
’22年に発生した炎上事件は1570件(『デジタル・クライシス白書2023』より)。一日平均4.3件。今日もどこかで誰かが燃えている。特に、回転寿司チェーン「スシロー」での迷惑動画がSNSで拡散されたことが記憶に新しいが、犯人の個人情報を晒し、実家や所属先にまで社会的損害を与える“制裁”は、いきすぎた正義ではなかろうか。更生の余地すら与えない現代デジタル社会の闇、あなたの正義感は果たして正しいのか、今、試される─。
◆何が“世直し”だよ気持ち悪い
近年は人気インフルエンサーの“拡散”に端を発する炎上も増加している。そのひとりとして度々ネット界隈をざわつかせているのがZ李氏だ。
’18年に公営ギャンブルの予想集団『新宿租界』のボスとして現れ、Twitterで77万人ものフォロワーを抱える一方、経歴や素性は一切不明。独自のルートで得た暴行、詐欺、窃盗などの情報を投稿し、時には強面風の仲間を使いSNSで実況解決。保護猫支援や炊き出しまで行う、人呼んで“表と裏の境界線上にいるインフルエンサー”だ。
彼を「正義の味方」と慕うフォロワーは多く、詐欺被害者や困った人からのDMでのSOSは後を絶たない。SNSで“世直し”を続ける理由を聞いた。
「世直し? いつから俺が正義の味方だと思ってたんだ。世直しなんて思ったことねぇよ。そういう言われ方をするのは気持ち悪いし、イラつくからやめてほしい。本気で許せないことがあったときに『コイツムカつくなあ』って発信しちゃいけないの? フォロワーが多いから胸に留めておけとでも言うのか?
告発をビジネスにするようなヤツもいるけど、俺はそんなこと考えながらやってないし、そんなんで飯を食おうとも数字を稼ごうとも思ってない。俺だっていくらか人よりは銭あるんだよ。それを、ただただタンスや銀行にでも入れておけばいいの?
保護猫支援や炊き出しだって、困ってる人や動物に再分配しようってのが美談やら世直しやらになるのが気持ち悪い。あんただって失ってもいい1000万円があったらどうする? 貯め込むか? いいことに使いたいと思わない?」
◆太らせてるのは誰だ?
しかし、彼を含めた人気インフルエンサーが火種を拡散することで炎上を助長しているという批判があるのも事実。こうした声にどう思うか。
「さっきも言ったけど、わざとやってる野郎と俺を同列に語るな。わざとやってるヤツにしたって、雑誌が人の不幸を銭に換えてたのがSNSに移行しただけだろ。そういうの専門のヤツにでも聞けば? 本当にマシーンになって『求められてるものを発信することだけを意識してる』って言ってる知り合いもいるにはいるから、繫ぐか?
まあよ、鬱屈して人が転落するのを見て白飯三杯食えるってヤツが増えただけだろ。そういうの、発信する側だけのせいにしないほうがいいよ。『太らせてるのは誰だ?』ってね」
◆「印象に残ってる告発」なんかない
彼がSNSで告発したことがきっかけで警察が動き、書類送検やスリの犯人特定に繋がった事例もある。印象に残っている告発についても聞いてみた。
「ねえよ、そんなもん。そのときの怒りはそのときがピーク。一発屋の思い出話みてえなのを俺にさせるな。思い出なんかを抱えて俺は生きてねえ。今を生きろ。過去の怒りや栄光は忘れろ。明日起きたらまた何もない自分がいる。そう思って生きてる。くだらねえインタビューだな。マジによ。本出してくれた出版社だから答えたけど。勘違いだけはするなよな」
取材・文/週刊SPA!編集部
※3月28日発売の週刊SPA!特集「[炎上させすぎ(偽)正義]社会の闇」より

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