2018年公開の映画「ブラックパンサー」 “ワカンダ”の偉大な王で、スーパーヒーローブラックパンサー”でもあったティ・チャラの存在は大きく、見るものをワクワクさせてくれた。ティ・チャラを演じた俳優チャドウィック・ボーズマンが亡くなったが、ボーズマン、そしてティ・チャラの遺志を受け継ぐ形で2022年に続編「ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー」が公開された。ティ・チャラの葬儀から始まった続編は、「ブラックパンサー」の本質を継承しつつ、大きくスケールアップをした超大作となった。ワカンダの王女“ラモンダ”を演じたアンジェラ・バセットが「第95回アカデミー賞」の助演女優賞にノミネートされたのをはじめ、視覚効果賞など5部門でノミネート。その中から見事、ルース・E・カーターが衣装デザイン賞を受賞した。そこで今回、あらためて本作の見どころをレビューする。(以下、ネタバレを含みます)

【写真】ティ・チャラ(チャドウィック・ボーズマン)の遺志を継ぐ者…!新たなブラックパンサー

■独特で洗練された衣装

ブラックパンサー」もそうだが、「ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー」に登場する衣装(ヒーローの衣装も含め)は独特で洗練されたものがある。「ブラックパンサー」シリーズは俳優陣、監督やスタッフなどの多くが黒人というのも大きな特徴となっているが、衣装デザイン賞を受賞したデザイナー・ルースもそう。1992年公開の映画「マルコムX」と1997年公開の映画「アミスタッド」でノミネートされ、2018年公開の「ブラックパンサー」で受賞。そして今回も受賞し、黒人女性として初めて2度目の受賞に輝いた。その高いクオリティーを保ちながら、衣装も進化させ、結果を残した。

■コミック版を踏襲してブルーをベースにデザイン

ディズニープラスで配信されている「マーベル・スタジオ アッセンブル ワカンダ・フォーエバーの裏側」で、作品のメイキング映像が見られるが、その中でルースは「ワカンダ自体がそのコンセプトを洗練させたくなる」と語っており、その世界観から大いに刺激を受けたようだ。ブルーを基調とした“ミッドナイトエンジェル”の衣装も印象的だったが、コミック版を踏襲してブルーをベースにデザインしたと語っている。倉庫に並ぶ衣装や装飾品も見ることができるが、個性豊かな衣装や色とりどりの装飾品はまるで美術館に飾られている宝物のよう。

ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー」は2月1日からディズニープラスで配信中だが、3月29日には「MovieNEX」と「4K UHD MovieNEX」で発売された。衣装の美しさはもちろん、陸上や海、空での壮絶バトルなど、映像の美しさが際立つ作品だけに、クオリティーの高い形でのリリースはファンにとってうれしい限り。

ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー」に関して、もう一つ注目してもらいたい部分がある。それは音楽。いろんな国や地域の民族音楽を取り入れ、映像に映し出されるシーンとともに見る者の心にスーッと入ってくるものに仕上がっている。リズミカルだったり、広がりのあるアンビエントだったり、場面にピッタリの音楽もこの作品には欠かせないものとなっている。

「ボイス・ライジング:ミュージック・オブ・ワカンダ・フォーエバー」(ディズニープラスで独占配信中)を見てもらうと、どういう意図で、どういう思いで音楽が作られているのかが分かる。アカデミー賞とグラミー賞のどちらも受賞している作曲家ルドウィグ・ゴランソンの制作現場をライアン・クーグラー監督がしっかりと捉えていて、こちらも一つのドキュメンタリー作品として楽しめる。

本編をすでに見たという人は多いと思うが、映像美、衣装のこだわり、そして音楽など、細部を改めて意識して観てみると、きっと新しい発見があるはず。「ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー」の濃密な世界を余すところなく味わってもらいたい。

◆文=田中隆信

映画「ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー」でラモンダ女王を演じるアンジェラ・バセット/(C)2023 MARVEL