所有者が不明の土地に対する法律が改正され、令和5年4月から施行される。教えて!gooでも「相続登記の義務化」と題した質問が投稿されており、このあたりの問題について興味がある方は多数いるようだが、具体的に4月から何がどう変わるのだろうか。

そこで今回は所有者不明土地の問題と対策、そして今後の見通しについて法律の専門家である井上義之弁護士(富士見坂法律事務所代表)に話を聞いてきた。

■所有者不明土地に対する法律が改正されることになった背景

まずは所有者が不明の土地に対して今回のような法律が改正されることになった、その背景や経緯を伺った。

「所有者不明土地とは、土地所有者が住所を変更したり死亡したりしたにもかかわらず登記申請をしなかった結果、不動産登記簿から直ちに所有者がわからなかったり所有者と連絡がつかない土地のことを言います。所有者不明土地は、土地の有効活用ができなかったり、管理不備により隣接地への悪影響を及ぼしたりすることが多く、社会問題になっていました。そこで、そうした問題を解決するため、新たな法律の制定及び既存の法律の改正により、段階的に対策がとられてきました。令和5年4月から施行される対策もその一環です」(井上義之弁護士)

東日本大震災の後、被災した集落を高地に移転させようと、県が土地を購入しようとしたそうだが、所有者不明で非常に時間がかかったという。

■4月から変わる4つのポイント

では令和5年4月1日から施行される所有者不明土地対策によって何がどう変わるのか伺った。

「所有者不明土地の有効利用をはかるための対策が中心です。以下、主要なものをご紹介します」(井上義之弁護士)

(1)相隣関係ルールの見直し

「今回の改正で、相隣関係の一般的ルールとして、工事や測量などのための隣地の一時使用や隣地に水道管などのライフラインを設置する際の規律が整備されます。また、一定の場合に土地所有者が隣地から自分の土地に越境してきた枝を切除できるようになります。そして、隣地が所有者不明土地である場合でもそれらのルールが適用できるような手当がなされています」(井上義之弁護士)

(2)共有制度の見直し

「所有者不明土地は、多数の相続人による共有状態になっていることが多いのですが、従来の共有制度では土地に軽微な変更を加える場合でも共有者全員の合意が必要になるなど土地の利用や管理が阻害されていました。今回の改正では、軽微な変更について共有者の持分価格の過半数で決定できることになります。また、共有者の一部と連絡がつかなかったり賛否を明らかにしなかったりした場合であっても裁判所の関与のもとで一定の管理行為ができるようになります。さらに、共有関係を解消しやすくする仕組みも創設されます」(井上義之弁護士)

(3)所有者不明土地管理制度等の創設

「所有者不明土地や管理が適切に行われていない土地について裁判所が管理人を選任する制度が創設されます」(井上義之弁護士)

(4)相続制度の見直し

「所有者不明土地の解消を容易にするため、相続開始から10年経過した場合、原則として特別受益や寄与分の規定の適用がなくなり、シンプルな法定相続分で遺産分割できるようになります」(井上義之弁護士)

■今後の見通し

今後、予定されている所有者不明土地対策があるのか聞いてみた。

令和5年4月27日から、一定の条件のもとで相続により取得した土地を国庫に帰属させることができる仕組みがスタートします。また、令和6年4月1日から、相続登記が義務化されます。これらは、所有者不明土地をそもそも発生させないようにする対策といえます(井上義之弁護士)

事後だけでなく、今後は事前対策も行っていくとのこと。この手の問題が早く解消されることを望むばかりだ。

専門家プロフィール:弁護士 井上義之(第一東京弁護士会) 事務所HP ブログ

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ライター o4o7/株式会社MeLMAX
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