
悪魔のマスクをかぶった男が店の前に現れた時、その警備員は同僚のジョークだと思ったそうだ。だがその手にあった銃に気づくと彼はとっさに行動を起こした。
今月半ばアメリカのフロリダ州のクラブ入口で、不気味なマスクと銃で武装した不審人物が勇猛果敢な用心棒に取り押さえられる事件が起きた。
危険な男と対峙した警備員の名はマニー・レスト。かつて「プエルトリコの懲罰人」のリングネームでならした元プロレスラーだ。彼が大量殺人事件を未然に防いだのだ。
Mons Venus security guard fights off man in devil mask trying to get into club with gun
深夜1時15分ごろ。フロリダ州タンパのストリップクラブ「モンス・ヴィーナス」の入り口で事件は起きた。
左手に点けっぱなしの懐中電灯をちらつかせながら、店のドアにまっすぐ向かう不審な男。
男がドアの前に立つやいなや、その右手に警備員のマニー・レストさん(54歳)がつかみかかった。
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まるでレスラーのような悪魔風のマスクを被った大男はなんと右手に銃を持っていたのだ。
いきなり銃の取り合いでもみ合う2人、ただならぬ気配を感じた人が逃げまどう中、必死で男の銃を叩き落としたレストさん。
だが錯乱している相手はなおも殴りかかってくる。

隙をついて戻ったレストさんが銃を拾い上げて男を威嚇。
それでも狂気の男は銃をめがけて突進したが、レストさんと助っ人に来たレストさんの同僚ダニー・バハムさんに取り押さえられ身動きできなくなった。
警備員は「プエルトリコの懲罰人」と呼ばれた元プロレスラー
今年3月19日に起きた今回の事件について、レストさんはこう語る。
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あの大男の左手の銃に気づきました。銃口をドアに向けるのを見たんです。それで奴を絶対に阻止する。誰一人傷つけないぞ、と心に決めました。
インタビューに応じるマニー・レストさん(右)

かつて 「プエルトリコの懲罰人」というリングネームで30年以上活躍していた元プロレスラーのレストさんが、命がけを承知の上で銃を持った大男と格闘する様子はクラブの監視カメラにしっかりとらえられていた。
しつこく抵抗する覆面を4人がかりで取り押さえ
一方、バハムさんは最初はクラブの中にいたが、大音量のスピーカーで自分の名を連呼するレジ係の呼び出しで急いで駆けつけた。ここでこんな緊急事態は初めてだった。
すぐにもう一人の警備員と外に出てみると、ちょうどレストさんが覆面男を押さえつけようとしていた。
それでレストさんが「もう疲れたから手伝ってくれよ。俺は来週で55歳だそ」と冗談交じりに助けを求めた。
すぐにハバムさんと2人の警備員も手伝い始めたが、男はしつこく抵抗して何度も立ち上がろうとした。
その様子にうんざりしたするとレストさんは「こいつ(アメリカの元プロレスラーの)アンダーテイカーか(映画)ハロウィンのマイケル・マイヤーズ(ブギーマン) みたいなやつだな」などと言っていたそうだ。
拳銃に弾倉も所持。前科もたっぷりあった覆面男は収監
タンパ警察のその後の調べで、覆面男は片手に9mm拳銃、ポケットに2つの弾倉を隠し持っていただけでなく、店のそばまで乗ってきたトラックにナイフ9本とホルスター2つ、それから分離した弾薬などを積んでいた。
マイケル・ルドマン(44歳)というその男は、DVや暴行、無謀運転に飲酒運転などの前科がたっぷりあった。また精神的疾患から危険な加害者になりうる人物として保護命令まで出されていた。
現在、保釈金なしでフロリダ州ヒルズボロ郡の刑務所に収監されているルドマンは、凶器による加重暴行などの罪に問われている。
警察署長もヒーローと感謝。クラブの200人も無事
事件を聞いたリー・バーコー警察署長が思い出したのは、以前フロリダ州のクラブで起きた大量射殺事件だった。死亡者49人、負傷者53人という恐ろしい事件がとっさに頭をよぎったのだ。
同署長によると、今回の格闘の間に銃声が1回だけあった。だがその弾は幸いにもクラブのドアに当たっただけで人には当たらなかった。
また事件当時クラブは200人もの人で混み合っていた。だが勇敢な警備員のおかげで中にいた全員が無事でいられたのだ。
私はこの出来事が、あの時と同様の事件を防いだと確信しています。2人が立ち上がってくれたことに心から感謝しています。もし彼らがあの時動かなければ、多くの命が失われていたことは間違いないでしょう。2人は認められるべき偉大なヒーローです。
体感は数時間。手こずった覆面男にジョークを疑ったとの告白も
翌々日の21日にタンパ・コンベンション・センターで報道陣の取材に応じたレストさんとバハムさん(画像右端)

この会見にはタンパ警察署長のリー・バーコー氏も同席した(画像左から2番目)
動画を見てもわかる通り、格闘はたった1分ほどだった。だがあの場にいたレストさんとバハムさんにとっては何時間にも感じられたという。
ここに来る前に初めてカメラの映像を見たんだ。あんな短時間だったなんて信じられないよ
ちなみにレストさん、一番最初に悪魔の覆面男を見たとき「ジョークかよ?」と思ったそうだ。てっきり自分の過去を知る警備員の友人がふざけていると思ったのだ。
それが命がけの格闘になるなんてさぞかし驚いたことだろう。不審者の持った銃につかみかかるなど決して良い子は真似しちゃいけない危険行為だが、本当にひどい事件にならなくてよかったよ。
References:nypost / fox13news / youtube / tampabayなど /written by D/ edited by parumo

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