忙しい朝の時間、朝食は食べたほうが良いと頭で分かっていても、実際にはなかなか食べられないという人は少なくないでしょう。そのようななか、東京西徳洲会病院小児医療センターの秋谷進医師は「朝食を摂ることで、栄養補給以外にもさまざまなメリットがある」といいます。具体的にはどんな良いことがあるのか、また反対に、食べないことで身体にどんな悪影響があるのか、みていきましょう。

改めて知っておくべき「朝食」の驚くべき効果

みなさんのお子さんは、きちんと「朝食」をとっていますか?

● なかなか忙しくて朝食がとれていない

● 家庭環境の問題で朝食をきちんと食べられない

● 朝食をとる習慣がない

など、ご家庭によって朝食の位置づけはさまざまでしょう。

しかし、朝食はみなさんの想像以上にさまざまなメリットがあるのです。しかも、朝食は大切な「ポイント」を守ることで、もっと有意義なものになります。いったいそれは何でしょうか?

早速、朝食と健康の関係についてみていきましょう。

朝食は学力・学習習慣や体力と関係している

多くの方は「朝食は単なる3食のなかの1食」と考えていますが、そうではありません。朝食は健康習慣を作る土台といえます。

たとえば、農林水産省の発表した研究データによると、朝食と学力や体力の関係について以下のことがわかっています。

● 中学2・3年生で朝食をほとんど毎日食べる子どもは、朝食を週に2〜3回食べる、あるいは朝食をほとんど食べない子どもと比べて、通信簿の平均点が高い。

● 男女ともに、毎日朝食を食べる朝食摂取群で、標準BMIの者の割合が多かった。

● 朝食をよく食べる者のほうが睡眠問題の出現割合が少なかった。

● 小学生〜成人を対象とした研究では、体力測定の結果がよい。

このことから、朝食は健康習慣の根幹であることがわかります。

朝食が「栄養補給」で終わらない理由

では、なぜ朝食が学力や体力に大きく影響するのでしょう。

結論から言うと、「朝食をとるかどうかは家庭状況そのものを表している」から。たとえばその背景として、以下のことがわかっています。

● 朝食を毎日は食べない子どもは、朝食を毎日食べる子どもと比べて、イライラ感が「いつもある」「よくある」「時々ある」と回答した者の割合が高い。(小学校2年生の男子の場合、約60%から80%に上昇)

● いずれの学年でも、朝食を欠食する子どもほど起床時刻や就寝時刻が遅く、睡眠時間が短い。

● 朝食を毎日食べる者の方が時々食べない者よりもストレス指標が有意に低い。

● 朝食欠食回数が少ない者の方が、健康生活習慣行動の該当数が多い者が多い。

つまり「朝食は睡眠や他の健康習慣・家庭環境などに密接に関わっている」ということですね。朝食をきちんと摂れる家庭は、他の生活面でも優れている家庭であることが多いというわけです。

こうした朝食と心理社会学的な行動の関係は、日本だけでなく海外の論文でも報告されています。

海外でも認識されている「朝食」の重要性

たとえば、スペインに住む4歳から14歳の若者を対象とした研究では、朝食を家に食べるのと比較して

● 朝食を抜くと3.29倍

● 朝食を外で食べると2.06倍

心理社会学的に問題行動を起こしやすいことが言われています。

このように文化的な背景が異なっていても、朝食は非常に大切な健康習慣の1つなのです。

朝食の効果をより上昇させる大切な「ポイント」は?

実は、朝食の効果をよりアップさせる大切なポイントがあります。それは「家族と一緒に」朝食をとることです。

実際「家族と一緒に朝食をとる」ことの有用性について、17の研究をまとめた182,836人の子どもと青年(年齢層:2.8〜17.3歳)を対象とした論文があります。

その報告によると、週3回以上家族で食事をする子どもは、週3回未満の子どもを比較して

● 太り過ぎになる確率が12%減少

● 不健康な食べ物を食べる頻度が20%減少

● 摂食障害に関与する可能性が35%減少

といった効果が実証されました。

もちろん、朝食自体も1日のスタートを決めるのに大切ですが、「どこで」「誰と」食べるかも同じくらい重要であると言えますね。

家族との朝食は健康への第一歩

このように、朝食は単なる「栄養補給」ではありません。

朝食は学力・体力・心理社会面での向上や他の健康習慣の獲得に至るまで、さまざまな健康パワーが秘められています。

さらに、家のなかで家族と一緒に食べることで、より朝食の健康効果を高めることができます。

日々をより健康にすごしたいと思われるなら、まずは朝食から見直してみましょう。きっとよりよい毎日を過ごすことができるようになりますよ。

秋谷 進

東京西徳洲会病院小児医療センター

小児科医

(※写真はイメージです/PIXTA)