現在のVTuberシーンにおけるトップランナーの一つであるにじさんじ。そのなかにおいてもタレントの活躍する分野は日々拡がっている。

 メインとなる生配信に加え、事務所が主導する企画への参加や監修、主に一人ひとりのライバーが主導となって進む歌ってみたなどの動画のほか、ここ2年ほどはエンターテインメントのフィールドでアーティストとして日の目を見る者も増加してきた。

【動画】『Wo Long: Fallen Dynasty』をプレイする葉山舞鈴

 元1期生がデビュー5周年を迎え、彼らを筆頭に現在約150名のメンバーが所属・活動しているにじさんじ。その層の厚さで今後も大きな影響を与えるだろう。

 しばらくのあいだ紹介している30~40名は、にじさんじ始動から2年目にあたる2019年2月8日以降にデビューしたメンバーだ。現在のにじさんじのなかでも主軸を担う、重要メンバーが揃っている世代でもある。

 今週・来週に紹介するのは、昼の時間帯と深夜の時間帯と活動時間はそれぞれ別々ながらも、5時間以上の長時間ゲーム配信や一癖あるゲームチョイス、リスナーとの関係性や本人のキャラクター性などで愛されるニュイ・ソシエール葉山舞鈴の2人。今回は葉山舞鈴について書いていこう。

 葉山舞鈴は2019年6月19日に初ツイート6月25日に初回配信を無事に終えて活動をスタートした。日焼けした肌に銀髪、八重歯がチャームポイントの少女で、本人の活発な性格も相まって、「元気娘」といった印象を持つファンが多いだろう。

 ちなみに、彼女といえば青い衣装とシークワーサー髪留めが馴染み深い方も多いかもしれないが、2022年7月1日からは白色と薄黄緑が鮮やかな新衣装へとチェンジしており、現在はこちらが彼女のオフィシャル衣装となっているようだ。

 カラっとした元気の良さが魅力の葉山。彼女の配信は深夜帯が中心で、しかも長時間にわたることが多い。1時間で終わることはほとんどなく、5~6時間かそれ以上に渡ってゲームをプレイしており、葛葉/叶/アルス・アルマルらとともに「にじさんじの深夜帯」で活躍し続けてきた。

 ゲームチョイスはアクションゲームが中心で、マウスキーボードを使うPCゲームよりも、コントローラーを使ったコンシューマーゲームを好む傾向がある。これはゲーム配信のためにタイトルを選ぶ際に一つの目安になっており、『ロックマン』『地球防衛軍』『メタルギアソリッド』『バイオハザード』『サイレントヒル』といった著名なゲームシリーズから、『モンスターハンターライズ』『WILD HEARTS』といったいわゆる「狩りゲー」まで巧みにプレイする。

 特に2020年1月からはフロム・ソフトウェアが開発した作品群にかなり傾倒しており、『ダークソウル』『デモンズソウル』『SEKIRO』『Bloodborne』『ELDEN RING』といった主要タイトルをすべてプレイし、名作シリーズ『アーマード・コア』作品までプレイしている。

 葉山のゲーム配信といえば、新たにゲームを始めると数日から1週間ほどに渡ってやりこむことが多い。「いちど始めると他のゲームを考えたくない」というタイプでもあるようだが、その結果、集中力が非常に高いままプレイしていくことも特徴だろう。

 たとえば、完全に初見でスタートした『ドラゴンクエスト』を約10時間で、『Pokemon LEGENDS アルセウス』を約30時間ほどでそれぞれ終わらせてしまった。同じような調子で『SEKIRO』や『ELDEN RING』は平均して9~11時間を毎日のようにプレイしつづけ、「のめり込んでいる」という言葉がまさにピッタリと当てはまるほど。

 しかも『ELDEN RING』でのバトルスタイルは、「短剣を片手に持ち、盾によるパリィを軸にしてひたすらに戦い続けていく」という、あまりにも異色な戦闘スタイル(※1)。相手の行動を覚えるために何度も死に続け、プレイテクニックを徐々に磨いていくというある種ストイックな姿に、同作ファンならば驚きを隠せないはずだ。

(※1:『ELDEN RING』において、相手の攻撃をジャストタイミングで弾くことで、強力な反撃を行えるパリィ。失敗すると手痛いダメージを受けてしまうため、普通に回避をおこなうよりも難易度が高い。使いこなすには相当の腕前と度胸が求められ、どちらかといえば玄人向けのプレイスタイル

 2023年2月7日には現在大ヒットを飛ばしている『ホグワーツ・レガシー』をプレイ開始。本来2月10日が発売日なのだが、葉山はデラックス・エディションの先行プレイ権を利用し、わずか9日ほどでクリアしてしまった。

 映画・原作小説ともにまったく知らないなかでもデラックス・エディションを買うあたり、葉山の「生粋のゲーマー」らしさが滲み出ている。これまでプレイしたゲームのほとんどで、近接攻撃一筋というスタイルを好む彼女だったが、本作はもちろん「魔法を使う」ことが求められる。配信を見てみると、徐々に遠距離攻撃に慣れ、同時に『ハリーポッター』の世界観にどっぷりとハマっていく彼女がそこにはいる。

・独特のワードセンスで周囲を「葉山ワールド」に引きずり込むことも

 ゲームに集中しきってしまうプレイスタイルも相まってか、ゲーム内の用語や言い回しが移ってしまい、見ているリスナーを置いてけぼりにしてしまうようなワードを連発するところも葉山の配信の醍醐味となっている。あまりにゲームに熱中してしまうがゆえに、時に感情をむき出しにすることもしばしば。

 そのワードチョイス・言語感覚・捉え方は一風変わっており、葉山自身どこかトボけたムードを漂わせていることもあってか、多人数コラボでも同僚やリスナーを置いてけぼりにしてしまい、「葉山語」「葉山ワールド」と呼ばれる独自の世界観を築いている。

 たとえば、にじさんじの事務所で月ノ美兎と初めて会った際、第一声で「トイレに行きませんか? トイレの話をしましょう!」と話しかけたというエピソードがある。この際、葉山も周りの空気が変わったことを察したが、「トイレに居続けると何秒で電気が消えるのか興味あるって話しかけた」「そういう話をしてもちゃんと聞いてくれる人っているんだと思った」と振り返っている。

 また、舞元啓介アルス・アルマルでびでび・でびるらとコラボ配信をしようとした際、「時間になってゲームをしようとしたら、関係ないゲームと見間違っていた」ため、ゲームを準備するのを怠ってしまい、予定していた配信時間から大幅に遅れて配信がスタート。

 コラボ相手の面々は優しい対応をしていたのだが、ダウンロードが終わらないなかで雑談を始めたこともあり、状況が状況であるためコラボ相手の温度感も分からず、焦りからしどろもどろに話してしまうといったことも。

 葉山自身がテキトーにしゃべってボケたものもあれば、あまりに緊張したせいで口が滑ったものもある。「ちゃんとしゃべる」ことからいかにズレていくか、いやズレてしまっていくかが彼女の面白さであり、コラボ相手・同僚・リスナーを困惑と驚きの「葉山ワールド」に導いていくのだ。

・奔放でありながら、真摯にファンに向き合う“プロの姿“

 ここまで面白いキャラクターでありながらソロでのゲーム配信が多いのは、人見知りする性格であったり、そもそもひとりでゲームをするのが好きという部分があるからだろう。

 現在、2020年までの生配信のアーカイブはほぼすべて非公開となっているが、この1年ほどでの圧倒的な稼働量とアーカイブをみれば、彼女の人となりを知るには十二分のはずだ。

 配信スケジュールを欠かさず提出しつづけており、Twitterと同じくらいYouTubeコミュニティを使っての発言も多い。彼女のメンバーシップに参加していない方でも読めるメッセージが多く、「Twitterを利用していない視聴者」に向けて考えたうえでの活動なのだろう。

 一方で自身のファンや新規のリスナーからの心無い行動で傷つくこともあった。2021年12月末、それまで行なっていたメンバー限定配信を中止にするとアナウンス。2022年2月中旬にはYouTubeコミュニティ内で自身の体調不良や不安感をハッキリと言葉にした。

 病院定期的に通院して薬を処方してもらいながらの活動となっていることや、自身の活動を応援してくれるメンバーとともに気を休めることができるはずのメンバーシップ限定配信やファンクラブの活動が怖くなっていたことを言葉にし、有料コンテンツについては一度休止することを発表した。その後2022年7月からはふたたびメンバー限定配信を再開しており、体調も良好な状態に戻ったようにみえる。

 また2022年3月末には、当時熱中していた『ELDEN RING』における自身のプレイングや長時間配信が連続していることに対する批判コメントが届き、YouTubeコミュニティ内でコメントを引用しつつ真摯に答えてみせた。

 寄せられたコメントや意見をまっすぐ受け止め、今後の活動に役立てていきたいと答えつつも、自身の中から溢れ出る強いこだわりやクセを大切にしていることがしっかりと読み解くことができる。

 ゲーム作品には必勝に近い攻略法が見つかることがあり、その方法を使えば確かに効率的かつ素早くゲームを終わらせることができる。だが長時間プレイすることで世界観を堪能したいプレイヤーもいれば、葉山のように「こだわりのある武器・プレイスタイル」で攻略を目指したいプレイヤーもいる。「ゲームを楽しむ」という一言には、非常に多様・多義的な意味合いが含まれている、楽しみ方は人それぞれなのだ。

 VTuberやゲーム配信者として面白い配信を届けようとするとき、あまりにもスマートすぎる内容を求めてしまうよりも、葉山のように強いこだわりで我を貫くタイプもまた支持される。「個性派集団・にじさんじ」においても一目置かれるほどの、良い意味での“アクの強さ”で、今後も活動していくはずだ。
(文=草野虹)

(C)ANYCOLOR, Inc.