4月になり、新入社員の入社シーズンや新入生の入学シーズンを迎えました。期待と不安が入り交じる中で、新たな環境に慣れようと頑張っている人も多いのではないでしょうか。ところで、「春はうつ病になりやすい」とよくいわれますが、本当なのでしょうか。うつ病を防ぐためには、どのような対策が必要なのでしょうか。心理カウンセラーの芙和せらさんに聞きました。

「生活環境」「気候」の変化がストレスに

Q.「春はうつ病になりやすい」という話を聞きますが、本当なのでしょうか。

芙和さん「うつ病は複合的なストレスが原因で発症しますが、特に春はさまざまなストレスに直面する季節なので、うつ病になる人が増えます。春にうつ病になりやすいのは、下記のようなストレスをため込むことが原因だと考えられます」

【社会的な環境変化】
春は卒業、入学、就職、人事異動、転勤など、社会的な環境が大きく変わる時期です。希望の学校への入学などおめでたい出来事であっても、『変化』は人にとってストレスになります。特にきちょうめんで真面目な人ほど、頑張り過ぎる傾向にあるので要注意です。

【気温、湿度、気圧など気候の変動】
冬から春へと過ごしやすい気候に変わっていきますが、その振れ幅はとても大きいです。1日で10度以上の気温変化があることもあり、寒暖差疲労という言葉をよく耳にするようになりました。他にも、春は菜種梅雨といわれるように雨が多い季節でもあり、湿度が大幅に上がったり、低気圧が襲ってきたりします。体が大きな気候変動に適応しようとし、知らず知らずに疲労をため込むことになります。

Q.では、うつ病かどうかを見分ける基準について、教えてください。

芙和さん「次のような症状が続く場合、うつ病の可能性があります」

【心理的な症状】
・憂鬱(ゆううつ)な気分が続く。
・今まで楽しかったことが楽しめない。
・不安感が強くなる。
・物事を悪い方に考えてしまう。
・自責感が強くなる。
イライラ、怒りっぽさ、焦燥感が続く。
・「死にたい」と思うようになる。死のことばかりを考える。

【身体的な症状】
・食欲、性欲などがなくなる。
・「寝付けない」「途中で目が覚める」「眠り過ぎる」など、睡眠障害のような症状が出る。
・食べ過ぎる、お酒を飲み過ぎる。
・動悸(どうき)。
・頭痛や頭重感がある。
・肩こり、倦怠(けんたい)感がある。
・胃腸の不調が続く。

Q.うつ病に関する心理的な症状や身体的な症状が出ている場合、どうすればよいのでしょうか。

芙和さん「うつ病は『心の病気』といわれますが、身体的な症状が強く出て、心理的な症状が少ない人もいます。上記の項目に当てはまることが多く、疑わしいと思ったら、心療内科や精神科を受診しましょう。特に『死にたくなる』と思うようになった場合、すぐに受診してください。心療内科や精神科を受診することに強い抵抗を感じる場合、まずは内科などで身体症状を診察してもらうことから始めても構いません」

Q.春にうつ病になるのを防ぐために、どのような対策が必要なのでしょうか。

芙和さん「誰でも生活環境が変化すれば、慣れた環境にいるときのようにスムーズに適応することはできません。その際に『頑張らなければ』『もっとできるはず』と自分にプレッシャーをかけてしまうと、ストレスはより強くなります。春はさまざまなストレスにさらされやすい季節なので、頑張り過ぎないことが大切です。以下のような対策を心掛けましょう」

うつ病にならないための対策】
・休息を心掛ける。
・仕事も勉強も「70点でOK」と考える。
・「失敗は誰にとっても当たり前」だと認識する。
・バランスのよい食事を規則正しく取る。
・日光を浴びる。
・散歩やストレッチなど適度な運動を心掛ける。

Q.ちなみに、うつ病と「五月病」は違う病気なのでしょうか。

芙和さん「五月病は正式な医療用語ではなく、うつ病のような症状を指した言葉です。特に違いはありません。一般的に、新入社員や新入生が5月ごろに不安が強くなったり、無気力になったりしたときに五月病といわれることが多いです」

オトナンサー編集部

春はうつ病になりやすい?