2023年1月より始動したDMM×2.5次元の新プロジェクト「2.5次元的世界」作品として、全惑星★激あまやかしバラエティ「箱入りミュータント」が配信中だ。2.5次元舞台で活躍する5人の俳優が、地球に不時着した個性的な宇宙人たちを演じる独特なバラエティの本作。今回はインタビュー後編として、気弱だがキレたら怖いメソを演じる本田礼生、研究者気質で天然なツンを演じる松田昇大、コミュ力の高いパリピのヒャホを演じる寺山武志に話を聞いた。「箱入りミュータント」のオファーを受けたときには「何もわかんなかった」と口を揃える3人が、収録を通じて感じた本作の面白さとは。

【撮りおろし11枚】和気あいあいと笑顔を見せる松田昇大、本田礼生、寺山武志

■実験的に始まったバラエティ「箱入りミュータント」

──最初に「箱入りミュータント」の話を聞いたときの心境を教えてください。

本田礼生 マネージャーさんから聞いたんですけど、正直なところ、何なのか全然わかんなかったです。ですよね?(笑)

寺山武志 うん。企画書みたいなのが来たんだっけ?

本田 そうですね、企画書見せてもらいました。でも……。

寺山 でも何もわかんなかったよね?(笑)

本田 はい(笑)。「演劇バラエティ……」みたいなことが書いてあって、僕はそれにすごい惑わされた記憶があります。演劇についてのトーク番組なのかなと思ったら、各々のキャラクターが書かれていて……説明を聞いても今ひとつ理解できなかった(笑)。

寺山 配役も聞いてた? 俺の確認不足だったのかもしれないけど、俺は自分がどの役をやるかもわからなくて。それくらい何もわからなかったです(笑)。

松田昇大 僕も「バラエティ」と「宇宙人」としか聞いていなくて。マネージャーに「どうする?」って言われて「出ます」って言ったらこれでした(笑)。

──実は、制作側としては、あえて実験的に色々わからない状態でスタートをさせたそうなんですが、撮影が始まってからはどうですか?

一同 わけわかんないですよ!(笑)

寺山 まず「台本あるんだ!?」っていう(笑)。しかもセリフの量も結構あって。

本田 でも台本を読んでもよくわかんなかったですよね(笑)。とにかく手探りと疑問でいっぱいでした。ネガティブなワードが並んでいますけど、ネガティブな気持ちはなくて、ワクワクしていましたよ。

──「わけわかんないけど、面白そう」みたいな。

本田 そうそう。なんか楽しそうだなって。

■不思議な絆が生まれた撮影

──「楽しそうだと思った」とのことですが、実際にこのメンバーで作品をつくってみていかがですか?

本田 舞台で共演したというのも違うし、ドラマで共演したというのともまた違う、特別な感じです。「特別な苦楽を共にした」というか(笑)、不思議な絆が生まれましたね。今後、役者としてまた一緒に舞台に立ちたい。

松田 僕はお二人ともゲーム(『ACTORS☆LEAGUE in Games 2022』)でご一緒しましたけど、ほぼ絡みがなかったので、完全に外からのイメージしかなくて。でも実際にご一緒してみてもイメージ通りで、すごく素敵だし、めちゃくちゃ助けられました。

本田 「助けられた」って言うけど、松田くんが1番大変な役だったよね。僕はツンのためには何もできてないよ(笑)。

寺山 ツンは助けられない役なんだよね。

松田 情報を一番に手に取る役だから、そこはマジで大変でしたけど。でもやっぱりお二人が盛り上げてくださったり、引っ張ってくださったりしたのですごくやりやすかったです。

寺山 僕は、『演劇ドラフトグランプリ』で礼生くんと一緒だったときに、稽古のときからめちゃくちゃ素敵だなと思って。脚本の読み込みも深いし、すごく真面目で。だから、今回礼生くんの名前があって安心したんですよ。「あ、礼生くんいる!」って。

本田 今のところ、太字でお願いします!(笑)

寺山 あとバラエティを一緒にやって、『演劇ドラフトグランプリ』との印象がめっちゃ変わった。そのときの俺らのチームのストーリーは重たかったこともあって、今回初めて「普段の礼生くんはこんな感じなんだ」って知れた。松田くんに関しては、今回は本当に「頑張れ!」としか(笑)。ツンは圧倒的にセリフが多いのはもちろんなんですけど、きっかけになるセリフが多いので“思い出す”という作業が自発的にしかできないんですよ。だから本当に難しかったと思う。

松田 いやぁ……本当に「何でツンだけ、こんなにセリフ多いんだ」って正直思いました(笑)。これまでは、状況や情報をあとから知るという役が多くて、こういう役は初めてだったので、洗礼を受けましたね。

──石川さんと長妻さんはいかがでしたか?

本田 ながつ(長妻)とは共演したことがあるんですけど、今回もやっぱり、ながつはながつでした。ずっと元気で。ながつがいると場が明るくなります。前に共演したときは作品自体が結構重たかったんですけど、舞台裏でも彼はあんな感じだから、場がすごく盛り上がって。今回もながつのおかげですごく現場の雰囲気が良かった。

寺山 凌雅くん(石川)は、セリフじゃないところでバンバン、アドリブとかガヤを入れてくるよね。アグレッシブだなって思った。それはアチチという役が深く入っているからなのか、考えてきているのかはわからないけど。

本田 すっごく魅力的な子です。でもそれを知ったのが撮影の終盤だったので、もっと早く引き出せればよかったなと思いますね。

──ということは、5話、6話では石川さんの魅力が存分に引き出されている?

本田 はい。最終回はめっちゃ出ていると思います。

■普段の舞台上だったら怒られることもやってる

──本田さんはメソ、松田さんはツン、寺山さんはヒャホを演じていますが、それぞれご自身の役を演じる上で、意識したことや大切にしたことはありますか?

本田 僕はバランスですね。「みんながおとなしかったらボケようかな」と思っていたんですけど、蓋を開けてみたら、テラさんとながつという結構なパワーを持った方がいたので、突き抜け過ぎないほうが面白いかなと思って。というのも、メソはどっちにも振れるタイプだと思ったから。パワーのある人たちがいたら前に出過ぎないというのはメソの気弱さにも近いなと思いました。

松田 僕はとにかく楽しもうと思っていました。知識を披露したり、問題を提起したりする役どころですけど、ツンは調べるのが楽しくて調べているだけなんですよね。だから楽しんでやればいいんだなって。まぁ、本当に僕が楽しめていたかはちょっとアレですけど(笑)。

寺山 僕は本読みのときが一番役に入っていた気がします。ヒャホのセリフって、全部波線がついているんですよ。「そうなんだよ〜!」とか。だから本読みのときは忠実にやっていたんですけど、顕作さん(総合演出・小林顕作)に「寺山くんは、もう自由でいいよ」って言われて。そこから徐々に「もういいか」「これもいらないか」ってなって、最終的にほぼ自分になりました(笑)。

──では「箱ミュでしか見られない自分」など、「箱ミュ」でしか見られないものを教えてください。

本田 そもそも「箱ミュ」ってほかじゃ絶対に見られないですよ。だって、普通こんなことやらないじゃないですか(笑)。

松田 まぁ、やれないですよね(笑)。

寺山 しかもこれを朝から撮ってるんですよ!あのテンションで!これは絶対に書いておいてほしいです(笑)。

本田 何も気負わずに見られる番組ですよね。どういう順番で見てもいいし。もう何回も見たアニメを流しておくような感覚というか、肩の力を抜いて見てほしいですね。

松田 僕はあの……本当に個人的なことなんですけど……。緑のウィッグを付けたときに、皆さんに「小松菜奈さんに似てる」と言われて……。って、怒られますよね、すみません!

──でもツンに限らず、このミュータントのヴィジュアルは確かにここでしか見られないですよね。

松田 そうですね。ちなみに、僕は1、2話と、3話以降でちょっと髪型が変わってるんですよ。そこにも注目してもらえたら。

寺山 あとは普段見られない素笑いも見られるかと。

本田 誰も我慢してないもんね(笑)。

寺山 そうそう。普段の舞台上だったら怒られることも、何のためらいもなく楽しんでやっているので、そのあたりを見ていただけたらうれしいです。

■3人が思う2.5次元作品の魅力とは?

──この作品は「DMM TV」オリジナル番組企画「2.5次元的世界」の中の1作品です。普段から2.5次元舞台にも出演されている皆さんは、2.5次元作品の魅力や面白さをどういうところに感じていますか?

本田 言い切れないくらいたくさんありますけど、やっぱり新たな間口を作ったというのが一番大きいと思います。今まで演劇を見たことがない人が、その作品をきっかけに「これがお芝居なんだ」って思うわけじゃないですか。それはすごくすごく重たいことですが、この歳で、あの規模の人数が関わっている作品を、しかも演劇界の責任も背負ってやれるのは、すごくありがたいと思いますし、魅力だと思っています。

松田 アニメや漫画で見ていたものが目の前で表現されるので「こういう見せ方があるんだ」という発見がある。それが面白さだと思います。技術的なこともそうですし、作品によって原作にすごく忠実に再現することもあれば、ストーリーを変えたりキャラクターを変えたりすることもあって。見ているときも感じましたけど、自分が出演する側になったときに、さらにそのアプローチの広さに驚きましたし、勉強にもなりましたね。

本田 原作よりも殺陣の手が増えてたりすると、テンション上がりますよね。

寺山 わかる!

本田 原作だとさっと描かれて終わるところが、「実際に戦ったらこう見えるんだ」って。そういうのを見るとテンション上がります。

松田 生でやるからこそ、ですよね。

寺山 僕が思う魅力は、何よりも圧倒的な華やかさ。衣装もヘアメイクもそうだし、照明、演出……何もかもが華やかでキラキラしていて。僕は見に行くと元気をもらえるので、僕が出ている作品でもお客さんが同じように元気をもらえていたらうれしいですね。あとは礼生くんが言ったように、日本発のすごい文化。だから世界に広まってほしいし、それで海外公演をやるときには出たい(笑)。そのくらい日本が誇るべき文化だと思いますし、携われているのはありがたいです。

■松田の驚きのコメントにざわつく面々

──では最後に、皆さんの俳優としての今後の目標や展望を教えてください。

寺山 楽しいことをチョイスし続けて、「楽しい人生だったな」と思える俳優人生を送りたい。「楽しそうな作品なら出る」というスタンスでやっているので。とにかく「楽しい!」「出てよかった」と思う連続でありたいですね。

──「箱ミュ」も楽しそうと思って出ることを決めたのでしょうか?

寺山 そうです、そうです。企画書見て「バラエティなんだ、楽しそう」「あ、顕作さんなんだ、楽しそう」「どの役やるかわかんない、まいっか」って。で、「ツンじゃなくてよかった〜」って思うんですけど(笑)。

松田 (笑)

寺山 ヒャホとしてめちゃくちゃ楽しませてもらいましたし、新しい出会いもあって。またこのメンバーとほかの作品ができたら、それも絶対に楽しいと思う!

──松田さんはいかがですか?

松田 僕は役者を始めて3年が経ったところで……。

寺山・本田 えっ!?

寺山 嘘でしょ?

本田 3年? めちゃくちゃ芝居できるじゃん。

寺山 ね。すごいよ! ……あ、ごめん、続けて!

松田 ありがとうございます。3年間でいろいろな作品をやらせてもらったんですけど、まだまだ自分の知らないことはたくさんあって。だからまだやったことのないような作品や役どころに挑戦していきたいなと思います。この先自分がどうなりたいと思うのかは、まだわからないですけど、今はとにかくたくさん吸収して引き出しを増やしたい。あとは曲を作ったりもしているので、そういうところも生かして、自分にしかできないようなお芝居をやっていきたいです。

本田 この質問っていろいろなところでしていただくんですけど、常々変わると思っていて。今は、その時代時代で柔軟に演じられる役者になりたいとすごく感じています。僕は、30年間続いているエンタテインメント集団である「THE CONVOY SHOW」の公演や、今年3月のTHE MIX UP vol.3 「朝日のような夕日をつれて」という、鴻上尚史さんが1981年に脚本を書いた作品に出演したりと、様々なジャンルの芝居をさせてもらっています。そしてさらに「箱ミュ」という最先端の挑戦があって。いろいろな時代の作品、役を演じるためにも、柔軟な役者でいたいと思っています。演劇人生が長くなっていくにつれて吸収力が昔より弱くなってきてしまっていると感じる瞬間もあるので、もっともっと吸収したいし、ちゃんと出力もしたい。そういう役者でいたいです。

──ありがとうございました。ではインタビューは以上です。

一同 ありがとうございました!

寺山 いや、それにしても……松田くん、まだ3年か〜。すげえなー。最初に言ってよ、「俺、3年です」って(笑)。

本田 そしたらもっとパシリに使ったのに!(笑)

松田 あはは(笑)。

■取材・文/小林千絵

撮影/曽我美芽

「箱入りミュータント」出演の松田昇大(左)、本田礼生(中央)、寺山武志(右)/撮影=曽我美芽