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  墓場をただよう青や緑の不気味な炎…民話や伝承に伝わる「鬼火」はもしかしたら、環形動物であるゴカイが誤解されたものだったのかもしれない。

 名古屋大学などの研究チームが発見した、世にも珍しい青紫色に生物発光するヒカリフサゴカイの新種3種は、、日本各地に伝わる怪火「鬼火」に似ているのだ。

 そのうちの2種は日本の妖怪や怪奇現象にちなんで名付けられた。

 だが妖怪の名だからといって、人間を祟ったりすることはない。それどころか、多様な生物発光機構の理解に役立つ可能性があるという。

【画像】 青紫色に発光する3種のゴカイが発見される

 名古屋大学の自見直人氏らが科学誌『Royal Society Open Science』(2023年3月29日付)で発表した3種の新種は、世にも不思議な青紫色の光を放つ。

 それらは石川県能登島、鳥取県岩美、三重県菅島で捕まえられたもので、ヒカリフサゴカイ属の仲間だ。

 ヒカリフサゴカイが光るのは、生物が持つ特別な化学物質が酸素と反応することで、自分の体で光を作り出して放つ「生物発光」によるものだ。

 だが、ヒカリフサゴカイの仲間は日本では1917年以降分類学的な研究がされておらず、種を同定することが難しい状況にあった。

[もっと知りたい!→]ホタルの光より確実。暗闇でも文字が識別できるくらい明るい新種の発光ヤスデ

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新種2種に日本の怪談にちなんだ名前が付けられる

 これらのゴカイは、青紫に発光し、夜には霞んで見えるのだから、案外これが日本の怪談のモチーフになったのかもしれない。

 実際、自見氏らは、新種のゴカイに日本の怪談で語られる妖怪や怪奇現象にちなんだ名前をつけている。

 たとえば「オニビフサゴカイ(Polycirrus onibi)」の「鬼火」は、人里離れた山や森で夜な夜などこからともなく現れては、旅人を迷わせるという火の玉のことだ。

 「アオアンドンフサゴカイ(Polycirrus aoandon)」の「青行燈(あおあんどん)」は、女の姿をした妖怪だ。

 みんなで集まって順番に怪談を語る百物語を知っているだろうか?一話一話と語られ、そして最後の百話目が終わったとき、本物の怪異が現れる。それが青行燈だ。

 江戸時代に鳥山石燕によって描かれた妖怪画集『今昔百鬼拾遺』には、腰までありそうな長い黒髪で、頭にツノを生やし白い着物を羽織った鬼女として描かれている。

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左が鬼火、右が今昔百鬼拾遺に描かれた青行燈

 そして最後の「イケグチフサゴカイ(Polycirrus ikeguchii)」だけは妖怪ではない。こちらは能登島水族館の元館長である池口新一氏にちなんだものだ。

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image credit:名古屋大学

怪しく光る、新種のゴカイが生命科学の未来を照らす

 怪しく光る3種のヒカリフサゴカイの新種たちは、ただ興味深いだけでなく、生命科学の未来を照らしてくれる可能性もあるという。

 発光生物は世界には7,000種以上いるとされるが、発光機構の研究が進んでいるのはごく一部にすぎない。

 2008年、下村脩博士がクラゲの研究から「緑色蛍光タンパク質」を発見したことでノーベル化学賞を受賞した。

 この緑色蛍光タンパク質は、光でマーキングすることでタンパク質や遺伝子の働きを観察することができるため、今では医薬・生命科学に欠かせないものとなっている。

 このように生物発光は新たな生命科学技術にとって非常に重要なメカニズムなのだ。

 釣りの餌としてよく使われるゴカイの中にも生物発光する仲間が知られているが、とりわけヒカリフサゴカイは444nmという非常に珍しい短い波長の光を出すことから、研究者から注目されてきた。

 ただし、その光を研究に利用できるようにするには、種の特定が不可欠だった。そうでなければ「再現性(同じ条件で実験すれば、同じ結果が出ること)」が保証されないからだ。

 それが今回3種が特定され、そのいずれも光ることが確認されたことで、発光生物の研究には非常時使いやすいモデルであることが判明したのだそうだ。

References:名古屋大学研究成果情報 / Scientists name new glow-in-the-dark sea worms after supernatural beings from Japanese folklore / written by hiroching / edited by / parumo

 
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日本で青紫色に光る新種のゴカイが3種発見され、怪談にちなんだ名前が付けられる