カラパイアの元の記事はこちらからご覧ください

 エーゲ海中部、キクラデス諸島に属するギリシャ領のナクソス島を歩き回ると、大理石の採石場に静かに横たわる巨大な岩の像に出くわすかもしれない。

 この長さ11メートルもの青年を模した像は、アポロナスのクーロス像として知られている。

 イースター島モアイ像に似ているとも言えるかもしれないが、髭を生やしたギリシャ神を表した、未完成の石造だと考えられている。

 紀元前8世紀~6世紀の間に作られたとされているが、なぜ、製作途中で放棄され、横たわった状態のままなのだろうか?とても謎めいた存在なのだ。

【画像】 大理石を削り出して作られたアポロナスのクーロス像

 ギリシア神話に登場する豊穣とブドウ酒と酩酊の神、ディオニューソスの巨象としても知られるアポロナスのクーロス像は、エーゲ海ナクソス島北部の静かな海辺の村アポロナス近くにあるギリシャ最古の採石場のひとつにある。

 長さは約11m、重さ80トンもある人型の像が、仰向けに横たわっていおり未完成のままなので形はおぼろげだが、脚や腕、髭面の顔が浮かび上がっているのがわかる。

 古代の彫刻家たちは、のみや鉄のドリル、くさびなどを使って、大理石を削り出してこの像を作った。

 興味深いことに、彼らが使った技法からは、腕や脚などひとつの部位をいっぺんに彫るのではなく、像全体を切り出して、大理石を何層にも分けて削り取っていったことを示している。

・合わせて読みたい→古代エジプト王、ラムセス二世なのか?カイロの住宅地から3000年前の巨大な像が発掘される(続報あり)

 大まかな作業が完了すると、最終的な設置場所に運ぶ間の破損を避けるために、細かい部分にはあまり手をつけなかったようだ。

 よく見てみると、像には水平な溝がつけられているのがわかる。これは、こうした彫刻スタイルの証拠だ。

iStock-482451682

巨大な像は、有名なナクソス大理石から切り出された / image credit:

ギリシャの神、ディオニューソスを現したものである可能性

 いつ頃作られたものなのか?その年代は諸説あるが、紀元前8世紀から6世紀の間の、古代ギリシャアルカイック時代である可能性が高いとされている。

ギ リシャの暗黒時代から始まったこの時期は、芸術、科学、哲学で有名なギリシャ古典時代への道を切り開いた、芸術、政治、技術が劇的に変化した時代だった。

 もともと、この巨象はアポロ神に敬意を表するためのものと考えられていた。町の名がアポロにちなんだものだからだ。

 しかし、1930年代に、考古学者たちが像に髭があることに気づいたため、これはギリシア神話に登場する豊穣とブドウ酒と酩酊の神、ディオニューソスを表したものではないかとされている。

[もっと知りたい!→]なんと網までも!!すべてが大理石でできたサン・セヴェーロ礼拝堂の彫刻がすごい!(イタリア)

 像は、大きな結晶をもつナクソスの白い大理石から彫られている。この石は、クーロス像として知られる古代ギリシャ彫刻によく使われた神聖な石だ。この自立型の彫像は、体の脇に腕をたらして、自然に立っている裸の若い男性を表している。

放置され浸食され、徐々に形を失っていった像

 今日では、あまり見られないため、アポロナスのクーロス像は、何世紀にもわたる自然の侵食の影響を受けていると思われる。

 像は保護されることなく、観光客が自由に上によじ登って写真を撮ったりすることができるため、状態はますます悪くなっている。

 見事な彫像が、どうして未完成のまま放置されてしまったのか?

 いくつかの説はある。採石場で亀裂が発見されたために制作を中止したという説、運搬や設置に必要な技術や人員が不足していたという説、また、政治的な理由や宗教的な理由も考えられているが、正確な理由はいまだ謎のままだ。

References:Abandoned and Unloved, A Stone Giant Lies On The Island Of Naxos | IFLScience / written by konohazuku / edited by / parumo

 
画像・動画、SNSが見られない場合はこちら

未完成のまま放置されたエーゲ海、ナクソス島の巨石像の謎