2023年4月14日に、PS4/Switch/Steam向けに「ロックマンエグゼ アドバンスドコレクション」(以下、アドバンスドコレクション)が発売された。本作は、かつてゲームボーイアドバンスで発売されていた「ロックマンエグゼ」(以下、エグゼ)シリーズの作品をひとつに収めたタイトル。インターネットが急速に発達した世界を舞台に、小学生ネットバトラーの光熱斗が、ネットナビのロックマンといっしょにさまざまな事件を解決していくというものだ。コロコロコミックコミカライズされたり、テレビアニメ版も放映されたりと、ゲーム以外の媒体でも展開されていた人気シリーズである。

 

アドバンスドコレクション」では、2001年に発売された第1作「ロックマンエグゼ」から、2005年登場の「ロックマンエグゼ6 電脳獣グレイガ/ファルザー」までの全10作を楽しめる。

 

今回は、そんな本作のレビューをお届け。「ロックマンエグゼ6 電脳獣グレイガ」をクリアしたうえで、シリーズの基本的なバトルシステムを始め、「アドバンスドコレクション」ならではの新要素などを解説していく。

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アクション×シューティング×カードが合わさったバトルシステム



全10作ある「エグゼ」シリーズだが、基本的なバトルシステムは共通している。まず敵とのバトルになると、3×3のエリアが2つ用意された専用のフィールドへ移行、その後、相手側にいるウイルスやナビのHPをゼロにすればこちらの勝利となる。

 


バトル時以外はエリア内を自由に行動できる

 

 

自分のエリア内は自由に動けるので、相手の攻撃に当たらないよう移動しながら、ロックバスターやチャージショットといった攻撃を敵に当てていく。攻撃を避けたり、逆に当てたりするタイミングを決めるのはプレイヤーなので、アクションやシューティング的なバトルが楽しめる。

 

 

とはいえ、これは基礎中の基礎。「エグゼ」シリーズには「チップ」という独自の要素がある。バトル中は10秒たつごとに、「カスタム画面」を開いて事前に選んでおいたフォルダからチップを選べるのだ。


チップとは、ナビに対してプレイヤーが送るデータのようなもの。目の前の1マスを斬る「ソード」や、ナビのHPを回復する「リカバリー」、相手エリアの縦1列を自分のエリアに変える「エリアスチール」など、チップといっても攻撃から回復、支援までさまざまなタイプがある。

 

チップは「スタンダード」、「メガ」、「ギガ」という3つのクラス(メガクラスとギガクラスは「3」以降に実装)に分けられている。作品ごとのルールにもよるが、スタンダードチップを中心にしつつ、比較的性能の高いチップがそろうメガチップやギガチップをいくつか加えていくのが基本となる。

 

 

チップにはそれぞれAからZまでのコードが割り振られていて、同じコードのチップであれば最大5枚まで選択可能。なお、コードは違っていてもまったく同じ種類のチップ同士であれば複数枚選べるほか、どのコードとも組み合わせられる「アスタリスク」というタイプもある。攻撃や防御、回復など、チップにもさまざまな種類があり、一度に多くのチップを選べれば、つぎのカスタム画面に入るまでに取れる行動もそれだけ増えていく。

 

 

コードや種類自体をそろえるのは、チップを選べる数を増やすという点では望ましい。だがそうすると、今度はそちらに引っ張られてチップ自体の性能が度外視されてしまう。チップの回転率を取るのか、それとも単体としての性能を重視するのか。どちらも間違っていないだけに、バランス加減が悩ましいところ。

 

さらに炎属性の敵に対し水属性の攻撃は威力が2倍になるといった、属性ごとの相性もある。シリーズ作品によっては、「スタイル」や「ソウルユニゾン」、「クロスシステム」といった、ロックマンの性能自体を変化させる要素も実装されているので、それらも加えるとチップ選びがさらに楽しくなる。

 

 

自分のエリア内を動きながらバスターチップを使うというのはシンプルだが、そこにチップ選びのルールや属性の相性、ロックマン自体が持つスタイルやソウルユニゾンといった要素が組み合わさることで、「エグゼ」シリーズの戦い方のバリエーションは途方もなく多い。わかりやすくて奥深い、それが「エグゼ」のバトルだ。

バスターMAX機能でバトルもサクサク

 

 

アドバンスドコレクション」には本作ならではの機能が多く盛り込まれているが、なかでも印象的なのは「バスターMAX」モード。オンにすると、ロックマンバスターの威力が1発あたり100になる。バスターは連射が効くので、2回目のカスタム画面を開けるようになるまでの時間があれば、それまでにほぼすべての敵を撃破できる。

 

ゲーム自体のテンポが劇的に速くなるので、本作で初めて「エグゼ」シリーズを遊ぶからバトルに不安がある人や、ストーリーだけを振り返りたい、早く装備を調えて対戦をしたいという人向けのシステムだろう。

 

 

バスターMAXの威力は、プログラムを読み込ませてロックマンを強化できる「ナビカスタマイザー」の影響を受ける。アタック+1などを有効にすれば、その都度バスターの威力は100ずつ上昇。つまりバスターMAXのダメージ量は100×アタックLvとなっており、最大で1発500にまで強化できる。これならHPが2000以上あるような難敵も余裕だろう。

 

 

バトルを一瞬で終わらせられるため、バトル後に得られるチップやお金集めは快適だ。複数枚のチップを入れて新しいチップを手に入れる「チップレーダー」も、オリジナル版よりサクサク回せる。集めたチップが記録される「ライブラリ」を埋めるのが「エグゼ」のやり込み要素のひとつだが、今回はバスターMAXに加えてネット通信によるライブラリの補完もできる。遊ぶ作品にもよるだろうが、各クラスのコンプリートにかかる時間は短縮できそうだ。

 

 

ただし、バスターMAXが有効になっている間は、SPナビのデリートタイムは更新されない。SPナビとは、特定のエリア内に登場するナビの最強バージョンみたいなもので、SPタイプのナビから取れるチップの攻撃力は、対象を倒すまでにかかった時間によって変動する。つまり、10秒以下で倒せばそのSPナビのチップは攻撃力が最大になるという仕様だ。

 

バスターMAXとSPナビのデリートタイムの相性は、悪い意味でかみ合っている。今回筆者がクリアした「ロックマンエグゼ6 電脳獣グレイガ」でいうと、HPが1900もあるヒートマンのSPバージョンを、バスターだけで4秒以内に撃破できた。

 

これにはバスターを超高速で連射できる「獣化」というシステムを組み合わせていたのもあるが、それにしても早い。これなら誰でもSPナビを10秒以内に倒し、対象のチップの威力を最大まで上げられてしまうので、達成感もないし、通信を使ってデリートタイムを更新し合う「レコードコンペア」も意味がない。そのため、SPナビの撃破時間にバスターMAXを加味しない仕様はいい采配だと思った。

 

 

読み合いやカットインが熱い対戦モード。名実ともにネットバトルが可能に

 

 

今回のレビューにあたって何回か対戦モードを遊んだが、ストーリーを進めているときとは違い、チップの使い方に違った厚みを感じた。

 

 

規則的に動くCPUと戦うなら、こちらの動きもある程度はパターンにできるが、生身の人間なら読み合いが生まれるのでわけが違う。

たとえば、中央を除いた周囲8マスのうち4マスを攻撃するサークルガンというチップを相手が多用しているなら、こちらとしては当然攻撃を避けて真ん中に居座ろうと思う。だが対戦相手はそれを見越して、攻撃範囲は狭いが威力の高いチップを忍ばせるかもしれない。では逆を突いて、一定時間透明になれるインビジブルや、ダメージを一定値まで肩代わりしてくれるバリア系のチップを使いながらエリア内を動き回るといった対策もできるだろう。

 

 

ロックマンエグゼ4 トーナメントブルームーン/レッドサン」以降のみだが、「カットイン」要素も特徴と言える。カットインとは、時間が止まる「暗転」が備わったチップを相手が使った際、効果が発動する前にこちらが新たに暗転系のチップを使って割り込むという仕様。相手が強力なナビチップなどを使った際、こちらはインビジブルを割り込ませることで、その後の攻撃を回避するような戦法も可能になる。

 

そのときに互いに選んだチップの相性がバトルの趨勢を決めていくため、単に強いチップを連打していれば勝てるわけではない。筆者の場合でいうと、後述の機能で手に入れたグレイガのチップを無効化されたこともあったし、逆に相手がくり出してきたファルザーのチップを無傷でやり過ごしたケースもあった。

 

 

1回の試合にかかる時間は長くても3~5分程度なのでテンポもよく、カスタム画面で出てくるチップがランダム、対戦相手との読み合い、さきほど説明したカットインなどのシステムのおかげで、対戦モードはなかなか中毒性がある。なによりうれしいのは、名実ともに「ネット」バトルができることだ。

 

作中でこそネットバトルが盛んだが、過去に発売された作品では、実際の対戦で介しているのはネット通信ではなく、ゲームボーイアドバンス同士をつなぐ通信ケーブルだった。そういう意味でも、インターネットの普及によってリアルでもネットバトルができるようになったのは感慨深い。今では子供から老人までさまざまな年代がゲームを遊んでいるし、「エグゼ」内で人々がネットバトルに興じていたような光景が、今後現実でも見られるかもしれない。

かつて配信された改造カードや限定チップも入手可能

 

 

アドバンスドコレクション」では、かつて配信されていた限定チップや改造カードがすべてそろっている。「ロックマンエグゼ6 電脳獣グレイガ」で言えば、グレイガやダブルビーストといったチップや、やり込み要素である「依頼」の追加分が利用できる。

 

いずれも当時のワールドホビーフェアへの参加、特定の書籍の購入などでしか手に入らなかったものばかりであり、取り逃したプレイヤーたちには夢のような話だ。「エグゼ」

を遊んでいたときは小学生だった筆者からすると、コロコロコミックなどで見たあのチップが手元にあるというだけでうれしい。

 

 

限定チップや改造カードを利用するには、まずメニュー画面の「ロックマン」を選び、その後Yボタンを押す。すると各種チップ・カードを選べる専用の画面に入るので、そこで自由に設定できる。その気になれば物語序盤からグレイガやファルザーといったギガチップが使えるので、バスターMAX機能は使いたくないがストーリーはスムーズに進めたいという人にはおすすめだ。

 

なお、改造カードは設定された容量以内に納めなければ使えないが、空きの関係で削除した分は後でいつでも再取得が可能。対戦モードでは改造カードの有無も設定できるので、対人戦に向けた改造カードの組み合わせを探していくのも面白そうだ。

 

 

かつてゲームボーイアドバンスで発売されていた当時の作品をほとんどそのまま移植しているため、テンポが今と比べて遅いところはある。とはいえ、バスターの威力を100倍以上にできるバスターMAX機能もあり、現代に向けた遊びやすさのアップデートはしっかりしている。

 

ゲーム自体は古いが、インターネットが普及したおかげで当時よりもネットバトルがしやすくなったという点では、「エグゼ」はむしろ今こそが本領を発揮できるタイミングだろう。「エグゼ」シリーズをリアルタイムで遊んでいたファンたちは当時を懐かしみ、当時を知らない子供たちは一連の作品を純粋に楽しむ、「アドバンスドコレクション」は、そんなお得なタイトルと言える。

 

(文・夏無内好)

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【本日発売】「ロックマンエグゼ アドバンスドコレクション」をレビュー!懐かしくも新しくなった決定版