代替テキスト
(C)JMPA

積極的な広報や新たな情報発信方法を検討するため、新年度の4月1日から宮内庁に新設された広報室。民間からも人材を登用し、10人ほどの人数でスタートする。秋篠宮さまと紀子さまも、これまでになかった新部署に大きな期待を寄せていらっしゃるようだ。

「秋篠宮ご夫妻は、皇室の中でもっとも報道やインターネット上の書き込みに悩まれてきました。眞子さんの結婚騒動以降、秋篠宮家に対して多くの批判が国民から巻き起こり、心ない中傷まで多く広まりました。

ご夫妻は“どう対応すれば中傷や批判が減るのか”と苦悩されてきたのです。とくに紀子さまは皇嗣家のイメージ回復について心を砕かれてきました。

英王室など世界の王室で活用され、国民の親近感を高めることに役立っているSNS活用についてはこれから検討が進むことになりそうですが、まずは宮内庁のホームページのリニューアルなどから着手すると聞いています」(宮内庁関係者)

秋篠宮さまは、2021年と2022年のお誕生日に際しての記者会見で、皇室の情報発信のあり方について述べられている。

「2年前の会見では、皇室に対する誤った情報への反論について“基準を作る”必要性を認めつつも、昨年はご自身で試しに報道の誤りをチェックされ、“それは難しい”と実感されたなどと、たびたびお話しになっています。

秋篠宮ご夫妻の期待の強さもあって、責任者である広報室長にどのような人材が起用されるのか、宮内庁内でも注目が集まっていたのです」(皇室担当記者)

白羽の矢が立ったのは、各都道府県の警察を指揮している警察庁の女性キャリア官僚だった――。

「広報室長に選ばれたのは警察庁警備局の外事情報部で経済安全保障室長を務めていた藤原麻衣子さん(44)でした。経済安全保障室は昨年発足した部署で、事件の捜査指揮や情報収集、企業などに対し情報管理について助言する活動を行っている“スパイ対策”のプロ集団です。

近年、日本の先端技術がスパイ活動によって諸外国に流出するケースが多発していることなどから、政府は経済安全保障の分野に力を入れています。その最前線で管理職を務めあげたことで、藤原さんは“警察庁のエース”という評価を確実にしていました」(警察庁関係者)

スパイ対策などを担う経済安全保障室のような部門は、公安警察と呼ばれる。藤原氏は、まさに“スパイハンター”がそろった組織を率いていた強面な顔を持っているわけだが――。

■新設ポストにも波紋が広がり……

「就任に際して藤原さんは、『身が引き締まる思い』と緊張した様子で宮内記者会に挨拶していたそうです。秋篠宮ご夫妻はじめ、皇族方も期待するポストですから無理もありません。

ただ、藤原さんは“情報統制”といったセキュリティやリスクマネジメントの専門家であって、皇室の方々に対して国民が抱く親近感を高める広報の専門家ではないことに、早くも心配する声が聞こえてくるのです」(前出・宮内庁関係者)

戦後、「開かれた皇室」を掲げて国民との距離を近づけようと、皇室はさまざまな努力を重ねてきた。だが、新設される広報室の体制が、こうした流れとは逆行する動きに見えるという声も多いのだ。

「広報室の体制も発表されたのですが、特に『渉外専門官』というポストが設けられることに波紋が広がっています。その仕事は“皇室の名誉を損なう不適切な出版物などへの対応を想定する”とされているため、“今後は批判を許さないということなのか”と疑問を持たざるをえません」(前出・皇室担当記者)

本来、公安警察は全国の情報網を用いて、定期的に政治団体や外国人などの動向を把握し、不測の事態に対応する組織とされる。皇室制度の歴史に詳しい静岡福祉大学名誉教授の小田部雄次さんはこう警鐘を鳴らす。

「情報収集や“監視”に力を入れている部署を率いた警察官僚が広報室のトップになることで、皇室の“正しい情報発信”というより、国民の皇室に対する意識の把握や“メディアに睨みを利かせる”部署であるという印象が強まってしまう懸念があります。

広報室が推進するというSNSの活用については、皇室と国民の間で意見交換を可能にする側面があり、将来の皇室にとって大きなメリットとなるでしょう。

しかし、広報室が警察的な仕事をする組織となってしまえば、皇室に対する国民の敬愛の念は萎縮し、『開かれた皇室』という理想は崩れ、戦前のような『閉ざされた皇室』となりかねません。戦後の皇室が長い年月をかけて育ててきた国民との信頼関係を崩しかねない危うさを、この人事ははらんでいると思います」

国民が求めるような情報発信よりも、“ネガティブな意見や声”をおさえることを重視するのであれば、皇室が積み重ねてきた国民からの信頼を無に帰してしまいかねない――。