メキシコ当局は、紀元前にさかのぼるマヤ文明より古い、先古典期のメソアメリカで栄えた「オルメカ文明」時代の巨大な人頭の石像「地球の怪物」を、アメリカから取り戻したと発表した。
国立人類学歴史研究所(INAH)の発表によると、精巧な彫刻が施されたこの像の重さは1トン以上、高さ1.8メートル、幅1.5メートルだという。
地球の怪物が、いつ、どのようにしてアメリカに違法に持ち去られたのか、その経緯は不明のままだ。
メキシコのマルセロ・エブラルド外相は、「ニューヨークにいる我が国の領事ホルヘ・イスラスが、メキシコが探し求めていたオルメカの遺産が回収され、本来ならそこにあるべき故郷へ帰国しようとしていることを確認しました」とツイートした。
Me confirma nuestro Consul Jorge Islas desde Nueva York que la pieza Olmeca mas buscada por Mexico ha sido recuperada y esta a punto de retornar a su casa, de donde nunca debio ser sustraida. pic.twitter.com/WWQ4H0eOE7
— Marcelo Ebrard C. (@m_ebrard) March 31, 2023
オルメカ文明は、マヤやアステカ文明よりも古く、巨大な石の人頭像や直立の石板を遺したことで知られる。
国立人類学歴史研究所(INAH)によると、この人頭像は紀元前800~400年頃に作られたものだという。
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メソアメリカの年代学の形成期にさかのぼるモレロス渓谷のメソアメリカ遺跡「チャルカツィンゴ」の第9番目のモニュメントとして登録として登録されている浅浮彫りの人頭像は、オルメカ文明の図像によく登場する生き物「地球の怪物」を表していると考えられている。
大きく開けた口は、そこからあの世へつながっていることを象徴している。その口元には三つの帯状の模様が連続して描かれていて、洞窟への十字型の入口を意味しているという。
「地球の怪物」を現したオルメカの巨大人頭像 / image credit:INAH
アメリカに持ち去られた経緯は不明
いつ、どのようにしてこの人頭像がチャルカツィンゴから違法に持ち去られたのかはわかっていないが、1968年に考古学者のデヴィッド・グローブが、『American Antiquity』誌でこの件を公表したことが記録されていて、20世紀後半にはすでにアメリカにあったようだ。
ニューヨーク当局がこの人頭像を回収したが、どこで見つかったのかは報道されていない。
この発見は、自国から持ち去られた歴史遺産を救出するためのメキシコ政府の取り組みの一部だ。2018年以降、ほぼ1万点のアイテムが回収されているという。
オルメカ文明はメソアメリカで最初に発展した文明で、マヤやアステカなどの後の文明に多大な影響を与えた。
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しかし、その起源や滅亡の原因、信仰や社会構造などはまだ解明されていない。この石像が故郷へ帰還することで、オルメカ文明の研究がさらに進むことを期待したい。
References:Autoridades de Mexico repatriaran el Monumento 9 de Chalcatzingo / Gigantic 'Earth Monster' Finally Heads Home After Mysterious US Seizure / written by konohazuku / edited by / parumo
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