東京都葛飾区が「新金貨物線」の旅客化についての検討を加速させています。計画はどこまで進んだのでしょうか。2023年度は、異なる3タイプの車両を含めた「3つのモデルケース」を比較していきます。

「普通鉄道」と「LRT」を比較検討

東京都葛飾区が2023年度を前に、新金貨物線の旅客化に関する検討内容をまとめました。2023年度は「3つのモデルケース」を比較評価するほか、施設計画や事業スキームなどの詳細検討を深める方針です。駅や車両についても、検討内容が一部明らかになりました。

新金線は総武線の新小岩付近と常磐線の金町をつなぐJRの貨物線です。葛飾区は、南北方向の鉄道網を充実させるため、かねて新金線旅客化検討委員会を設置しており、2022年度からはJR東日本などの関係機関も旅客化検討に加わっています。

検討の深度化にあたっては、鉄道事業法を適用して車両が普通鉄道となる「ケース1」、鉄道事業法を適用して車両がLRT路面電車型)となる「ケース2」、軌道法(複線)を適用して車両がLRTとなる「ケース3」のモデルケースを作成。2023年度は3つのモデルケースを比較評価し、旅客化の基本的な方向性を決める予定となっています。

また、需要予測や概算事業費、費用便益分析(B/C)を精査し、施設計画や事業スキームなどの詳細検討を深めるとしています。概算事業費に関しては、駅の構造や行き違いに必要な複線区間長といった前提条件を精査する方針です。

10駅を設置する案を基本に検討を進める方針で、駅舎は事業費の縮減を図るため簡易な構造を想定しています。具体的には、中間駅に構内踏切や跨線橋を設置しないほか、改札に駅係員を配置せず、売店やトイレなども構内に設けない方向で検討します。

必要車両数は6編成 全般検査と重要部検査は外部委託か

車両に関しては、普通鉄道車両およびLRT車両の両案で検討を進めていくとしています。

具体的には、JR相模線E131系のような4両編成、東急世田谷線300系車両のような連接2両編成、芳賀・宇都宮LRTのHU300系のような3車体連接車のいずれかを想定しています。軌道法を適用する場合、編成長は30mが上限となります。

必要車両は5編成に予備1編成を加えた合計6編成とする方針。車両の詳細を調べる全般検査と重要部検査に関しては、外部委託を視野に入れており、既設の線路を利用して車両を回送したり、台車などをトラックで輸送したりするとしています。

なお、いま新金線を走る貨物列車JR東日本レール運搬車の運行は継続の方針。ただし国道6号の通称・新宿(にいじゅく)踏切(新宿新道踏切)の遮断時間を増加させないことを前提としています。整備にあたってネックとなる、この国道6号との交差部に関しては、新金線を高架化する案で検討が行われています。

JRの185系特急形電車。新金線経由の貸切列車に使われたこともある(画像:写真AC)。