AR・VR・XRなどのテクノロジーハードウェアやソフトウェアの進歩とともに急速に普及し、ビジネスでの活用も散見されるようになりました。そこで本記事では34LLCコンサルティング代表の石光正彦氏が、これらがどのようなテクノロジーなのか、具体的なビジネスにおける活用例とともに、わかりやすく解説します。

「AR」「VR」「XR」…それぞれの違い

まずARはAugmented Realityの略で、日本語では「拡張現実」という意味です。一方、VRはVirtual Realityの略で、日本語では「仮想現実」という意味です。またXRはCross RealityまたはExtended Realityの略で、意味としてはVR、AR、 Mixed Reality(複合現実)などを現実の世界と融合することで、新しい体験を提供するテクノロジーを総称しています。

1.AR(拡張現実)の活用例

ARを感覚的にわかりやすい例で説明しますと、最近の車に搭載されている、ヘッドアップディスプレーが身近なのではないでしょうか。スマホやタブレットといったデバイスのカメラを通して、写真やビデオ、CGなどのデジタルデータを投影することができる技術で、現実の世界とデジタルデータが同じ世界に存在するように見えます。

また、より身近で有名なAR活用事例としては、ポケモンGOがあります。ポケモンGOは、ポケモンというキャラクターを、ユーザーのスマホから見えている現実の世界にCGとして投影して楽しんでもらうゲームです。

ARの活用の幅は非常に広く、すでに積極的に活用され始めています。ARは、インターネットに次ぐ次世代のビジネスツールとして、高い関心を集めているのです。

2.VR(仮想現実)の活用例

VR、つまりバーチャルリアリティーは、比較的イメージしやすいかと思います。ゴーグルのデバイスを装着している写真を見かけた経験がある方は多いのではないでしょうか。VRは仮想現実を体験するテクノロジーで、ゴーグルのようなデバイスを装着することで、完全に現実の世界から切り離された仮想のデジタル空間の体験を提供する技術です。

ビジネスのVRの活用例としては、ゲームなどエンタメの分野でよく見る一方、トレーニングの分野でも活用されています。といっても、少しイメージが湧かない方もいらっしゃるかと思います。

たとえば火災におけるトレーニングでは危険が伴いますが、VRによる仮想現実で火災を再現すれば、危険を伴わずに効率のよいトレーニングが可能となります。実際に海外では、消防士などのトレーニングに活用されています。また、エンジンや工業機械などの整備や運転トレーニングでは、実際の機械を使わずに仮想現実のなかで機械を再現することで、場所にとらわれない有効的なトレーニングを可能にしています。

~よく混同される「メタバース」との違い~

ここで少し、メタバースとVRの違いを説明したいと思います。VRはあくまでも仮想現実ですが、よく間違えられるメタバースとは少し違います。メタバースとは仮想空間のことで、PCなどのデバイスを通して見られる、インターネット上のデジタル空間を意味します。

3.XR(複合現実)の活用例

XRを利用した具体例では、伊勢丹デパートが”Rev World”という仮想空間の店舗を作り、この仮想空間で顧客が買い物できるショップを提供しました。

プロ野球チームの横浜ベイスターズKDDIと組んで、ベイスターズのホーム球場の横浜スタジアムを再現した“バーチャルハマスタ”という仮想空間でプロ野球の野球中継が楽しめるという活用事例を生み出しました。

これらのAR、 VR、 XRは、まだまだ身近なテクノロジーとはいえませんが、急速に普及しつつあるのも事実です。インターネットが最初に世に登場したときと同じように、まだ一般の方に十分理解されてはいませんが、インターネットと同様に、間違いなく我々の身近で当たり前に利用されるテクノロジーとなるでしょう。

AR・VR・XRの今後

AR・VR・XR……これらのテクノロジーを語るうえで大事なポイントは、「取り巻く環境」です。

たとえばそのキーポイントの1つとなるのは5Gなどの高速通信のネットワークですが、日本では急速に5Gが普及しつつあります。またデバイス面でみると、日本におけるスマホの普及率は世界に比べて非常に高く、AR、VR、XRといったテクノロジーを支える日本の環境は非常に整っているといえます。

また、大手アップルは現在アップルグラスというARのメガネを開発中で、今年中に発表されるのでは、との噂があります。マイクロソフトはすでにホロレンズなるデバイスを2015年に発表しています。また、GoogleもスマホにAR機能を取り入れ始め、盛んにテレビコマーシャルで宣伝をしています。

このような大手企業の取り組みは、AR、 VR、 XRといったテクノロジーが一過性のものではないことを示しており、今後ますます私たちの日々の生活のなかで急速に普及することが予想されます。

石光 正彦

34LLCコンサルティング 代表 米国公認会計士  

(※写真はイメージです/PIXTA)