AV新法の施行に始まり、ハプニングバーや乱交パーティの摘発など、性関連のニュースが目立った2022年。とりわけ都内の性風俗シーンに”衝撃”を与えたのは、大手ピンサログループAKプランニング」の摘発だろう。同グループは「レモン系」という愛称で呼ばれ、西東京エリアを中心に20店舗以上のピンサロを展開していた。人気店にもなると、オープン前から男たちの行列ができることも珍しくなかったという。

 そんな巨大ピンサログループが、なぜ一斉閉店に追い込まれたのか? そして、摘発から3か月経った現在の状況とは? 2023年、令和のピンサロシーンの最前線に迫った

◆AKプランニングの摘発の衝撃

「今までご愛顧ありがとうございました」。今年1月、AKプランニングが運営するピンサロには、こんな張り紙があった――。

「もともとは、昨年11月に渋谷の『スッキリ』という系列店が”公然わいせつ罪”で摘発。それに伴い、翌月に同グループの経営者も”風営法違反”などの容疑で立件されたことにより、系列のピンサロも一斉閉店に追い込まれました」(社会部記者)

 そもそもピンサロとは、手や口による性的サービスを提供する風俗店の一業態。30分数千円と他業態に比べて低価格で遊べるのが特徴だ。AKプランニングといえば、ピンサロ業界では1位、2位を争うほどの大手グループとして知られていた。その人気の理由を、都内在住のピンサロマニアの男性は語る。

いわゆるフーゾク嬢っぽくない、清楚な子が多いんです。というのも、ここってガールズバーの求人に見せかけて、キャスト(ピンサロ嬢)を集めてるらしくて。だからフーゾク業界未経験の女子大生も多かったんですよね」

◆一都三県で計24店舗が閉店

 ソープやヘルスよりも安い6000~8000円の料金ほどで、いわゆる”素人っぽい子”と遊べるのがレモン系ピンサロの魅力だったというが、昨年12月に一斉閉店を余儀なくされた。

特にショックが大きかったのは、中央線沿いに住む人たちでしょうね。立川の『ブリリアント』や八王子の『サンライズ』など、レモン系は西東京エリアに人気店が多かったので、土日にもなると、オープン前から行列ができる日も少なくありませんでした」(前出のピンサロマニア

 渋谷「スッキリ」の摘発をキッカケに、立川「ブリリアント」や八王子サンライズ」といった西東京エリアの他、上野「ジャスミン」や錦糸町ゴッドタン」といった、下町の有名店も続々と休業する事態に。その結果、一都三県で、計24店舗のレモン系ピンサロが閉店した。

キャバクラと同じ営業形態

 たしかに、以前からピンサロが摘発されるケースは珍しくなかった。実際、警視庁が毎年発表している「風俗営業等の現状と風俗関係事犯の取締り状況等」では2018年には都内42店舗、翌年45店舗(「社交飲食店」扱い)に行政処分を出し、毎年、全体の半分近くの店を営業停止に追い込んでいる。

 もともと、ピンサロは風営法の許可を得ておらず、“接待飲食店”というキャバクラと同じ営業形態だ。店側も、あくまで接客中の“自由恋愛”として性的サービスを提供しているので、警察のサジ加減しだいでいつでも摘発できてしまう、グレーな業態なのだ。

 前述の社会部記者は言う。

「近年だと、東京オリンピックに向けた“他国への見せしめ”として、巣鴨の『曙』や上野の『マジックバナナ』が摘発されました。警察の言い分としては、『脱いでるところが丸見えだから』とのことですが、そもそもピンサロは風営法の許可を得ていないので、ブースで区切られた“半個室”でしか営業できませんし、完全に言いがかりでしょう」

グループ摘発というレアケース

 ただし、これまでも“一部の店舗”が摘発されても、“グループ全体”が一斉閉店することはなかったという。

AKプランニングはここ数年の間、破竹の勢いで成長を続けていました。ピンサロ業界を飛び越え、悪い意味で目立ってしまったのでしょう。今回の場合だと、警察も相当本腰を入れて、グループの経営者の立件まで踏み切ったはずです」(同上)

 そんな”前代未聞”の騒動から2か月。警察とのいたちごっこはまだ続いている。AKプランニングが、新たに7店舗のピンサロをオープンしたのだ。

◆AKプランニングの新店がオープン

 東京以外の3県(埼玉・千葉・神奈川)で、新店が続々とオープン。なかでも大宮・船橋・川崎のピンサロは、都心からのアクセスが良いこともあり、開店前から行列ができることも。が、以前とはサービスの内容に変化があったと、風俗ライターは指摘する

「去年の摘発理由が”公然わいせつ”でしたから、店側も細心の注意を払っているのでしょう。半個室でサービスを受けるときも、基本的には制服姿のまま接客してきますし、女の子のハダカを見れる機会はめっきり減りました。以前のような過激なサービスは、かなり少なくなった気がします」

 ただ一方で、さすがは大手ピンサログループなだけあって、連日のように賑わっているという。

「土日にもなると、オープン前から並んでいる人も多いですね。特に人気のキャスト(ピンサロ嬢)にもなると、2~3時間ほど待たされることも珍しくありません。コロナ明けということもあり、どの店もかなり繁盛している印象ですね」(同上)

◆なぜ都内には出店しないのか問題

 去年の一斉閉店から早3か月。AKプランニングは新店舗のオープンを皮切りに、まさに”再スタート”を切ることになった。しかし店舗一覧に、なぜ都内のピンサロが1軒もないのか? その理由を、前述の社会部記者は分析する。

グループ側も、再摘発のリスクを恐れているのだろう。そもそもピンサロ自体グレーな業態だし、また都内に出店しようもんなら、警視庁も黙っていない。まずは郊外で様子を見てから、再オープンするタイミングを窺っているのでしょう

 2023年、AKプランニングに未来はあるのか? 警察と業界のいたちごっこは続く。

<取材・文/金田裕一>

【金田裕一】
ライター1995年生まれ。月刊誌の編集を経てフリーランスに。主に10~20代に巻き起こっている、アングラムーブメントを探求する記者として活動

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