ホンダ発のベンチャー企業が開発するパーソナルモビリティ「ストリーモ」がさらに進化、原付1種モデルとは別に免許不要となる「特定小型原付」モデルもつくります。ただ、市場投入はまたもや延期に。先行購入者の期待に“性能アップ”で応えようとしています。

ホンダ「ストリーモ」パーソナルモビリティの波に乗れるか

ホンダ発のベンチャー企業ストリーモ(東京都墨田区)は2023年3月20日、電動パーソナルモビリティ「Striemo(ストリーモ)」の一次先行抽選予約者に向けて、性能向上を目的とした仕様変更と、7月1日施行の道路交通法改正にあわせた「特定小型原付」モデルの発売を公表しました。また、この4月に予定された引き渡しが、8~9月に遅延することも明らかにしました。

「ストリーモ」は、前1輪+後2輪の立ち乗りパーソナルモビリティで、開発を手掛けるストリーモ社は 、ホンダの新事業創出プログラムIGNITIONイグニッション)から生まれたベンチャー企業です。2022年6月に「ストリーモ」が26万円で発表されると、高い注目を集め、オンラインで300台とされた一次先行予約は、すぐに 締め切られました。

原付1種のカテゴリーで、原付免許か普通免許で運転することを想定していた「ストリーモ」です が、今回、同社は運転免許不要の「特定小型原付」としても発売することを明らかにしました。直近の対応では予約分の300台に対して、どちらかを選択できるようにしています。

特定小型原付はヘルメット着用努力義務で免許不要、16歳から誰でも乗ることができるため、利用者が速度20km/h以下という制限を許容できる場合には、よい選択肢の一つとなります。

ただ、国内納期を2022年中、欧州販売を2023年とした供給計画は、予約時点で2023年4月末に。そして今回さらに、原付1種モデルは8月、特定小型原付は9月へ遅延することになりました。「部品調達の遅れやコロナ禍での生産工場の一時的閉鎖など複合的な影響」と、同社は説明します。

ストリーモ社は、この問題に対して「ストリーモ」の走行性能を大幅に引き上げることで、予約者の引き止めを図っています。

市場投入前に走行性能の大幅アップ ちょっと“映える”リバース機能も

「ストリーモ」原付1種モデルの最も大きな仕様変更は、プロトタイプ比最大トルク2.5倍の遊星ギア内臓モーターを採用したことです。この駆動モーターの変更は、登坂能力の大幅な向上を目的としており、体重75kgの乗車時で、最大発進可能勾配17.5%、最大登坂可能勾配20%以上を実現しました。

また、新しくリバース(後進)機能が追加されました。電動キックボードのような立ち乗り型パーソナルモビリティのほとんどは、停車時にはバランスが崩れるため、乗車したまま自立させることができません。「ストリーモ」は、「重心バランスを計算した緻密な設計と独自のバランスアシスト機構」で、乗ったままでの停車が可能です。リバース機能を使えば、より簡単な方向転換ができ、一般的な電動キックボードとの違いを際立たせます。

このほかにも以下のような変更や追加を明らかにしました。

ディスプレイ側面にスマートフォンなどの充電が可能なUSBソケット(Type-C)を追加。
・耐久性、安定性向上のための諸元変更および各部剛性アップ。
スロットル操作のコントロール性向上のための制御プログラム更新。
・制動力向上とコントロール性を高めた機械式フロントディスクブレーキの採用。
・乗車時に足が滑りにくくなるラバーマットをステップボード上面に追加。
・乗車時の疲労軽減に寄与する大きくソフトなハンドルグリップに変更。
・他者からの被視認性に配慮したフロントおよびサイドリフレクターの追加。

納期が問題になる場合、3月末日までに申請すれば、購入キャンセルとデポジット(5万円)返金対応にも応じます。

パーソナルモビリティの世界は、電動化と制御技術の向上により、ここ数年で新しい乗り物を予感させる進化を続けています。それが社会実装につながるかどうかは、ひとえに製品の供給のタイミングにかかっています。

パーソナルモビリティ「ストリーモ」(ストリーモの映像より)。