木に落雷した現場で「未知のリン鉱石」が発見されたそうだ。ミステリアスなことに、その物質は「宇宙の鉱石と地球のそれの中間にある存在」であるそうだ。
新たに発見されたリン鉱石に似たものならば、隕石や宇宙で発見されることがある。だが、それに似たものが地球上で自然に形成されたケースは知られていないし、そもそも今回のリン鉱石とまったく同じものは過去に例がない。
それゆえに新しいグループに分類される可能性もあるという。
『Communications Earth & Environment』(2023年3月14日付)に掲載された研究では、「宇宙鉱物から地球鉱物への過渡的」な物質を作り出した化学反応について検証している。
2012年、米フロリダ州ニューポートリシーで雷が木を直撃した時、岩石と土が融合したような物体ができた。土地の所有者はそれを科学者に買い取ってもらった。
木に雷が落ちると、周囲の岩・土などに電流が流れ、それに沿って石英ガラスが形成される。これは「フルグライト(閃電岩)」と呼ばれるもので、ガラス質の管状または錐状の物質だ。その特徴から「雷の化石」ともいわれている。
この「雷の化石」を購入した南フロリダ大学のマシュー・パセック教授によると、特に湿ったところでは、鉄が蓄積して木の根っこをおおうのだという。
そこに落雷があると、根をおおう鉄と根に含まれる炭素が燃え、その結果フルグライトができるのだ。
[もっと知りたい!→]落雷による傷跡。人体に刻まれた稲妻のような樹状の図形「リヒテンベルク図形」(※閲覧微注意)
パセック教授らはこのフルグライトを調べたところ、その一部に見たこともないカラフルな結晶構造を持つ物質を発見した。
それは地球上では未知の鉱物であり、宇宙鉱物と地球鉱物の中間にあるというリン鉱物だ。
この鉱物についてとりわけ興味深いのは、これを人工的に作り出そうとしても、うまくいかなかったことだ。
未知のリン鉱物が発見された雷の化石「フルグライト」 / image credit:Matthew Pasek
このことから推測されるのは、このリン鉱物がおそらくかなり限定された条件の下で、さっと形成されただろうということだ。時間をかけて熱しても、隕石に含まれるような鉱物になってしまう。
未知のリン鉱物が発見された雷の化石「フルグライト」 / image credit:Matthew Pasek
生命の誕生に関係している可能性も
研究チームのフェン・ティアン氏によると、初期の地球では、雷によるリン酸塩の還元(物質が電子を受け取る化学反応のこと)がよく起きていたのだそうだ。
同氏は、こうした研究からほかの還元鉱物の存在を明らかにできる可能性があるとも説明する。それは地球で起きた生命誕生という重要なイベントにとって大切なことだと考えられるそうだ。
パセック教授らは現在、新たに発見された鉱物が、正式に新種の鉱物として認定できるかどうか分析を進めているところであるそうだ。
References:USF geoscientist discovers new phosphorus material after New Port Richey lightning strike / Lightning strike creates new phosphorus material never seen on Earth / written by hiroching / edited by / parumo
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