「疲れた」が口癖になっている人、身近にいませんか。仕事などで本当に「疲れている」ことは理解しつつも、たびたび「疲れた」を口に出されると、誰しもあまり気分のいいものではありません。実際に、「夫がこのタイプ」「何かにつけてすぐ『疲れた』って言う人いるよね」「『疲れた』と言われると、正直こっちまで疲れる」など、不快に感じている人も少なくないようです。

 口癖のように、すぐ「疲れた」と言う人の心理とは、どのようなものなのでしょうか。心理カウンセラーの小日向るり子さんに聞きました。

「甘え」や「承認」の心理が働いている

Q.日常的に、口癖のように「疲れた」と声に出して言う人がいますが、これはどういう心理から来る言動だと思われますか。

小日向さん「独り言でなく、対人に向かって口癖のように『疲れた』と言う人にはいくつかの心理があると考えられますが、言う相手が特定されている場合は、その人に対する『甘え』の心理があることが多いと思います。つまり、『疲れた私を優しくいたわってほしい』とか『代わりに何かをしてほしい』という願望です。従って、甘えられる存在であるパートナーや家族が対象になることが多いでしょう。

一方、誰かれ構わず、あいさつのように『疲れた』と言う人は、『私を理解してほしい』という承認の心理が強く働いていることが考えられます。幼少時に自分を理解してくれる人がいなかった、特に家族から理解されずに育った成育歴を持つ場合は、幼少期に満たされなかった承認欲求がさまざまな言動として現れますが、その一つとして考えられます。なお、当人の承認欲求や甘えが満たされる環境がある場合は、口にする割合が増えていきます。

また、『疲れる』と言っている本人には、それが口癖になっているという自覚がない場合がほとんどです」

Q.「疲れた」を頻繁に発する人、口癖になっている人にみられる特徴はありますか。

小日向さん「年齢、性別関係なく、『疲れた』と言うことで何かが許される環境にいる人は、頻繁に発するようになりやすいといえます。例えば、夫婦の一方が『疲れた』と発することで、もう一方が家事など家庭のことを全てやってくれる、といった場合です。本人も言い始めた当初は意図的ではないのですが、日常生活を共にしていくうちに『疲れたと言えば相手がやってくれる』ということを学んでしまうのです。

また、そうした損得だけでなく、『疲れた』と言ったときに『お疲れさま』とか『大変だったね』といったいたわりの言葉があると心が癒やされるので、そうした癒やしを求めて頻繁に発するようになり、それが習慣として口癖になることもあります」

Q.「疲れた」が口癖になっている人が身近にいる人の中には、「こっちまで疲れる」「不快」と感じる人が少なくないようですが、なぜ「疲れた」の言葉を聞くと、こうしたネガティブな気持ちになることが多いのでしょうか。

小日向さん「例えば、営業の仕事をしている人は、仕事で交渉相手に使う言葉には非常に気を使うと思います。それはなぜかというと、言葉は人の感情を動かす大きなエネルギーであると分かっているからです。言葉は目に見えないため、プライベートでは意識しづらいですが、音にはエネルギーがあります。つまり、ネガティブな言葉はネガティブなエネルギーを持っているということです。

誰でも、ネガティブなエネルギーを受け止めるのはしんどいですよね。特に、自分のコンディションがよくないときには疲弊してしまいます。ただし、だからといって『疲れた』という言葉を一概に悪い言葉だと断定することもできません。自分がとても疲れているときに、誰かの『疲れた』という言葉を聞いて『疲れているのは自分だけじゃないのだ』という同調心理が働き、安心できるということもあるのです」

Q.「疲れた」を頻繁に発する人に対して、どのような接し方をするとよいでしょうか。

小日向さん「相手の『疲れた』という言葉の裏にある感情を推測し、それに応じた接し方をしましょう。『(疲れたから)ねぎらいの言葉が欲しい』『(疲れたから)夕飯を作りたくない』『(疲れたから)一人にしてほしい』など、『疲れた』という言葉の先には願望があります。それを読み取り、例えば自分も疲れている場合は、『疲れているなら夕飯作りたくない? 私も疲れたから外食しようか』など、自分のコンディションに負担のない解決策を提案できるとよいと思います。

また、口癖のようになっている場合は、お互いが冷静なときに『疲れたというだけでなく、その先にある願望や気持ちを伝えてほしい』と伝えてみてもよいのではないでしょうか」

オトナンサー編集部

「疲れた」が口癖になっている人も…