「今のところ、あまり心配はしなくていいようね」そんな風に私がホッとしていたのは月曜日、先週木曜に始まったユーロ2024予選1節のスウェーデン戦に0-3と勝利した後、次は開催国としての出場が決まっているドイツとの親善試合ということもあってか、太ももの筋肉を傷めていたGKクルトワベルギー代表を日曜に離脱。週明けに検査を受け、週末のバジャドリー戦までには回復しそうだと聞いた時のことでした。いやあ、ドメニコ・テデスコ新監督率いる新生ベルギー代表にはアトレティコから参加のカラスコもいるため、まだ目を離す訳にはいかないんですけどね。

ただ、レアル・マドリーの場合はparon(パロン/リーガの停止期間)直前のクラシコ(伝統の一戦)で2-1と負けてしまったため、首位との差が勝ち点12に拡大。これはもう、天変地異でも起こらない限り、残り12試合で引っくり返る可能性はほぼないため、クリステンセンがデンマーク代表で負傷したとか、オランダ代表に行かなかったデ・ヨングも実はケガをしていたとか、デンベレとペドリもまだ治っていないとか、バルサが戦力減退しているという話を聞いても、それこそ、来週水曜のコパ・デル・レイ準決勝クラシコ2ndレグで、0-1負けしている1stレグから、remontada(レモンターダ/逆転勝ち抜け)の可能性が増した程度にしか思えなくてねえ。

更に言うと、マドリーにとっては4月12、18日のCL準々決勝チェルシー戦の方がずっと重要で、それまでには絶対、クルトワが元気になってくれないとマズいんですよ。そう、「Ya he dicho muchas veces que continuaría toda mi vida en el Real Madrid/ジャー・エ・ディッチョー・ムーチャス・ベセス・ケ・コンティヌアリア・トーダ・ミ・ビダ・エン・エル・レアル・マドリッド(もう何度も一生、レアル・マドリーに居続けたいと言っている)」というアンチェロッティ監督も2024年までの契約をまっとうするには今や、CL2連覇の道しか残されていませんからね。となると、少しでも彼に不安があれば、ムリさせることはない?

まあ、先日は親善試合でモロッコに負けた後、ブラジルのサッカー協会会長から直々、チッチ監督がW杯後に退任してから、暫定監督が率いている代表チームの新指揮官として、「カルロは選手たちにも、ファンにとっても一番の候補」とラブコールを贈られていたアンチェロッティ監督ですから、いくらかは気が軽くなったかもしれないんですけどね。それでもビニシウス、ロドリゴ、ミリトンが参加していたブラジル代表以外、まだインターナショナルマッチウィークは終わっていないだけに今はとにかく、モドリッチ(クロアチア)やチュアメニ(フランス)、バルベルデ(ウルグアイ)、そしてスペイン代表のカルバハル、セバージョス、ナチョらが無傷で戻って来るのを待つ日々が続くんでしょうね。

その一方でアトレティコの守護神、オブラクは木曜にカザフスタンに1-2、日曜にはサンマリノに2-0とスロベニアをユーロ予選2連勝に導いて、もう月曜にはマドリッドに帰還。週末休みだったマハダオンダ(マドリッド近郊)での練習は火曜に再開とあって、勝ち点差5のお隣さんから、2位を奪い取る戦いの準備を始めるのにまったく支障はないかと。ただ、金曜にはグリーズマンが先制点を挙げたフランスが4-0と大勝した反面、その相手のオランダにいたメンフィス・デパイはPKまで失敗するという、前線の選手の吉凶が完璧に分かれてしまったなんてこともあったんですが、大丈夫。

代表合宿中、「最高のフィジカル状態を保つには一定の練習が必要なんだが、バルサではいつもそうという訳にはいかなかった。でもアトレティコの練習方法は完璧に自分に合う。シメオネ監督はいつも全力を求めていて、それがボクをより強くしてくれた」というコメントを出していたFWは、月曜のジブラルタル戦で3-0の勝利を挙げたオランダの先制点をヘッドでゲット。その間、グリーズマンアイルランド戦で1月から同僚になったばかり。まだ12分ぐらいしか、アトレティコプレーしていないドハーティ(トッテナムを自由契約)と対決して、パヴァール(バイエルン)のゴールでフランスが0-1の辛勝をするのに貢献していたんですが、まあ、12人も各国代表選手がいると、イロイロありますって。

そして弟分ではヘタフェのエース、エネス・ウナルが1-2勝利の決勝点をアシストした土曜のアルメリア戦終盤でケガしたとの報が入り、未だに残留達成の道半ばにあるキケ・サンチェス・フローレス監督のチームをショックに陥れたんですが、幸い大したことはなく、土曜のアスレティック戦には出られるらしいというのは不幸中の幸いだったかと。ちなみにそのウナルはリーガ12得点で現在、ピチチ(リーガの得点王)であるバルサレバンドフスキの15得点に次ぐ2位なんですが、その下、11得点で並ぶサモラ(スペイン人の最多得点者)、イアゴ・アスパス(セルタ)、ホセル(エスパニョール)、ボルハ・イグレシアス(ベティス)。更に10得点のモラタ(アトレティコ)を総動員したスペイン代表、デ・ラ・フエンテ新監督のデビューとなったノルウェー戦はどうだったかというと。

いやあ、昨年6月のネーションズリーグチェコ戦以来となる代表戦をマラガのファンは大歓迎。月曜にはレガネス戦を控えたラ・ロサレダ(2018年からずっと2部にいるマラガのホーム)も満員となったんですが、出だしと終わりは最高でしたね。そう、ルイス・エンリケ監督の4-3-3から、4-2-3-1にシステム変更したスペインはCFにモラタ、2列目にダニ・オルモ(ライプツィヒ)、イアゴ・アスパス、ガビ(バルサ)を並べたところ、早くも前半13分にはモラタが敵陣エリア前をドリブルでボールを運んでバルデ(バルサ)にパス。彼のスピードのあるクロスをゴール前にいたオルモが軌道を変え、クラブの同僚、GKナイランドを破って先制点を奪ったとなれば、何せ相手には今季、ヨーロッパで最高にノッていると言っていいFW、ハーランド(マンチェスター・シティ)が負傷離脱していませんでしたからね。

W杯で正GKを務めたウナイ・シモン(アスレティック)がケガでおらずとも、2016-18年には先輩として、アスレティックの守護神を務め、8000万ユーロ(約114億円)の契約破棄金額をクラブにもたらしてチェルシーに移籍。スタンフォードブリッジで出場機会に恵まれない時期が続いたせいもあったか、2020年10月以来、代表から遠ざかりながら、グラハム・ポッター監督の下でレギュラーを奪回し、来月のCLマドリー戦でもサンティアゴ・ベルナベウでゴールを守ることになるケパが苦労することはないかと思われたんですが、とんでもない。28分にはセルロート(レアル・ソシエダ)のクロスから、アウルスネス(ベンフィカ)にゴール左前至近距離のvolea(ボレア/ボレーシュート)を撃たれ、「Con el alma, con todo/コン・エル・アルマ、トードー(全身全霊を込めた)」(ケパ)のparadon(パラドン/スーパーセーブ)を披露する破目に。

そのすぐ後にはスペインもミケル・メリーノ(レアル・ソシエダ)のシュートがナイランドに弾かれ、追加点が取れないと、うーん、今回、アトレティコの選手はモラタしかいないんですけどね。リードしたら一歩後退する理由はどこにもないんですが、自陣でパスを回しているだけで、1-0のままハーフタイムに入ってしまったんですよ。後半10分にもケパがペデルセン(アサネ・フットボール)のシュートをゴールライン上から必死で掻き出すという、危ういシーンを目にしたデ・ラ・フエンテ監督は早めにプランBに移行。ええ、13分にはガビとアスパスに代え、セバージョスとオジャルサバル(レアル・ソシエダ)を入れると、13分にはカタールには行ったものの、W杯でルイス・エンリケ監督に出番をもらえなかったジェレミー・ピノ(ビジャレアル)とオルモをスイッチします。

ただ一番の効果があったのはセルロートがエリア内からフリーで撃ったシュートを外し、ソルバッケン監督を「彼がゴールを決めていれば、ノルウェー代表のアウェイ戦最高の出来の試合だったろう」と嘆かせた後の36分。ファビアン・ルイス(PSG)と月曜に33才のバースデーを控えての代表デビューとなったホセル(エスパニョール)の投入で、いやもう、それから僅か2分で前者のクロスを後者がヘッドでゴールにした時には一体、何の冗談かと思ったぐらい。おまけにその2分後にもホセルはオジャルサバルのシュートが弾かれてゴール前に転がったボールを押し込み、doblete(ドブレテ/1試合2得点のこと)を達成しているって、ちょっとお、こんなに簡単にゴールが決まっていいんでしょうか。

ええ、これにはホセルも「No me lo creo aún/ノー・メ・ロ・クレオ・アウン(ボク自身もまだ信じられないよ)」と言っていたんですが、おかげで試合は3-0でスペインの快勝。デ・ラ・フエンテ監督によると、代表には1人参加ながら、RMカスティージャからドイツのホッフェンハイムへのレンタル移籍中に仲を深めた、奥さん同士も姉妹というカルバハル(当時はレバークーゼン)やモラタといった親しい選手の多い彼は、「自信に溢れていて、ha tenido una concentración enorme, por eso ha marcado/ア・テニードー・ウナ・コンセントラシオンエノルメ、ポル・エソ・ア・マルカードー(集中力がとても高かったから得点できた)」そうなんですけどね。

ただ、以前から代表にいる選手の「Quizá ahora apostamos por un juego más profundo, atacando más los espacios/キサ・アオラ・アポスタモス・ポル・ウン・フエゴ・マス・プロフンドー、アタカンドー・マス・ロス・エスパシオス(多分、今のウチはもっと奥行きのあるプレーをしていて、スペースを突いて攻撃している)」(オルモ)といった意見もあるんですが、ルイス・エンリケ監督時代によく見た、ただ横パスを出しているだけの時間帯もスペインにはなきにしろあらず。ええ、ゴールが入るか入らないかは結構、時の運だったりもしますからね。


実際、16才で入団したマドリーには定着することができなかったものの、24才の今はノルウェーのキャプテンとして、チームを引っ張っているウーデゴール(アーセナル)なども、「セルロートも今日は大きな仕事をしてくれたけど、ボクらにはハーランドの欠場が凄く痛かった。Al final es el mejor delantero del mundo/アル・フィナル・エス・エル・メホール・デランテーロ・デル・ムンド(とどのつまり、彼は世界一のFWだからね)」と言っていたように、スペインにはそういう絶対的FWがいないのが辛いところ。よって、これからもデ・ラ・フエンテ監督はコンビネーションプレーでゴールを探していくしかないと思いますが、とりあえず、予選なら近年のスペインはあまり苦労しないで突破できるはずなんですよ。

ええ、日曜にマラガでのリハビリトレを終え、チームは夜にグラスゴー入り。キプロス戦で3-0の勝利を目撃したハムデンパークで火曜午後8時45分(日本時間翌午前3時45分、先週末ヨーロッパは夏時間がスタート)に行われるスコットランド戦が済めば、残りの相手はジョージアキプロスとかなり格下ですからね。この5チーム編成のグループで2位までがユーロ2024に行けるんですから、この3月の山場さえ越えればこちらのもんですが、中2日の試合とあって、デ・ラ・フエンテ監督は前日練習でオルモが筋肉痛で早退したのもあり、スタメン変更を考えているよう。

どうやらU21代表を率いていた時分から、それが習慣らしいんですが、今のところ、候補に挙がっているのは殊勲の2ゴールのホセル、途中出場で試合の流れを変えたセバージョス。そして本来は対ハーランドとして初招集されたダニ・ガルシア(オサスナ)が3人CB制でセットプレーや空中戦を武器とするスコットランド相手に先発デビューとなりそうですが、代表ファンとしては3人目のCF、ボルハ・イグレシアスも気になるかと。何はともあれ、まずはこのプレミアリーグプレーする選手もいるチームとのユーロ予選2試合目を手堅く連勝で終えて、6月のネーションズリーグファイナルフォー優勝への道筋を作ることができればいいですよね。


【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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