本連載では、監査法人東海会計社の代表社員である小島浩司氏と、税理士法人中央総研資産税部所属の税理士である福嶋久美子氏が、共著である『税金入門 2022年度版』から、最新の税金に関する知識について、わかりやすく解説します。前回は税金を分類し、様々な種類や見方があることを確認しました。今回は、実際に税金を納めた後、誰が計算や事務手続きを行うのか、具体的に見ていきましょう。
税金はだれが計算するのか
1.申告納税と賦課課税とがある
税金をだれが計算し、決めるのかという観点からみると、申告納税制度と賦課課税制度とに大別されます。
申告納税とは、税金を納める義務がある者(「納税義務者」という)が自分で課税対象金額や税金を計算し、その金額を申告期限までに申告し納めることをいいます。
所得税や法人税、地方法人税、地方法人特別税、あるいは相続税、消費税などほとんどの国税は申告納税制度をとっています。また、地方税のなかでも法人が納付する都道府県民税や市町村民税、事業税なども申告納税です。
この申告納税制度が、適正かつ円滑に運用されるためには、納税義務者が自分で正確な記帳を行い、正確に所得や税金を計算し申告することが基本的な前提です。
しかし、申告納税すべき者が申告をしなかった場合には、税務当局が決める(「決定」という)ことになります。
2.賦課課税は税務当局サイドで計算する
税務署や地方公共団体の税務課などが、課税対象となる金額や税金を決定し、その金額を納税義務者に通知することによって課税することを賦課課税といいます。
納税義務者に通知する書類を決定通知書または納税通知書といい、この通知に基づいて税金を納めることになります。
現在、国税のうちこの制度が採用されているのは、加算税などが課される場合など例外的なケースですが、地方税では個人の都道府県民税および市町村民税、個人事業税、固定資産税、不動産取得税など多くの税目でこの賦課課税制度をとっています。
なお、上記以外にも、登録免許税や印紙税などのように、申告をする、納税通知書がくるということなしに、法律の定めに従って納税する必要がある税金もあります。
3.納税義務の成立と納税義務者
申告納税方式の主な税金の納税義務者・課税対象・計算期間は[図表2]のとおりです。
税金の事務はどこで行っているのか
1.国税は税務署で取り扱う
税金の事務を行う役所は、国税と都道府県税、市町村税で異なります。
国税に関する税金の事務を扱う役所の頂点に国税庁(財務省の外局)があります。国税庁は、税務行政を行うための訓令や通達などの立案、国税局や税務署の指導・監督を行います。また、税務職員に必要な職務上の教育訓練を行う税務大学校や、納税者の権利救済機関である国税不服審判所は国税庁に置かれています。
この国税庁の下に、全国で11の国税局と沖縄国税事務所があります。国税局は、税務署の指導監督を行うとともに、大口の案件の調査や徴収事務を担当します。
この国税局の下に全国で524の税務署があり、それぞれの管轄区域内の納税者の税金に関する調査や徴収事務を行っています。
なお、関税やとん税、輸入品に対する消費税の徴収事務は、各港にある税関で行っています。
2.地方税の窓口は地方公共団体である
地方税を統轄するのは、総務省の自治税務局です。ここでは地方税制の企画・立案・運営などの指導を行っています。
しかし、地方税の実際の窓口となるのは、地方公共団体です。そのため、都道府県では税務課等が設けられ、条例や規則などの立案・運営指導などを行います。そして、第一線の窓口として税務署の所在単位ごとに都道府県税事務所が置かれ、都道府県税の事務を取り扱っています。
また、市町村では市役所・区役所・町村役場に税務担当の税務課が設けられ、市町村税の事務を行っています。なお、国税庁・国税局・税務署の職員数は現在約56,000人であるのに対し、地方税に従事する都道府県・市町村の職員数は約76,000人です。
3.申告書の提出先はどこ?
税金の種類や課税対象、計算期間は前述しましたが、計算した税金を最終的にどこに申告・納付するのでしょうか。申告納税方式の主な税金の納税申告書の原則的な手続き先は、次のとおりです。
(1) 所得税……納税者である個人の住所地の所轄税務署長
(2) 相続税……被相続人の死亡時の住所地の所轄税務署長
(3)贈与税……贈与により財産を取得した者の住所地の所轄税務署長
(4) 法人税……法人の本店または主たる事務所の所在地の所轄税務署長
小島 浩司
監査法人東海会計社 代表社員
福嶋 久美子
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