日本企業の一般的な雇用形態である「総合職」と「一般職」について、株式会社Legaseedの近藤悦康代表は「限界を迎えつつある」と警鐘を鳴らします。いったいなにがいけないのか、日本企業が「従来の採用スタイル」から脱却しなければならない理由をみていきましょう。
日本の採用も「世界標準の採用方法」を真似る時代
この先の日本の採用に訪れる未来の姿に言及したいと思います。
数年後には日本の採用は、海外のスタイルを見習っていくようになるでしょう。それはデジタルツールの活用や採用プロセスのオンライン化、採用の概念自体の変化、採用方法の変化など、多岐にわたります。
そんな中で日本の中小企業は、自社だけでなく世界に影響を与えるくらいの意思が必要になってくるでしょう。その未来に、現時点から備えてもらいたいと考えています。
世界の時価総額ランキングで30位にも入らない日本企業
世界の時価総額ランキングを見ると、第1位はアップル社(アメリカ)、第2位がマイクロソフト社(同)、3位がサウジアラムコ社(サウジアラビア)と海外企業がずらりと並びます。
その後もアメリカ、中国、台湾、韓国、フランス、スイス、オランダの企業が続き、日本企業がようやく登場するのは35位のトヨタ自動車で、50位以内に他の日本企業は存在していません(2021年7月末現在)。
今から30年前の1992年末の時価総額ランキングでは、日本企業もNTT(4位)や三菱銀行(9位)などが、トップ10以内にランクインしていました。ちなみに当時、トヨタ自動車は13位にランクインしていました。
25年以上のデフレ経済が続き、GDPの横ばいが続いている現在の日本は、いつの間にか時価総額ランキングでも世界から取り残される存在になってしまっています。
本記事は経済を語るものではありませんのでこれ以上の言及は避けますが、この事態を「採用」の側面から見ると、私はこれからの日本でも、アメリカや中国のモデルを参考にする世界になっていくと予測しています。
なぜなら、世の中は「うまくいっているもの」をモデルにするものだからです。採用の世界でも、時価総額ランキングの上位にランクインする企業の採用方法をモデルにしていく流れになっていくわけです。
そのときにキーワードとなるのが「長期インターンシップ」と「ジョブ型採用」です。
海外企業の採用方法を日本企業でモデルにするには?
海外企業の採用方法の常識1:長期インターンシップ
例えば、アメリカでは長期インターンシップで実績を出せないと就職ができません。履歴書と面接だけでは人材を見極められないことがすでに周知の事実となっていて、実際に仕事をさせてみて、さらに実績を出せた人だけを採用する世界なのです。
学生にインターンシップを提供し、その結果に注目して内定を出すかどうかを判断する採用方法の流れはさらに加速していくでしょう。
企業も学生もインターンシップには意欲的です。今後はそれがさらに洗練され、実績という新しい指標によって採用・不採用を決定していく段階に入っていきます。
学生の側に立っても、インターンシップを行うことが当たり前となり、「あの企業は良かった」「この企業、長期インターンシップをやっていないけど大丈夫?」など、学生の間で共有・拡散される評価や情報が激増していくでしょう。
海外企業の採用方法の常識2:ジョブ型採用
また、ジョブ型採用に関しては、すでに日本の大手企業でも取り入れが始まっています。これまで「総合職」や「一般職」として採用し、さまざまな部署をひと通り経験させてから育成するスタイルでした。
それが、AIやロボットの発達で単純作業を人間にやらせる必要がなくなり、逆に人間でないとできない上流工程の仕事を任せるようになることで、「この人材をどのポジションにつけるか」をあらかじめ想定した採用スタイルが始まっています。
このままいくと、そのうち総合職や一般職という言葉は死語になる可能性がある、と私は考えています。
近藤 悦康
株式会社Legaseed
代表取締役CEO
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