電子機器受託製造サービス(EMS)大手の台湾・和碩聯合科技(ペガトロン)がインドで2つ目の工場開設を計画していると、ロイターが3月23日報じた

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 米アップルのスマートフォン「iPhone」の最新モデルを組み立てる工場だという。ペガトロンは半年前に1億5000万米ドル(約200億円)を投じて、同社初のインド工場を稼働させたばかり。アップルが中国への過剰依存から脱却を図り生産拠点の分散化を目指すなか、サプライヤー企業も協力姿勢を示している。

 インド第2工場の場所は、南部タミルナドゥ州チェンナイ近郊のマヒンドラ・ワールド・シティ工業団地内。同社が2022年9月に開設した最初の工場のすぐ近くだとロイターは報じている。ペガトロンは現在、工場施設のリース契約に関して交渉を進めている。新しい工場は最初の工場よりも小さいと関係者は話している。

インドのスマホ輸出、5割がiPhone

 インドはアップルにとって次の成長フロンティアだといわれている。業界団体のインド携帯電話・電子機器協会(India Cellular and Electronics Association、ICEA)によると、22年4月から23年2月までに約90億米ドル(約1兆1800億円)相当のスマートフォンがインドから輸出された。そのうちiPhoneは50%以上を占めている。

 また、香港の調査会社カウンターポイントリサーチによると、ペガトロンは現在、インドにおけるiPhone生産の10%を手がけている。

 アップルとその主要サプライヤー企業は、米中貿易摩擦による事業リスクを回避するべく、中国からの生産移管を進めている。アップルは17年にEMS大手の台湾・緯創資通(ウィストロン)と提携しインドでiPhoneの生産を始めた。その後、EMS世界最大手である台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業もインド生産を開始した。一方、ペガトロンは近年、東南アジアや北米での事業拡大を目指してきた。

「AirPods」もインド生産へ

 インドは世界第2位のスマートフォン市場であり(独スタティスタのインフォグラフィックス)、アップルはタブレット端末「iPad」やワイヤレスイヤホン「AirPods」のインド生産も計画している。

 ロイターによると、インド南部カルナタカ州は23年3月21日、ホンハイによる9億6800万米ドル(約1300億円)の投資を承認した。これにより同州で5万人の雇用創出が見込まれるという。ロイターはこれに先立ち、ホンハイがアップルからAirPodsの製造を受注したと報じていた。ホンハイは2億米ドル(約260億円)を投じ、AirPods製造工場をインドに建設する計画だという。

アップル、依然中国に大きく依存

 ただ、カウンターポイントによると、現在、iPhoneはその95%の生産を中国に依存している。アップルは中国に販売面でも大きく依存している。英フィナンシャル・タイムズによると、アップルの香港、台湾を含む中華圏における22年9月末までの年間営業利益は312億米ドル(約4兆800億円)で、2年前の2倍以上になった。

 これに対し、中国・騰訊控股(テンセント)の年間営業利益は152億米ドル(約1兆9900億円)。中国アリババ集団は135億米ドル(約1兆7600億円)で、アップル中国事業の営業利益はこの2社の合計を上回っている。

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(写真:ロイター/アフロ)