メディアのニュースや専門家の解説を「それは当たっていない」と批判する人について、会社四季報を100冊読破した複眼経済塾の渡部清二代表は、読者の好みを左右するのは頷けると理解を示す一方、重要なことは別にあるといいます。では、世の中に溢れかえる玉石混交の情報と、どのように向き合っていけばよいのでしょうか、みていきます。

日経新聞は「当たる・当たらない」で読むものではない

メディアが発表するニュースやアナリストたちの解説について、「それは当たっていない」と批判する人がいる。日経新聞についても然りで、初めから「当たらないから日経新聞は読まない」と決めつけている投資家も結構いる。

確かに新聞社には社説のように論調があって、読者の好みを左右するのは頷ける。しかし、重要なことは、書かれている記事をいかに有効活用するかである。

受け止め方は自由だが、日経新聞を「当たる・当たらない」という視点で読むのは間違いであり、四季報についても同様のことが言える。

日経新聞に掲載されている日経平均株価、出来高等々は、結果としての数値であるから、元々「当たる・当たらない」という視点で読むものではない。指標ノート作りに際しては各数値を淡々と書き写せばよく、記事を読んで気づいたことをコメント欄にメモしておけばよいだけの話だ。

ただし、指標ノートのコメント欄に何を書くかが、様々な出来事の変化をとらえるために重要だ。次の3つの視点で日経新聞を読むようにするとよいだろう。

①何が書いてあるかを理解する

記事の内容をそのまま受け止めるようにし、「この記事は当たっていない」「この記事は事実誤認ではないか?」といった感想を差し挟まないようにする。

②考えをまとめる

記事の内容を把握した上で自分の意見を明確にする。

③記事の内容と反対の見方をする

「しかし、こういう見方もできる」という自分の意見を加える。同じ記事を読んでも、受け止め方は各人各様で異なったものになるはずだ。

だが、とりわけ②③の読み方をすることによって、書かれている記事を有効活用できるようになる。そして、肝に銘じておかなければならないのは、とにかく続けることである。

私自身、四季報読破も日経読み合わせも、その切り抜きと指標ノート作りも、始めた当初はきつく感じたことがある。単純とも言えるこれらの作業が役立つ時が本当にくるのかと思ったり、正直に言えば、さぼったりしたこともある。

しかし、慣れてくるとクセのようになって、1つの作業を忘れるとスッキリしないものだ。「継続は力なり」と言われているが、今やこの「三種の神器」の積み重ねは私の宝となっている。

情報は「量」を追うよりも「質」が重要

多くの人が「情報は多ければ多いほどよい」という思い込みをしている。かつて私もその1人だった。

しかし、情報の精度を高めるためといっても情報の量が多ければよいというわけではない。

また、読者の中には「四季報読破・日経新聞の切り抜き・指標ノートだけで情報は足りるのか?」と思われる人もいるかもしれない。

私が証券会社時代に「日経新聞の読み合わせ会議」を始めた当初は、一般紙、業界紙、専門紙も読み合わせの対象にしていて、各自が得た情報を要約し共有していた。そして、こうした方法は広く情報を集めるためには、それなりの効果があると思っていた。

だが、得られた多くの情報の中から活用できる情報をいかにして絞り込むかのほうが重要で、「情報は量を追うよりも質だ」ということに気づいた。これ以降、私が主宰していた読み合わせ会議では、日経新聞のみを対象にするようにした。

この会議に臨むには、毎朝4時に起きて、一面のトップ記事から全ての記事を読み込んでおく必要があった。6時40分から会議に参加する部員は進行役の私から指名され、記事の要点や日々の出来事の背景を説明し、これはと思えるセクターや銘柄を選出しなければならなかった。しかも指名された部員は、私から容赦のない質問を浴びせられるので、早朝から緊張を強いられていたことだろう。

私の質問に対する回答は、短い言葉であることを部員たちに求めた。だらだらと説明するのは容易だが、記事に書かれているポイントとその背景を要約する訓練を続けていくと、記事を正しく理解し、物事を関連付けて考えられるようになると判断したからだ。

「情報の質」という点では、新聞の読み方に注意する必要がある。なぜなら、日頃、誰でも目を通しているはずの1面の記事中にある株式投資のテーマにさえ、気づかないことがあるからだ。

その要因は先入観を抱くことであり、日経新聞を読み慣れている投資家にありがちなことである。また、小さな扱いの記事ばかりに惹かれ、「こんなに貴重な記事があった」と一喜一憂するケースもある。

しかし、誰もが目にしている1面のトップニュースをはじめとして、「この記事にはこう書いてあるが、こう見えないか?」と自分なりの付加価値を見出すことが株式投資に役立つのである。

渡部 清二

複眼経済塾

代表取締役塾長

(※写真はイメージです/PIXTA)