「安すぎるゆえにリスクが高いのでは」という思いがあるのだと思います。
また、トップギアやcarwow等の海外メディアでも「激安中古車を買う」というシリーズがありますが、壊れる場面がお約束のように登場。つまり、激安中古車は「安いからそれなり」という感覚が世界的にあるといえるわけです。
しかし、そういった激安中古車の“当たり前”は、あくまで海外の話。私は、日本は「極上の激安中古車パラダイス」だと断言します。
◆日本の中古車事情
海外の激安中古車の場合、走行距離が20万キロ程度、なおかつ内外装が汚いというのが当たり前といった感覚がありますが、日本の場合は走行距離5万キロ程度、なおかつ内外装もきれい、という車両がゴロゴロしているわけです。
そうであるがゆえに、日本の中古車は、アフリカ等の開発途上国に輸出されているようですが、そういった需要を除いても、条件の良い激安中古車が存在できるほど日本の中古車供給量は豊富であるわけです。
つまり、日本の中古車は、きちんとしている車両でも、単に需要が低いから「安い」わけで、世界的に見るパラダイスのような環境だといえます。
◆激安中古車は壊れるのか
さて、激安中古車は買った後に「やっぱりお金がかかる」ということになるかというと、私個人の経験としては、「そんなことはない」といえます。
激安中古車を買ったことがない人からすると、“オートマ”、“エアコン”、“パワステ”といった高い修理代になる項目が「いかにもぶっ壊れそう」という感覚があるかもしれませんが、これまで激安中古車を何台も買った私は、そういった目にあったことはありません。
◆【斉藤由貴生の激安中古車遍歴】
<お金がかからなかった車種の例>
・日産マーチカブリオレ(CVT) 50万円
⇒所有期間:2年 走った距離:1万キロ
・日産マーチカブリオレ(5MT) 0円
⇒所有期間:2年 走った距離:1万キロ
・トヨタ 初代プリウス 50万円
⇒所有期間:4年 走った距離:5万キロ
・三菱コルトプラスラリーアート 50万円
⇒所有期間:4年 走った距離:5万キロ
・トヨタセルシオ B仕様 38万円
⇒所有期間:2年 走った距離:2万キロ
・トヨタクラウンエステート アスリートV 50万円
所有期間:4年 走った距離:4万キロ
上記は、タイヤ交換やオイル交換といった、“どのクルマでもかかる消耗品交換”や車検法定費用、自動車税、任意保険以外に、お金がかからなかったといえるクルマでした。
<お金がかかった車種の例>
・ロールスロイス シルバースパー 50万円⇒車検時の整備費用:80万円
⇒所有期間:半年 走った距離:5000キロ
・ベンツ 230E(W124) 33万円⇒整備費用:30万円
⇒所有期間:3ヶ月 走った距離:3000キロ
・ベンツ C240(W202) 23万円⇒整備費用:30万円
⇒所有期間:1年 走った距離:1万キロ
これらは、購入後に整備代として10万円以上の金額がかかった例ですが、輸入車の消耗品交換代は高いといえます。ただし、ベンツのC240はあえてお金をかけたいから直した部分もあるため、もっと安価に乗ることもできたといえます。
<失敗した車種例>
・ユーノスコスモ 13B
私が「明らかに失敗した」という例として、程度が悪いユーノスコスモを買ってしまったという例があります。総額30万円で買ったものの、停止時にハンドルを切るだけでエンストし、エンジンオーバーホールが必要な状態。これは、「程度が悪いクルマ」を買ってしまったから失敗したという例であります。
◆個人的な経験からいえるのは
これまで、様々な中古車を購入した私の経験からいえるのは、「程度の良い車両」さえ選べば、購入後に「大きなトラブル」に遭遇する確率は低いということであります。また、ある箇所がダメで修理代が10万円程度かかったとしても、「そこさえ直せば、長く乗れる」という場合(例:ベンツC240)もあるため、直す価値があるぐらい程度が良いクルマを買うのが決めてだといえます。
程度が良いクルマを購入することができたなら、車両代金が安価だからといって、オートマ故障といった大きな故障にあう確率は低いと思います。
また、輸入車は国産車よりもお金がかかる傾向にあるといえますが、車両代50万円+50万円といったように、整備の予算をある程度確保すれば、快適に乗ることができるといえます。
クルマの基本的な維持費は、自動車税、車検法定費用(重量税+自賠責)、任意保険、燃料代だといえます。それらは、車種ごとに事前にシミュレーションができるため、購入する前に「どのぐらいお金がかかるのか」計算することが可能です。
しかし、壊れた場合の修理代は、買う前にシミュレーションすることは不可能。だから、激安中古車は「なんとなく怖い」と思ってしまうわけですが、程度の良いクルマ、なおかつ壊れにくい国産車を選ぶことができれば、安価で快適に乗ることができるわけです。
また、最近ではトヨタなど、ディーラーの認定中古車が最大3年の延長保証料を含めても、総額50万円程度という車両があるため、それを選べば「修理代のリスク」はグッと減らすことが可能になります。実際、私もクラウンエステートをトヨタ認定中古車で購入し、3年保証をつけたことがありますが、それによって修理代0円で4年乗ることができました。
以上、激安中古車は「あり」なのかを考えてみましたが、結論は「多いにあり」となります。
私の個人的な経験、及び日本の中古車事情を考慮すると、「激安中古車」こそ、最も良いクルマの買い方なのではないか、と思います。
<文/斉藤由貴生>
【斉藤由貴生】
1986年生まれ。日本初の腕時計投資家として、「腕時計投資新聞」で執筆。母方の祖父はチャコット創業者、父は医者という裕福な家庭に生まれるが幼少期に両親が離婚。中学1年生の頃より、企業のホームページ作成業務を個人で請負い収入を得る。それを元手に高級腕時計を購入。その頃、買った値段より高く売る腕時計投資を考案し、時計の売買で資金を増やしていく。高校卒業後は就職、5年間の社会人経験を経てから筑波大学情報学群情報メディア創成学類に入学。お金を使わず贅沢する「ドケチ快適」のプロ。腕時計は買った値段より高く売却、ロールスロイスは実質10万円で購入。著書に『腕時計投資のすすめ』(イカロス出版)と『もう新品は買うな!』がある

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