「性格の不一致」を理由に、離婚を検討している夫婦は少なくないと思います。生活を共にする夫婦にとって、性格や考え方などの一致は重要であり、不一致によって離婚を考えるのは自然な流れかもしれません。しかし実際のところ、法的に見て「性格の不一致」を理由に離婚することは可能なのでしょうか。佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。

ポイントは「話し合いが成立するか否か」

Q.法的観点からみて、「性格の不一致」を理由に離婚することはできるのですか。

佐藤さん「可能です。夫婦の話し合いにより、お互いが納得して離婚する場合には、どんな理由であっても離婚できるからです。実際、離婚理由として最も多いのは『性格の不一致』であるといわれています。

一般に、性格の不一致とは、生活の在り方、さまざまな物事に対する価値観などが異なることをいいます。例えば、お金の使い方について、何にどれだけのお金をかけたいかが異なったり、仕事や家庭、趣味などの優先順位が大きくずれていたり、あいさつや近所付き合いなどのマナーに関する姿勢が異なったり…など、さまざま考えられます。どれも、最初は小さなことでも、それらがきっかけでけんかが絶えなくなり、関係が悪化するケースは少なくありません」

Q.「性格の不一致」で離婚する場合、どのような流れとなることが多いのでしょうか。

佐藤さん「夫婦間の話し合いによって離婚が成立するケースと、話し合いができなかったり、まとまらなかったりしたケースとで、流れが次のように異なります」

【夫婦間の話し合いによって離婚に至るケース】

夫婦がお互いに性格の不一致を感じており、離婚したいと望んでいて、その条件についても争いがなければ、離婚届を役所に提出するだけで離婚は成立します。日本では、当事者同士の話し合いにより、離婚届を提出して離婚するケースが多くを占めています。なお、夫婦の間に未成年の子どもがいる場合には、離婚の合意をする際、親権者も決める必要があります。

【夫婦間の話し合いで離婚できないケース】

当事者同士では感情的になって話し合いもできないような場合や、当事者による話し合いでは結論が出せなかった場合には、家庭裁判所に離婚調停を申し立てることになります。調停では、夫婦双方が顔を合わせることなく、調停委員を介して話し合いを進めることができます。離婚調停が成立すれば、離婚条件などについて調書がまとめられ、離婚が成立します。

調停はあくまで夫婦の合意に基づき離婚するものなので、一方が譲らない場合には、調停での離婚はできません。調停が不成立となると、家庭裁判所に離婚訴訟を提起し、判決によって離婚を認めてもらうことになります。

なお、調停不成立後、家庭裁判所が審判で離婚を成立させることがあります。審判に対し、2週間以内に当事者から異議申し立てがなければ、離婚が成立しますが、異議が出れば、審判の効力はなくなってしまうため、実際には審判による離婚はあまり利用されていません。

裁判で離婚を認めてもらうためには、「法定離婚事由」が必要になります。法定離婚事由には、(1)不貞行為(2)悪意の遺棄(3)配偶者の生死が3年以上明らかでないこと(4)配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないこと(5)その他婚姻を継続し難い重大な事由があること―の5つがあり(民法770条1項)、いずれかが認められる必要があります。

性格の不一致は、(1)から(4)には当てはまらないため、(5)に該当するか否かが問題になります。「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」とは、婚姻中の一切の事情を考慮しても、婚姻関係が破綻しており、修復の見込みがないことをいいます。そのため、単に、「こちらをバカにしているような話し方が嫌い」とか「何度言っても服を片付けないところが許せない」といったことの積み重ねでけんかが絶えない状況があったとしても、それだけで直ちに「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」が認められるわけではありません。それに加え、例えば、別居期間が何年も続いていたり、夫婦としての会話や関係が一切なかったりなど、さまざまな状況を踏まえて、総合的に婚姻関係の破綻が認められるかどうか判断されます。

夫婦の数だけ、性格の不一致の内容も程度もさまざまですし、夫婦関係の破綻状況は異なるため、裁判による離婚が認められるか否かはケースバイケースです。

なお、離婚については、原則として、調停を経ずに、いきなり訴訟を起こすことはできません。これは、家庭に関する紛争は、いきなり公開法廷で争わせることがふさわしくなく、できるだけ当事者間の話し合いにより自主的に解決すべきと考えられているからです。

Q.その他、「性格の不一致」による離婚を検討している場合に知っておくとよいこととは。

佐藤さん「離婚の話し合いをするときは、夫婦の財産をどう分けるか、慰謝料の支払いはあるのか、子どもがいる場合は、どのくらいの頻度で、どのような形で、監護していない親と交流させるのか…など、具体的に決めておくとよいでしょう。決めた内容は書面にまとめておくと、離婚後のトラブルを防ぐことにもつながります。

また、相手が離婚に応じない場合、最終的には裁判で争うことも考えられます。性格の不一致だけでは裁判で離婚が認められにくいので、夫婦間にあるさまざまな問題(不倫の疑いがある、暴力を振るわれることがある…など)の証拠を残したり、別居を開始・継続したりするなど、具体的な行動を始めることが大切です。

夫婦間の話し合いや調停、裁判について不安がある場合は、一度、弁護士に相談するとよいでしょう」

オトナンサー編集部

「性格の不一致」を理由に離婚は可能?