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 中国の研究チームは、圧倒的な生命力で知られる最強生物として知られる「クマムシ」の遺伝子を人間の細胞に組み込むことに成功したそうだ。

 こうして誕生したクマムシ遺伝子配合ヒト細胞は、まるでクマムシのように致死レベルの放射線でも死なない耐久性を獲得したという。

 リアル・テラフォーマーズなこの技術を利用することで、核兵器死の灰にも耐えられるスーパーマンのような兵士が誕生する可能性があるとかもしれない。

【画像】 最強生物として知られる「クマムシ」の驚くべき能力

 緩歩動物に属する「クマムシ」は、顕微鏡でしか見えないような小さな体でありながら、あらゆる動物を圧倒するとんでもない生命力で知られている。

 地球最強との評判は伊達ではなく、凍える寒さの中では老化を停止し史上初の星間旅行のパイロット候補に選出され、人間の致死量の1000倍もの放射線を浴びても死ぬことはない。

 こうしたクマムシの生命力の秘密の1つは、放射線などから細胞を守ってくれる保護タンパク質だ。

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1対の眼を持つクマムシの1種 / image credit:Frank Fox / WIKI commons(CC BY-SA 3.0)

[もっと知りたい!→]地球最強生物クマムシの新種、紫外線を青い蛍光に変え無害化する能力を持っていた(インド研究)

クマムシの遺伝子を人間の細胞に移植、放射線に耐えられるように

 そこで中国人民解放軍軍事科学院の研究チームは、遺伝子編集ツールCRISPR-Cas9」を利用して、この保護タンパク質を作り出すクマムシの遺伝子を、人間の細胞に移植してみることにした。

 なんとその結果、ヒト胚細胞のほぼ9割が、致死レベルのX線を浴びても死ななくなってしまったのである。

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クマムシの遺伝子を移植することによる有害な変異もなし

 クマムシ遺伝子が移植されたヒト胚幹細胞は、人間の胚(人間の卵子と精子が受精して分裂を始めてから、まだ間もないもの)から採取されたものだ。

 一般には、クマムシのような私たちとは大きく違う生物の遺伝子をヒト細胞に移植すれば、有害な変異が起きたり、死んでしまったりすると考えられる。

 ところが、クマムシ特有の保護タンパク質遺伝子は、研究チームも驚くほど人間の細胞によく馴染んだのだ。

 少なくとも今のところ、ヒト胚幹細胞の染色体に変異は見られず、ある程度までなら増殖もできるという。

・合わせて読みたい→クマムシの不死身伝説に新たなる1ページ「銃で射出されても死なない」

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クマムシ遺伝子から放射線に耐性を持つの血液細胞を作る予定

 今回の研究チームは将来的に、クマムシの遺伝子を組み込んだヒト胚性幹細胞をベースにして、血液を作る細胞を作り上げようとしている。

 原子力発電所メルトダウン核兵器の使用などで拡散する放射性物質は、その犠牲になった周囲の人たちだけでなく、救助に駆けつける人たちにとっても大問題だ。

 だが、クマムシ遺伝子細胞を骨髄に移植すれば、放射線に対する抵抗力を持つ血液で、人間の体を守れると研究者らは考えている。

 さらにクマムシ遺伝子は酸化ストレスから細胞を守ってくれるため、がん・老化・糖尿病・炎症・パーキンソン病など、さまざまな病気を予防できるかもしれないという。

 本当にそんなにうまくいくかどうかはいかないが、もし放射線に耐性を持つことができれば、宇宙移住への夢も実現に近づきそうだ。

References:Scientists Put Tardigrade DNA Into Human Stem Cells: Here's Why / Chinese team behind extreme animal gene experiment says it may lead to super soldiers who survive nuclear fallout | South China Morning Post / written by hiroching / edited by / parumo

 
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クマムシの遺伝子を人間の細胞に組み込むことに成功。放射線に耐性を持つスーパーソルジャーが誕生する可能性