4月4日(火)より、ドラマ「何かおかしい2」(毎週火曜深夜0:30-1:00、テレビ東京ほか)が放送開始する。昨年放送されたシーズン1は、YouTube無料公開回が合計300万再生を超える注目を集め、待望のシーズン2となる。架空のラジオ番組を舞台に、生放送中の出演者やスタッフたちが「何かおかしい」出来事に出会い、毎回恐ろしい事件が繰り広げられていく本作。原案・ストーリーテラーを務めるのは今回もホラー系YouTuber・作家の雨穴。このたび雨穴にインタビューを行い、「何かおかしい2」について、また33万部超えの大ヒット著作「変な絵」について聞いた。「万人に受けるものをつくろうと思ってはいない」と語る雨穴の発想の源泉とは。

33万部の大ヒット!「変な絵」本編冒頭35ページを公開中

■シーズン1より自分らしさが出ている

――「何かおかしい2」、今回はシーズン 1 が好評での続編となりますが、パワーアップした点はどんなところですか?

原案の立場として、前作よりも自分の個人的な思い、正直な気持ちを出しました。怖さだけでなく、ひとりの人間として常日頃考えていることをアイデアにしたので、1作目よりも自分らしさが出ているのではないかと思います。ストーリーテラーとして解説で出演する部分も、以前は頂いた原稿を読む形でしたが、2では原稿を基に、自分ならこの問題をこう考えるという意見を述べています。

また、今回は全12話で、物語全体を通じたひとつの大きなストーリーがあります。第1シーズンでも同様の計画をしていたのですが、ドラマの色々な制約で実現しませんでした。この大きなストーリーについては私が作ったというよりも、テレビ東京の脚本家の皆さん(太田勇、及川博則、今井隆文)が作ってくださっています。やはりドラマのプロだなと思いました。

――特にお気に入りのエピソードはありますか?

第2話「おだいこさま」です。これは私が、「アルバムの写真にところどころ抜けがある」という謎だけをお渡しし、その回答にあたる部分はテレビ東京の皆さん(ドラマ制作チーム)に作っていただいたのですが、完成したものを見たときに自分と違う感覚を感じて面白いと思いました。

――ドラマになったことで、原案より怖くなったと感じたポイントは?

ドラマ全体通して言えることですが、テレビドラマとして小道具などがしっかり作られているので、リアルなクオリティの高い映像になっている点です。

――「何かおかしい2」はYouTubeで一部先行配信もされていますが、4月から地上波で放送されます。地上波で流れることの意義は感じますか?

私は元々ネットで素人として物を作ってきた人間です。「何かおかしい2」はすごくプロフェッショナルな映像として作ってもらっています。テレビで見たことのない衝撃的なものというよりは、十分にクオリティの高い、テレビで流れるのにふさわしいものだと思います。

■「万人に受けるものを作ろうと思ってはいない」

――「何かおかしい」はシリーズ通してラジオ生放送ブースを舞台にしていますが、この舞台設定の面白さはどんなところですか?

やはり密室感というか、リスナーと距離が近く、予定調和でないことが起きる点です。私がすごく好きなラジオの「バナナマンのバナナムーンGOLD」でも、日村さんがラジオスタッフへの鬱憤を発散した回など、思いがけないことが起こって、リスナーもそれをワクワクしながら楽しむ。その予定調和のなさをホラーに転用するというのは、すごく可能性があると感じます。また、ライブ配信と違い映像がなく、そこで行われていることを想像するしかないからこそ、聞く人の数だけイメージができあがる点も面白さです。

――「バナナムーン」がお好きなんですね。テレビはいかがですか?好きな番組や影響を受けたコンテンツはありますか?

最近、M-1グランプリのインタビュー本(「笑い神 M-1、その純情と狂気」)を読んだのをきっかけに、笑い飯さんのネタを見返して、改めてすごいなと思いました。みんなが笑えるのにマニアック。マニアックというのも、「誰も知らないアニメの名前を言う」というような方法のマニアックさではなく、人間が普段は気づかないけど実は面白いと感じるような、“細い”感覚にまで入っていくマニアックさ。「これを面白いと思うのは自分だけなんじゃないか?」と思うけど、皆が面白いと言っている。メジャーなのにマニアックですよね。

――「これを面白いと思うのは自分だけなんじゃないか?」の感覚については、雨穴さんのYouTube動画にも通ずる点のような気がしますが、ご自身ではいかがですか?

いや、そんな…及びもしないです。自分としては、万人に受けるものを作ろうと思ってはいないんです。それを狙っても絶対にできないと思うので、自分と同じ感覚の人に刺さればいいかなと思いながら作っています。

■「人コワ」な物語は実体験を元に着想

――2作目の著書「変な絵」も33万部を突破。雨穴さんの作風は、「何かおかしい」も「変な家」「変な絵」も、人間の嫌な部分にフォーカスした、いわゆる「人コワ」作品ですが、どういうところから人の怖さを見つけていますか?

「人コワ」に限らずですが…自分が過去に体験したことの中で「これが怖かった」、人間関係の中で「こういう人が嫌だった」というのを思い出しています。たとえば学生時代、クラブ活動でトラブルがあったんですが、当事者が直接話し合い、ふたりとも謝って仲直りしたすぐ後に、片方の子が相手のいないところで悪口を言っていたんです。人の心の中はわからないと感じて怖いなと思いました。

――「変な家」は間取り図、「変な絵」は描かれた絵というキーアイテムを基に物語が紡がれます。こういった題材を思いつくきっかけは何でしょうか?

たとえば今回の「変な絵」は、貴志祐介さんの「黒い家」という小説の中に子供が書いた作文から精神分析をする場面があり、怖いなと思ったことがきっかけです。精神分析から謎解きをするというアイデアを考え、自分のオリジナリティを出すために、「バウムテスト」(一本の木を描かせて内面を判断する精神分析の手法)を取り入れてみようと思いました。

――ご自身が触れたコンテンツを参考に、オリジナリティの要素を足していくという発想が多いのでしょうか。

そうですね、そういう考え方が多いです。

――現在YouTubeの登録者数は約80万人、著書も2作連続30万部超えのヒットとなっていますが、動画制作や執筆の他にこれからやってみたいことはありますか?

趣味で音楽をやっているんですけど、それをもうちょっと形にしてみたいと思っています。

――「変な絵」でも作品をモチーフにした楽曲(「【組曲:変な絵】a Mother's Nocturne」)を作られていましたね。セルフメディアミックスというのは新しくて驚きました。

双葉社YOASOBIさんの小説×音楽プロジェクトを担当されている方に「雨穴さんはYouTubeをやっていて、音楽もやっていて、小説も書いたから、その3つをミックスすると面白いものになるんじゃないか」とお声がけいただいたのですが、実際にやってみると、小説では描き切れなかった部分を補足するような形で音楽を作れて、効果があったと思っています。楽曲は今までも何曲か作ったのですが、もっといっぱい作りたいです。

ホラー系YouTuber・作家の雨穴/※提供画像