Cranebio株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:山本大輔)はメタウォーター株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:山口賢二)と共同で水質の簡易迅速検査に取り組んでおり、この度、その研究成果の一部を第57回日本水環境学会年会にて、「DNAオリガミ法による大腸菌DNAの検出」との題名で発表いたしました。
■研究の背景
上水道や下水道をはじめとして、様々なシーンで利用される水には水質基準が設けられております。その項目の中でも大腸菌をはじめとする細菌類の検査項目は、採水後に菌類を培養することで菌数を確認する手法が現在広く用いられております。この手法は歴史的に長く実施されており知見が多い一方、結果が得られるまでに数日を要することから、迅速に結果が得られないという欠点が存在しておりました。
その点、PCR法は水中の菌の遺伝子を迅速に増幅することが出来る点において、培養法に対して優位な手法でありますが、検出には高額な装置を用いる蛍光や専門技術が必要である電気泳動等の手法が必要となります。水質検査には安価でありながら、誰でも簡単に測定が出来る手法が求められており、社会実装には課題を残していると言えます。
当研究グループでは、2021年より、Cranebio株式会社の固有技術であるDNA Origami技術を用いた人工酵素Dozymeを用い、これらのPCR法の課題を克服し、水中の細菌類を迅速に測定する技術の開発を進めてまいりました。

■発表の概要
大腸菌プラスミドをPCR法によって増幅を行い、転写反応を用いて1本鎖へと転写した後に、Dozymeと混合することでDozymeの発光をプレートリーダーを用いて観察いたしました(図1)。その結果、大腸菌プラスミドは本手法にて観測可能であることが確認されました。
また、この実験にて得られた発光をスマートフォンを用いて観測を行いました(図2)。この結果より、プレートリーダーを用いずに市販のスマートフォンを測定装置として利用した場合でも、Dozymeの発光が観測可能であることが示されております。

図1. Dozymeを用いた大腸菌プラスミドの発光検出
図2. 発光をスマートフォンで捉えた結果

■本研究成果を受けた今後の展開
本研究成果により、迅速水質検査の実現可能性が示されました。本測定方法に要した時間は前後の工程を合わせても2時間程度であり、既存法に対して大きなメリットとなり得るものです。今後実際の河川や上下水道水の測定を継続しながら、従来法との相関性確認と新しい水質マネジメント法の開発を進めてまいります。

■人工酵素Dozymeについて
Cranebio株式会社のオリジナル技術であり、DNAナノテクノロジーの一種であるDNA Origamiを用い、DNA Origamiの構造変化を利用して酵素活性のON/OFFを自在にコントロールする技術です。
Dozymeは溶液中でアンチパラレル、クロス、パラレルの3通りの構造をとり、「アンチパラレル型では酵素活性がOFFだが、パラレル型では酵素活性がONになる」という性質を人工的に付与、「大腸菌遺伝子の存在下でのみパラレル型が出現する」ことで大腸菌の検出を可能としております。

■メタウォーター株式会社について
2008年4月、日本ガイシと富士電機の水環境部門の合併により誕生したメタウォーターは、水処理分野では国内初となる機電一体型の会社です。水環境プラントに必要な機械設備・電気設計を製品として有するとともに、プラントの設計、施工、運転・維持管理までを網羅した事業内容で、上下水道施設に最適なソリューションを提供しています。
HP:https://www.metawater.co.jp


■Cranebio株式会社について
Cranebio株式会社は「ヘルスケアをもっと簡単に、もっと身近に」をスローガンに簡便な検査手法の開発を行なっているバイオベンチャーです。高感度検査を実現する技術とユーザビリティを考えた設計思想により、UXを考えた検査を実現いたします。
HP:https://ww.crane-bio.com/

配信元企業:Cranebio株式会社

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