2009年の結成から2021年まで、ユニットコンビ「たりないふたり」として数々の漫才を生み出した、オードリー若林正恭南海キャンディーズ山里亮太。コンビのブレイク当初は“じゃない方”で、“ねじれてひねくれた性格”で、“どこかたりない”と、共通点の多い2人の半生を基にしたドラマ「だが、情熱はある」が4月9日にスタート。初回ではそれぞれの学生時代が描かれ、鬱屈した毎日を送る中で“芸人”への情熱が生まれていく過程に胸アツになる視聴者が続出。また、若林を演じる高橋海人と山里を演じる森本慎太郎の、本人とのシンクロ率が話題となり、「だが、情熱はある」がTwitterトレンド1位を記録した。

【写真】ネガティブな事でも何でも「スゴいね!」と言う山里の母(ヒコロヒー)

■若林を演じる高橋と山里を演じる森本の、脅威の本人とのシンクロ率

このドラマは、若林と山里の半生を基にした青春サバイバルストーリー。“極度に人見知りな超ネガティブ男”(若林)と、“被害妄想と嫉妬に狂う男”(山里)、そんなたりない2人の友情物語でもないしサクセスストーリーでもないが、もがきながらも“情熱はある”人生を描いていく。(以下、ネタバレを含みます)

ドラマのスタートは、2021年に無観客で2時間の漫才を繰り広げた「たりないふたり」の解散ライブのシーンから。この公演は配信され、54000人超が視聴。後には全国の映画館でも公開された伝説のライブだ。「若ちゃんと最高の最後の時間過ごしてきますよ」と山里(森本慎太郎)が言えば、若林(高橋海人)も「オレ、山ちゃんと底の底見せ合いたいから」と応える。舞台袖で上手と下手に別れ、緊張を隠しながら山里に手を振り挑発する若林の立ち姿、手を振る角度…それは高橋ではなく若林そのものだ。そして、そんな若林をいなし、気合いを入れてメガネを押し上げる山里の中指の角度まで、森本は完全に憑依したかのようだった。

実際の会場で完全再現されたセットに登場し漫才が始まると、「若さん山ちゃんにしか見えない!」「ヤバい、もう泣けてきた」と視聴者は大興奮。彼らがすごいのは、この後展開される学生時代においても、ただのモノマネになっていない事だ。若林と山里を理解し、完全に自分の中に取り込んで演じている。2人の演技力の高さはもちろん、ここまで自分とは全く違う人物を消化するのには相当な努力があってこそだ。

■「面白い」山里と「面白くない」若林

そしてドラマは、彼らの学生時代へ。高3になった山里は、「何者かになりたい」という想いはあるものの、その方法がわからずにいた。が、片想いの女子の「面白い人が好き」との言葉に挑発され、また親友の「山ちゃん時々面白いから、芸人になったら?」と何気なく言った一言に背中を押され、その日からお笑いスキルを上げるために1人奮闘の日々が始まった。

一方、高2の若林は空虚な毎日を送っていた。前の席になった春日(戸塚純貴)の襟足の髪をコッソリはさみで切り、アメフト部で体をぶつけ合ってフラストレーションを発散させる日々…。そんな中、クラスで文化祭の実行委員を決める事になり、投票で「クラスで一番面白いヤツ」が選ばれる事になった。何となく気になる若林だったが、どうせ自分はムリ…。「若林さん、面白いと思いますよ」と言う春日に「絶対にオレに入れるなよ。オレが恥かくだけなんだからな」とヘッドロックをかけてけん制した。

そして、投票当日。若林に一票が。彼を面白いと思っている同級生からの票だった。クラス中が「はぁ?」となり、この票は無効に。「ちゃんと投票しろ」などの言葉が飛び交う中、彼に投票した生徒が「若林は、面白いんだよ!!」と、若林を否定した生徒に殴りかかり、大ゲンカが始まってしまった。それを複雑な表情で見ていた若林だったが、「オレは全然面白くないから!」と叫び、クラスのケンカは収まった。

■芸人への想いを強くした2人

山里の片想いは実を結ばなかったが、意中の彼女を笑わせ、「山里くん、面白いね」と言ってもらえた。ぼんやりとしていた芸人への夢が明確になった瞬間だった。そして、父親(光石研)に意を決して芸人になりたいと告げた。「面白くないオマエが?」と取り合わない父に「天下を取りたいんです。オレにとっての“何者”は芸人なんです。お笑い芸人になったらモテるんです!面白い事なら努力できるんです。オレなら何者かになって、モテる自分を少し好きになれそうなんです。お願いします!」と土下座して想いを吐き出す。それでも相手にしない父に必死で食い下がり「オレは自分の事、面白いと思ってるんです!!」と、全身の力を込めて叫ぶのだった。

一方、若林。オレを面白いと言って、人を殴るヤツが居た…自分自身が信じられない自分を、他人が信じてくれていた。「オレは何を見てたんだろう。カン違いしてもいいのかな…」。若林も芸人への扉の前に立とうとしていた。

Twitterでは「何でだろう。泣いちゃった」「アツすぎて泣けた」と胸を震わせたコメントが続出。今はまだお互いの存在も知らない2人の人生が、この先交わることになる。彼らを引き合わせたプロデューサーに「似てる」と言われた初対面の2人は、「似てるとしたら…きっと仲良くできない」とそれぞれ腹の中で思ったが、かけがえのない相方となっていく、その道のりは、胸アツの連続になりそうだ。

◆文=鳥居美保/構成=ザテレビジョン編集部

※高橋海人の高は正しくは「はしご高」

初対面の時、「仲良くなれない」とお互いに思う山里(森本慎太郎・左)と若林(高橋海人・右)/(C)日テレ