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新車に使えないケースも? 品質維持のプロジェクト始動

中世の欧州(暗黒時代と呼ばれる)では、錬金術師は卑金属を金に変えることに汗を流した。しかし、素材のベースメタルと同じ程度の価値しかないことは避けられない。

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今日、冶金学者や化学者たちは、錬金術ほど空想的ではないものの、似たような問題に取り組んでいる。それは、元の素材と同じ品質にリサイクルすることである。

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自動車リサイクル率は9割を上回っているが、新車に再利用できない素材もあるという。

例えば、鉄のリサイクルは簡単そうに見えてそうではなく、アウディによると、鉄を含む古い自動車から取り出した材料のうち、新車に再利用されるものはほとんどないそうだ。つまり、廃車からリサイクルされた鉄は、ボディやシャシー、サスペンションなどの自動車部品として再利用されるのではなく、建設業界などで使用される可能性が高いのである。

金属であれプラスチックであれ、このようなリサイクルによる素材のグレードダウンを一般に「ダウンサイクル」と呼ぶ。アウディも参加する共同プロジェクト、マテリアルループMaterial Loop)ではこの問題について研究を進めている。

同プロジェクトは、リサイクルを循環型プロセスに移行させ、投入されたものを再び取り出し、同じ品質で自動車に再利用できるようにすることを目的としている。そうすることで原材料の採取が減り、自動車の環境フットプリント(環境負荷)をより有利なものにできる。また、供給の安定性向上も見込める。

2022年10月、アウディで役目を終えた開発車両100台の解体作業が開始された。ボディは細断され、鉄、アルミニウム、プラスチック、ガラスなどの素材が分離される。このプロジェクトは4月末まで行われるが、アウディはすでに得たノウハウを活用し、一部の高品質リサイクル材は新車に再利用されているという。

アルミニウムリサイクルは自動車業界ではすでに確立されており、例えばジャガーランドローバーは長年にわたり、ボディシェルにリサイクルアルミニウムを使用している。

アウディなどと同様に、プレス工場から出るアルミの端材は回収され、リサイクルされる。必要な基準を満たすためには、純粋な「シードアルミニウムが一定の割合で求められるが、リサイクルアルミニウムの品質が低下することはない。

アルミニウムで自動車を製造する際のエネルギー方程式を理にかなったものにしようとするならば、リサイクルは不可欠である。アルミニウムは自動車を軽くすることで走行中のエネルギー消費を削減できるが、バージンアルミニウムの生産にはエネルギーが必要であり、そのメリットはわずかなものだ。

リサイクルすることで、2世代目以降の素材に真の利益をもたらすことができる。アウディの場合、リサイクルされたアルミニウムはシート材にされ、新しいパネルのプレスに使用される。

また、アウディは1年近く前から自動車用ガラスのリサイクルを行っており、破損した窓ガラスを粉砕処理して新しい板ガラスを作り、EVのQ8 eトロンに使用している。


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