暖かくなり、冬用の衣類を収納ボックスやクローゼットに収納しようと考えている人も多いのではないでしょうか。その際に注意したいのが、衣類の「虫食い」です。冬用の衣類はセーターやコートなど、虫が好むアイテムが多いので、収納時は防虫剤を使うのが望ましいとされています。

 ところで、防虫剤はどのように扱ったらよいのでしょうか。防虫剤の臭いが衣類に付着する恐れはないのでしょうか。防虫剤「ムシューダ」などを製造する、エステー東京都新宿区)国内事業本部の高野豪さんに聞きました。

衣類に薬剤の臭いが付着する防虫剤も

Q.まず、衣類を食べる虫の主な種類について、教えてください。

高野さん「衣類を食べる虫の生態を知っている人は少なく、目に見えないダニのようなイメージを持たれている人が多いですが、実際は目に見える大きさの虫です。

国内にいる主な衣類害虫は、甲虫の『カツオブシムシ』とガの一種である『イガ』の仲間です。細かく分けると、『ヒメカツオブシムシ』『ヒメマルカツオブシムシ』『イガ』『コイガ』の4種類です。これらの害虫は飛べるので、窓の隙間や洗濯物などを通じて家の中に侵入し、卵を産み付けます。その後、卵から生まれた『幼虫』が家の中で衣類などの繊維を餌にして成長します。

4種類の中でも数が一番多いのはヒメマルカツオブシムシで、4~5月頃に大発生します。起毛部分から、衣服の繊維が薄くなるように広範囲に食べるのが特徴です。

イガは、多いときで年に3回発生します。ヒメマルカツオブシムシほど見かける機会は多くありませんが、鳥の羽や巣などにいます。衣服の1カ所を集中して食べる傾向にあります。

衣類害虫は、湿度が60%以上の場所を好み、繊維だけでなく、繊維くずであるほこりも食べます。たんすやクローゼットなどは、衣類害虫が住み着きやすい場所といえます」

Q.では、どのような衣類が害虫に食べられやすいのでしょうか。

高野さん「衣類害虫は繊維の中でも、カシミヤやウールなどの動物性繊維を最も好みますが、綿や麻などの植物性繊維も食べてしまいます。動物性繊維は最も栄養価が高く、繊維自体が非常に柔らかいので、虫が好んで食べます」

Q.クローゼットや収納ボックスなどで保管していた衣類に小さな穴が開いていた場合、虫食いを疑った方がよいのでしょうか。その場合、どのように対処したらよいのでしょうか。

高野さん「セーターなどの衣類にいくつも穴が開いていた場合、虫食いを疑った方がよいでしょう。一度に何カ所も引っ掛けて傷が生じるとは、考えにくいからです。また、穴が1つでも、長期収納していた衣類の場合、虫食いの可能性が高いでしょう。

虫食いに遭遇したら、まず収納場所をしっかり掃除しましょう。虫食いが起こったということは、虫がまだ存在し、その他の衣類にも被害が出ている可能性があります。

収納場所をきれいにしたら、今度は虫を寄せ付けない環境をつくりましょう。衣類は、長期保管する前に、必ず洗濯やクリーニングをしてください。衣類に食べこぼしや皮脂汚れが付いていると、それが虫の栄養源となり、虫食いのリスクが高まります。

収納場所や衣類を常にチェックすることは難しいので、防虫剤をうまく活用しましょう。また、先述のように、虫は湿気も好むので、除湿剤を併用したり、定期的に換気をしたりするとよいでしょう」

Q.そもそも、防虫剤にはどのような効果があるのでしょうか。

高野さん「防虫剤は、衣類害虫を寄り付かせなくさせる効果のほか、虫の食欲を減退させる効果や虫の卵のふ化を抑制する効果があり、衣類を虫食いから守る作用があります。商品や用途によって、効果や仕様が異なるので、購入時に必ず確認してください。

例えば、当社の『ムシューダ 引き出し・衣装ケース用』は、防虫効果以外にも防カビ剤配合で衣類のカビの発育を抑える効果や、収納空間にダニを寄せ付けにくくする効果(マダニやイエダニを対象とした効果ではない)があります」

Q.防虫剤の正しい置き方や衣類を収納するときの注意点について、教えてください。

高野さん「防虫成分は空気よりも重いので、衣装ケースなどに入れる場合は一番上に置くことで、効果が上から下へと広がります。吊るすタイプの製品の場合、2個以上使用する際は収納場所に均等に配置し、空間内に防虫成分が行き渡るようにしてください。収納場所の大きさによって、使用する用途や個数が異なるので、十分注意してください。

クリーニングの返却時に衣類に付いている透明のポリカバーは、通気性が非常に悪く、湿気やガスがたまりやすいため、付けたまま収納するとカビや変色の原因となります。クリーニング店から衣類を引き取った後はカバーを外し、陰干しをしてから収納しましょう。保管中のほこりが気になる場合は、通気性の良い不織布カバーや防虫カバーに入れ替えてください」

Q.防虫剤を使用することで、臭いが衣類に付着する恐れはないのでしょうか。

高野さん「防虫剤に含まれる薬剤によっては、臭いが衣類に付着する場合があります。例えば、『パラジクロルベンゼン』『ナフタリン』『樟脳(しょうのう)』といった有臭タイプの薬剤を使用した防虫剤は、臭いが衣類に付着します。これらの防虫剤を使用後、衣類の臭いが気になる場合は、陰干しをしてください。

当社の『ムシューダ』などのピレスロイド系の防虫剤は、薬剤の臭いが衣類に付かないのが特徴なので、取り出してすぐに着ることができます」

Q.異なる種類の防虫剤を組み合わせて使っても問題ないのでしょうか。それとも、組み合わせによっては、衣類が劣化する可能性があるのでしょうか。

高野さん「種類の違う防虫剤を同じ場所で併用する場合は、十分に注意してください。当社の『ムシューダ』のようなピレスロイド系の無臭タイプの薬剤は、他のどの防虫剤と併用しても問題ありません。

一方、パラジクロルベンゼン、ナフタリン、樟脳などの有臭タイプの薬剤を含む製品を組み合わせて使うと、薬剤が溶けて衣類に染みができることがあるので、注意しましょう。当社の製品では、『ネオパース』(ナフタリン)や『ネオパラエース』(パラジクロルベンゼン)などが該当します。必ず薬剤の種類を確かめてから使用してください」

Q.除湿剤の選び方や使い方について、教えてください。

高野さん「収納場所全体の湿気が気になるときは置き型タイプ、衣類などの収納物が気になる場合は、シートタイプなどがお勧めです。

湿気は下方向にたまりやすいので、置き型タイプの場合は、下の方に設置すると効果的です。シートタイプはさまざまな用途があるので、収納場所に応じてうまく使い分けましょう。衣装ケースなどに入れる場合は、一番上に置いてください。

防虫剤と同様、収納場所の大きさによって、使用する用途や個数が異なるので、十分に注意してください」

 大切な衣類を守るためにも、防虫剤を正しく使いましょう。

オトナンサー編集部

防虫剤の正しい使い方は?(エステー提供)