児井正臣氏の著書『自然災害と大移住――前代未聞の防災プラン』より一部を抜粋・再編集し、日本における自然災害についてみていきます。

年々規模と数が大きくなる「日本の自然災害」

日本は自然災害の多発地帯にある。

地球は十数枚のプレートに覆われており、このうちユーラシア、北米、太平洋フィリピン海の4つのプレートの境界が集まったところに日本列島がある。だから地震と火山噴火が多い。近年世界で発生するマグニチュード6以上の地震の1割以上は日本で発生している[図表1]。

また太平洋に面した弧状列島であることから台風の直撃や、最近は異常気象による風水害、さらには豪雪も多い。特に台風については、毎年30近く発生しているが、そのうち半数は日本に接近し、さらに10%以上が上陸している[図表2]。

そして山が多く平野が少ない。そのような日本列島によくこれだけたくさんの人が住んでいるものだと思う。明治維新の頃の日本の総人口は3400万人程度だったが、それは適度の気温と降雨量による豊かな植生がそのくらいの人口を養うのに十分な食料を供給できていたからだったのだろう。

今次大戦に向かい兵力として「産めよ、増やせよ」政策が続き、敗戦で多くが亡くなったものの、終戦時1945年にはおよそ7200万人と倍以上になった。

その後さらに増加を続け、2008年には約1億2800万人となった。もちろん食料やエネルギー資源の自給はできず、かなり多くを輸入に頼っている。人口はこの年をピークに減少に転じているのだが、よくこれだけの人口を抱えているものだと思う。

そして自然災害だが、最近その規模が年々大きくなってきている。台風の上陸数も増え、ここ10年間の年間降水量も過去の平均より多く、特にここ数年は50年に一度とか100年に一度、或いは観測史上始まって以来の豪雨とかいう表現をよく耳にする[図表3]。

また地震については、研究が進み海溝型地震についてはある程度周期性があることがわかり、南海トラフの地震が30年以内に70%の確率で発生するといわれている。

「危険なところに多くの人が住んでいる」日本の実態

しかし首都圏直下型地震などは明日にも発生するかも知れず、島嶼(とうしょ)部を除く東京については震度6以上のものが大正時代関東大地震以来100年近く起きていないのが不気味である。

自然災害に対しては、日本列島の位置という自然から与えられた宿命とでもいうべきものがあるが、日本ではそれをさらに大きくしているものがある。

それは危険なところに多くの人が住んでいることであり、そのなかでも東京一極集中が過度になっていることである。もちろん誰もが好んで危険地域に住んでいるのではなく、そういうところに住まざるを得ない理由がさまざまあったし、また一極集中にならざるを得ない理由もさまざまあった。

この問題は以前から多く指摘されており、是正のための多くのアイデアはあるもののなかなか進まない。それどころかいまだに東京都の人口が増え続けている。

一方で日本の人口減少が始まり、それが加速化し、地方都市や山間、離島などは急速な人口減が進んでいる。そういうところに東京の人を移せば良いではないかと誰でも考えるが、それが現実には進まない。

でも自然災害による危機が迫ってくるなか、そういつまでも手を拱(こまね)いているわけには行かない。こういうことは常識にとらわれない、思い切った、とんでもない発想が必要である。

そのような発想から、東京の江東5区については全面的な移住と跡地の遊水地化を、大河川流域の危険地域も同様の移住を、土砂災害対応として広島市には都市規模の半減化を提案するとともに、地震の影響を少しでも減ずるための東京の一極集中是正、そのための大企業の本社移転を提案する。

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児井 正臣

1968年3月 慶応義塾大学商学部を卒業(ゼミは交通経済学)。

1968年4月 日本アイ・ビー・エム株式会社に入社。

1991年12月 一般旅行業務取扱主任者主任補の資格を取得。

(※写真はイメージです/PIXTA)