生田斗真が主演を務める特集ドラマ「幸運なひと」(夜10:00-10:45ほか、NHK総合)が4月4日(火)、4月11日(火)と2週にわたって前後編で放送される。吉澤智子が脚本を務める同ドラマは、ある日、拓哉ががんになり、「子どもを持つかどうか」の選択を先延ばしにしてきた拓哉と咲良の夫婦関係が変わり始める姿を描く。

【写真】首を横にかしげて微笑む多部未華子のかわいいショット

WEBザテレビジョンでは、同ドラマで生田演じる拓哉の妻・咲良を演じる多部未華子にインタビューを実施。咲良を演じる上で大切にしたことや、脚本を読んだ感想や魅力、夫・拓哉を演じる生田との共演についてなどを語ってもらった。

■当事者として経験されている方なので、言葉の重みを感じました

――今作は脚本を務める吉澤智子さんの実体験を基に描かれた作品ですが、実際に演じられて感じた脚本の魅力を教えてください。

(吉澤さん自身)当事者として経験されている方なので、言葉の重みを感じましたね。私はがんの経験もなければ、近しい人にもいなかったので、「きっとこれがリアルなんだろうな」という気持ちで演じました。

――実際に脚本を読んだ感想を教えてください。

「がん」をテーマにした作品ではありますが、悲しく暗い感じではなく、とても前向きな夫婦の物語だと感じました。

■考え方や物事の見え方は180度変わるとは思います

――今作は、がんについて描かれつつ「闘病記」ではないということですが。

そうですね。私もドラマのお話を聞いた時は、「がん」がテーマということで悲しい物語になるのかなと思っていました。ですが、撮影に入る前にがん患者のご家族の方のお話を伺って、実際に撮影をしていく中で、がんになって考え方や物事の見え方は180度変わったとしても、(ドラマで描かれるように)目の前にある生活は変えられないし、変わらないということを実感しました。

■見てきた世界が全然違うのだと衝撃を受けました

――撮影前に実際のがん患者の家族の方のお話を伺ったとのことですが、いかがでしたか?

初めてがん患者のご家族の方とお話しをする機会をいただいて、私と同い歳くらいの方でしたが、本当に(私とは)見てきた世界が全然違うのだと衝撃を受けました。とても明るく力強さもある方でしたが、その裏で計り知れない苦労や悲しみ、寂しさがあって、それを経て、「今を大事に楽しもう」と思いながら過ごしてきたのだろうというのが、その方の笑顔から伝わりました。撮影前に本当に貴重な機会をいただけてありがたかったです。

――主人公の拓哉の妻・咲良役として、どのようなことを大切に演じられましたか?

がん患者の妻として、どのように演じたらリアリティを表現できるかということを常に悩みながら撮影に臨みました。咲良は悩むシーンが多く、一人の女性としてどのように生きていきたいか、がんを宣告された夫に対してどういう表現や言い方で伝えるのが咲良らしいのか、ということを日々考えながら演じていました。世の中にはいろいろな家族がいて、さまざまな向き合い方があるので正解はないと思います。その中で、咲良が拓哉に対して、冷たく言葉をかけるのか、説得するように言うのか、相手をポジティブにさせるように言うのか、正解がないながらも正解を探りながら演じていました。

■作品の雰囲気にあまり影響されることがないタイプ

――生田斗真さんとの共演はいかがでしたか?

今回で2度目の共演になるので、初日から和気あいあいと撮影に臨ませていただきました。明るいシーンも多かったのですが、基本的には(拓哉と咲良は)悲しいシーンや辛いシーンもたくさんあって。ですが、本番が始まるまでは変わらずに過ごしていましたね。私自身も作品の雰囲気にあまり影響されることがないタイプなので、そういう意味ではとても波長が合って、楽しく撮影ができました。

――妻を演じる中で、生田さんが演じる拓哉をどのように見ていましたか?

拓哉は(がんを患ってしまいますが)基本的に明るい人で弱音も吐かない人なので、演じる上では大変な役だろうなと、撮影を通して感じました。今回のドラマが夫婦の物語ということもあって、生田さんとは大事なシーンが多かったのでとても刺激的でした。

■本当にリアルに描かれているなと感じました

――他の共演者とのエピソードがあれば、お聞かせください。

レコーディングのシーンが撮影初日だったのですが、西田尚美さんと「探り探りだよね」などと楽しく会話をしながら撮影をして、とてもすてきな方でした。

――山中崇さん演じる医師・中村昭彦とシーンについて、医者と患者の関係性についてどう感じましたか?

今回山中さんが演じられたようなお医者さんに、私も実際に出会ったら、「なんだか冷たい」と思ってしまいそうです。お医者さんと患者の関係は難しいと感じましたが、咲良が中村に対して、「プロとして(意見を)聞いているんです」と言うのも、間違いではないと思いますし、「今まで(多くの患者を)見てきているでしょ」と実際に私も聞いてしまうと思います。でも、「患者のプロではない」という中村の言葉も「確かに。それもそうか」と納得できる部分があって、本当にリアルに描かれているなと感じました。

■咲良の本音が出たと感じる一言だったと思います

――ドラマの中でピアノを弾くシーンが描かれますが、いかがでしたか?

とても苦労しました。撮影とは別でレッスンを何度も受けて撮影に臨みました。

――印象に残っているせりふや好きなせりふはありますか?

今回の作品では「エゴ」という言葉が度々出てきます。人生の中でここまで多く「エゴ」という言葉を耳にしたことはなかったので、考えるきっかけとなりました。「これは私のエゴなんだ」というせりふは、咲良の本音が出たと感じる一言だったと思いますし、それを受け止めてくれる相手がいるような人生を歩める人は、とても幸せな人なのかもしれないと感じました。

■夫婦の成長物語を見ていただけたらと

――子どもへの思いや音楽の夢などを抱く咲良ですが、夫のがんを聞いて何を一番に考えていたと思いますか?

何かを一番に選ぶことができない結果、「全部欲しい」につながったんだと思います。もちろん夫は大切ですけど、生活もあれば自分のキャリアもあるのでそれだけでは生きていけない。そこがとてもリアルだなと思いました。たとえ夫ががんになったからと言って、費やす時間配分は人それぞれだと思うので、「もちろん大切だけど夫が一番というわけでもない」という葛藤を、寄り添うご家族の方は抱いているような気がします。

――最後に読者へメッセージをお願いします!

このドラマは悲しい病気の物語ではなくて、一つの出来事をきっかけに夫婦の向き合い方や二人の人生の選択の話だと思うので、ぜひ夫婦の成長物語を見ていただけたらと思います。

多部未華子/(C)NHK