もはや春の風物詩の1つとなっている「ヤマザキ春のパンまつり」。毎年2月から4月にかけて山崎製パン株式会社が実施するキャンペーンで、対象商品についている点数シールを既定の点数分集めると“必ずお皿がもらえる”というイベントだ。

【写真】1989年には「ワンディッシュ皿」と呼ばれる歴代で最も大きいお皿が登場

キャンペーンでもらえるお皿だが、毎年白色で、過去にほかの色が登場したことはない。では、なぜ決まって“白いお皿”を配るようになったのだろうか?この白いお皿にまつわる謎について、山崎製パン株式会社 マーケティング担当の山口和寿さんに話を聞いた。

■着想は“フランスの朝食”から!白色を採用する理由は?

ヤマザキ春のパンまつり」がスタートしたのは1981年で、「日頃から山崎製パンをご愛顧いただいている方々に感謝を伝えたい」という思いをきっかけに始まった。2023年4月現在まで配布したお皿の総数は5億5000万枚を超え、当初は食パンのみが対象商品だったが、今では500種類以上の商品が対象となっている。

ちなみに、「なぜ春なのか」という点については、“日本人のパン消費量が最も多い季節が春だから”なんだとか。意外かもしれないが、暖かくなり食欲が出てくる季節であることや、新生活が始まって食生活が変わり、パンの消費量が増えることなどが要因だ。

「プレゼントの内容を決める際は、パンの持つ“朝食”のイメージから、フランスの食文化を参考にしました。当時、フランスの食文化では朝食に白いお皿を使うのが主流だったので、それにならい、白いお皿をプレゼントすることにしました」

プレゼントされるお皿は、フランスに拠点を置き、世界最大のガラス製品を製造するデュラン社(現アルクフランス社)のものを採用。物理強化ガラス製となっているので頑丈で割れにくく、使い勝手もいいそうだ。白色の理由については、「ほかの食器を邪魔せず、テーブルに溶け込んでくれる色を選びました」と話す。

そうした数々の使いやすさが消費者に刺さり、キャンペーン開始当初からお皿について「清潔感がある」「スマートでいい」といった反応が寄せられ、継続して「ヤマザキ春のパンまつり」の実施に至った。

■同じ白でも全然違う!毎年デザインを変えるワケ

プレゼントの白いお皿には、華やかなフリルデザインのものや、シンプルなラウンド型、八角形のものなど、さまざまなデザインが存在する。ただし、変えているのはデザインのみで、白色というのは変わらない。

「毎年、その年の食生活の傾向や食卓を想定して、何十種類も出した案のなかから1つを決めていきます。その際、昨年と同じようなものになっていないか、昨年のものと並べても違和感がないかなども考えます。使い勝手が損なわれないよう、かつ毎年変化する流行に合わせられるように、議論を重ねて決めています」

ガラスのお皿は使い捨てではないからこそ、このキャンペーンのお皿も長い期間食卓に上がるものとして、並々ならぬこだわりが結集していると言える。すべては「今年はどんなお皿が出るのだろう?」と、楽しみにしてくれている人の声に応えたいという思いからだ。

また、パン皿に限らず付け合わせのサラダのためのボウルや小鉢、プレートなど、“朝食”から連想されるさまざまな用途のお皿をプレゼントし、ファンの心を掴んで離すことなく今日まで愛され続けるキャンペーンとなっている。

知ってた?点数シールを早く集めるコツ

パッケージに「ヤマザキ」と書かれたパンは、スーパーやコンビニ、ドラッグストアなどで見かけることが多く、ほとんどの人がそういったお店でパンを買い、点数シールを集めているのではないだろうか。

実は、山崎製パンが運営するコンビニ「デイリーヤマザキ」では、点数シールが集めやすくなっている。デイリーヤマザキではパンだけでなく、おにぎりやお弁当、麺類などの商品にも点数シールが貼付されているからだ。「パンのほかにもさまざまな食品を製造・販売していることをより多くの人に知ってもらいたい」という考えから、2015年から点数シールが貼られるようになったそうだ。

「このキャンペーンは、もともと食パンを買っていただいた方に向けて始まっているので、ポイントの割り振りも食パンのほうが少し高くなっています。もちろん、ほかの菓子パンやデイリーヤマザキの総菜も楽しんでいただけるとよりうれしいです」と松本さん。確実にお皿をゲットするためには、デイリーヤマザキを利用したり、食パンを中心に購入したりするのが近道なようだ。

来年のキャンペーンでプレゼントするお皿について、社内ではすでに議論が始まっているという。今後はどんなお皿が登場するのか、すでに来年の春が待ち遠しい。

取材・文=織田繭(にげば企画)

第1回のキャンペーンでプレゼントされた白いお皿(1981年)。シンプルながら華やかな印象がある。