皆さんの周りに「完璧主義者」と呼ばれる人はいますか? また、「完璧主義」や「完璧主義者」に対してどのようなイメージを持っていますか?

自身の経験から「タスクをミスなくこなしてくれそう」「我が強くて近寄りがたい」などさまざまな思いを抱いていると思います。

多くのアスリートは成果にプライオリティをおいていると思いますが、完璧主義なアスリートのメンタルは結果を出す上で果たして有利になるのでしょうか。特に、チームプレーを行う競技において、完璧主義者の役割や、付き合い方が気になるという方もいると思います。 この記事ではそんな完璧主義について、若年アスリートの完璧主義と社会性の関係について解説します。

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アスリートの完璧主義

ここではアスリートが完璧主義を持つことについて、完璧主義の概念や特徴を含めて解説します。

そもそも完璧主義とは

そもそも、完璧主義という言葉を普段何気なく使っているが、具体的にどのような状態を刺すのかよく分からないと感じている方もいるのではないでしょうか。 心理学における完璧主義とは、物事に対して「ミスなく全てのことをこなしたい」という欲求が過度に強くなりすぎたり、持続しすぎてしまうことを指します。

この欲求は程度に差はあれど、誰しも少なからず持っているものです。ただし、完璧主義者には、多くの人に見られる行動である「時間の経過に伴い執着しなくなる」「見切りをつける」といった変化が生じません。

完璧主義者の持つ特徴

完璧主義者にはいくつかのパターンが存在しますが、多くの場合で物事が期待通りに進まないと全てが失敗であると認識してしまうという点が共通しています。 これは全ての行動は善良で正しくなければならないのだ、という義務感の裏返しであると考えることもできます。また、「満点以外は0点と等しい」「一瞬でもミスが生じれば成功とは言えない」といった極端に二分する考え方をするようになります。

意外なことに完璧主義者の中には「少しでも汚れてい流のであれば何もしない方が良い」「少しくらい練習を休んでも良いだろう」といった、どうせ100点ではないから0点を目指す考え方をするようになる人もいるそうです。 このように完璧主義を持つ人には「非常に強い義務感」「極端に二分する考え方」という特徴が多く見られます。

完璧主義なアスリートは結果を残すのか

完璧主義を持つアスリートが成績を残すことができるのか気になる方も多いと思います。 一般的に完璧主義者は成果にこだわるため結果を残しやすいと言われます。 反面、失敗を恐れるあまり好機を逃すこともあるそうです。

チームプレーの競技では自身のこだわりを貫き通そうとするあまり、そりが合わず結果的に成果を出すことができない場合もあります。 特に、完璧主義者の大きな特徴である「非常に強い義務感」「極端に二分する考え方」はこうした行動につながりやすいと考えることができるでしょう。

完璧主義者の特徴は時に弱点にもなり得ますが、時と場合を選んで能力を発揮することで結果に大きく寄与することもあります。 もし、完璧主義のアスリートが結果を残したいと考えるのであれば、いま執着していることは成果にとってどのように繋がるのかをまず考えてみることも重要なのではないでしょうか。

完璧主義なアスリートは集団に馴染みにくい?

完璧主義は、競技などの競争の求められる環境では成果を発揮することがあります。 ただし、組織や社会に適応することは苦手で、適応から離れていってしまうことも少なくありません。

特に、完璧主義な若年アスリートのメンタル面での社会的な育成について気になったことのある方もいるのではないでしょうか。 今回がスペインのグラナダ大学による研究「Be Prosocial My Friend: The Social Disconnection Model of Perfectionism in Adolescents Immersed in Competitive Sport(2022)」(※)を元に若年アスリートの完璧主義と社会性の関係について解説します。

完璧主義なアスリートの社会性

この研究ではさまざまなスポーツに取り組んでいる234人の青少年アスリート(平均16.1歳)にリッカーと尺度という手法を使ったアンケートを実施し、完璧主義な層を分けた上で利他性の検証を行いました。

この結果、完璧主義に求められるような高い競争性が社会への適応を阻害していることが示唆されました。

また、これは学業にも影響していて、成績の低下も見られたようです。 この研究では、完璧主義な若年アスリートの社会適応性について、適切な動機付け環境づくり、大人のリーダーシップによる積極的な変革が効果的であると述べられています。

まとめ

完璧主義者のメンタルには「義務感が強い」「完遂にこだわる」など、アスリートにとって理想的な特徴が多く存在します。 一方で、これらの特徴を発揮する際には時と場合を選ぶ必要性に迫られることもあり、特にチームプレイでは調和を乱すきっかけとなってしまうこともあります。

完璧主義はむやみやたらに発揮したり頭ごなしに抑制するのではなく、うまくコントロールして成果に繋げることができるように意識しましょう。

(※)参考文献https://www.mdpi.com/1660-4601/20/4/2887

[文:スポーツメンタルコーチ鈴木颯人のメンタルコラム]

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

一般社団法人日本スポーツメンタルコーチ協会
代表理事 鈴木颯人

1983年イギリス生まれの東京育ち。7歳から野球を始め、高校は強豪校にスポーツ推薦で入学するも、結果を出せず挫折。大学卒業後の社会人生活では、多忙から心と体のバランスを崩し、休職を経験。
こうした生い立ちをもとに、脳と心の仕組みを学び、勝負所で力を発揮させるメソッド、スポーツメンタルコーチングを提唱。
プロアマ・有名無名を問わず、多くの競技のスポーツ選手のパフォーマンスを劇的にアップさせている。世界チャンピオン9名、全日本チャンピオン13名、ドラフト指名4名など実績多数。
アスリート以外にも、スポーツをがんばる子どもを持つ親御さんや指導者、先生を対象にした『1人で頑張る方を支えるオンラインコミュニティ・Space』を主催、運営。
『弱いメンタルに劇的に効くアスリートの言葉』『モチベーションを劇的に引き出す究極のメンタルコーチ術』など著書8冊累計10万部。

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