2023年もいよいよ新年度。すでに学卒者が入社している会社もありますが、フレッシャーズを目にしては、「自分もこんな時があったなあ」と思わず目を細めてしまうことも。そんな新卒社員ですが、いまから老後を見据えていおいたほうが身のためです。みていきましょう。

大学卒で入社の新入社員「給与は平均22万8,500円」だが…

大学卒業した新卒者の給与、平均22万8,500円(男性22万9,700円、女性22万7,200円)。昨年より3,100円ほど上昇しました。今年は大企業を中心に賃上げが実現し、その中心となるのが新入社員をはじめとした若年層。来年はさらなる上昇がみこまれるでしょう。

給与から天引きされるのは、大きく「税金」と「保険料」。税金は個人の所得に対してかかる「所得税」と、1月1日時点で居住している都道府県市区町村に納める「住民税」。新卒者は課税対象となる所得がないため徴収されず、4月入社であれば、その年の12月までに支払われた給与や賞与が翌年の住民税の課税対象となります。給与から天引きされるのは、2年目の6月からになります。

保険料は、「厚生年金保険」「健康保険」「雇用保険」「介護保険」。会社と従業員が負担し合うもので、介護保険は40歳以上になると加入義務が発生。多くの大学新卒者は対象外となります。

いろいろと天引きされるので、月収およそ23万円であれば、手取りは17万~18万円ほど。実家暮らしでなければ、そこから家賃や水道光熱費、通信費、毎日の食事代などを払っていくと……余裕のある暮らしができる、という水準ではないかもしれません。

ただ年功序列が色濃く残る日本企業。一般的に年齢を重ねるごとに給与はアップします。大卒サラリーマンの平均給与をみていくと、30代には月収30万円台、40代には月収40万円台、50代には月収50万円台。中央値では平均値とは若干の差はあるものの、定年まで順調に上がり続けます。

【大卒サラリーマンの給与の推移】

20~24歳:235,800円(229,300円)/3,192,732円(3,104,722円)

25~29歳:273,400円(257,400円)/4,150,212円(3,907,332円)

30~34歳:321,700円(297,500円)/4,947,746円(4,575,550円)

35~39歳:378,500円(341,300円)/5,855,395円(5,279,911円)

40~44歳:418,400円(379,400円)/6,514,488円(5,907,258円)

45~49歳:460,600円(419,500円)/7,222,208円(6,577,760円)

50~54歳:506,900円(467,600円)/8,069,848円(7,444,192円)

55~59歳:525,700円(483,800円)/8,327,088円(7,663,392円)

60~64歳:420,600円(357,800円)/6,245,910円(5,313,330円)

出所:厚生労働省令和4年賃金構造基本統計調査』より算出

※数値は左より月収平均値(月収中央値)/年収中央値(年収中央値)

大卒新入社員「年金だけで暮らせる老後」がみえてきたが

年齢と共に、順調に上がり続けるであろう給与。しかし初任給とともに初めて給与明細を目にしたとき、「こんなに天引きされるんだ……」と肩を落とすことになるでしょう。特に老後にはほど遠い新入社員にとっては、「なんで厚生年金でこんなに払うんだ」と憤りを覚えるかもしれません。

そこで、仮にずっとちょうど真ん中の給与(中央値)を手にする会社員人生を送るとすると、どれほどの年金を手にできるか、考えてみましょう。

現行制度では、厚生年金保険料は「平均標準報酬額(≒平均月収+賞与)×5.481/1000×加入月数」で算出できます(2003年4月以降の場合)。定年が60歳だとすると、平均標準報酬額は44万円となり、厚生年金は月9万4,053円。国民年金は満額支給とすれば、月々15万8,053円の年金を手にすることになります。

総務省『家計調査 家計収支編』(2022年平均)によると、65歳以上の単身世帯の平均消費支出は14万9,208円。

――やった、年金だけで暮らせる!

と思ったのなら、早合点。上記の年金額は給与と同じく“額面”。10~15%ほど天引きされると考えると、年金は13.4万~14.2万円ほどとなり、ちょうど真ん中の給与の大卒サラリーマンでは「微妙に年金だけでは暮らせない」というのが現実です。

ただいまの世代は定年年齢があがり、65歳まで働くのが当たり前、となるのが濃厚。仮に65歳まで正社員として働いたのなら、平均標準報酬額は47万円となり、加入月数も増えたことで、厚生年金部分は11.3万円となり、年金総額は17.7万円に。手取り年金は15.0万~15.9万円となり、「年金だけで暮らせる」という状況になるでしょう。

あくまでも現行の年金制度は積立方式ではないので、払った分だけ年金がもらえる、というわけではありませんが、平均寿命を考えれば、意外といい投資とも考えることができます。

そんな、ちょっと明るい未来の話をしてきましたが、すべて現行制度で現行の水準で考えた場合のこと。現実の話をしていきましょう。

先日、出生数が80万人を割り想定よりも10年早く少子化が進んでいると話題になりました。今後、それだけ高齢者を支える現役世代が少なくなり、現役世代が高齢者を支えるという年金制度の維持が疑問視されています。現状の財政検証を紐解いても「年金2割目減りは確実」といえる状況。先ほどの前提から「さらに年金2割減」とすると「年金だけで安心」という世界はあっという間に崩れ去ります。

――年金制度の崩壊

「そんなの冗談でしょ」と思うかもしれませんが、改革なくして制度は保てないとされており、現行制度を基準に考えると痛い目にあうのは確実です。

想定よりも早く状況悪化が進行する日本。年金2割減など序の口で、何割目減りとなるかは未知数だといえるでしょう。「年金は当てにしない」「年金はもらえたらラッキー」くらいに考え、コツコツと将来の見据えて資産形成を始めるほうが身のためです。

(※写真はイメージです/PIXTA)