ベトナムの現地メディア『Viet Nam News』より、ベトナム文化や社会における特に経済・金融に関する事象を多角的に分析・解説した記事を厳選。翻訳・編集してお伝えする。

「中国は簡単な市場ではない」

ベトナムの農業・農村開発省(MARD)のレー・ミン・ホアン大臣は、「消費者の健康を守るための規制が近年、ますます厳しくなっているため、中国はもはや簡単な市場だとは言えない」と指摘した。

MARDによると、中国へのベトナムの農産物輸出は、中国の輸出要件の厳格化により、コロナ禍に入って以降、ますます困難に直面しているという。

また、中国の生活水準が向上していることも要因となり、中国に輸出する農産物の生産・販売方法についても、ベトナム企業はこれまで通りのままというわけにはいかないと指摘されている。

これを受けてMARDは、ベトナムと中国、両国の規制や要求に従って、食品安全に関する法律規定の更新と安全な食品製造に関する広告・宣伝を強化することを提案した。

厳しい競争、競争相手はタイ産…

中国の「輸入外国食品を生産する企業の登録に関する規定」という法律と「輸出入食品安全管理弁法」という法律は、2022年1月1日から施行された。

MARDは、ベトナムと中国の食品安全確保に関する規定に従って、企業の監督、検査、フォローアップを厳格に行うとしている。また、食品安全に対する違反行為についても厳しく対処する。

モンカイ国際国境ゲート管理委員会のチャンティ・ビーチ・ゴーック氏は、「ベトナムの対中農産物輸出を促進するためには、企業は新しい管理、生産、ビジネスの方法を考えて行く必要がある」と述べた。

ゴーック氏は、「企業は、輸出製品の農業、漁獲、加工、包装、輸送などの商品の品質を常に改善する必要がある。また、生産方法の安全性担保を加速させ、具体的な基準を設け、生産工程を管理し、中国の要求に応えなければならない。さらに中国市場を開拓するために、メーカーと輸出業者の連携を積極的に強化する必要がある」と述べた。

農業製品・サービスを提供する、バックカン省のバギコ株式会社会長、グエン・ティ・タイン・トゥー氏は、「ベトナムの農産物が中国市場に深く浸透するためには、激しい競争を乗り越えなければならない」と述べた。

たとえば、ベトナムドリアン製品は、タイ産のものが競合ということになる。

さらに、以前は国境貿易業者とだけ競争していればよかったのだが、これからは公的な輸入業者や資金力のある企業と直接的に競争することになる。

中国のパートナーは突如、方針転換する

ホアンカウ・インポート&エクスポート株式会社のディレクターであるグエン・ドゥック・フン氏は、「中国市場との取引は5年間経験してきたものの、中国市場は常に食品安全法を改正しているため、中国への商品輸出は非常に困難である」と述べた。

中国のパートナーは突如として方針変更を発表することが多く、特に新しく中国とビジネスを始める企業にとっては、準備段階で多くの企業が受け身となってしまう。

「20年以上にわたって中国に農林水産物を輸出入してきた」というクアンニン省モンカイ市のフオンアイン・シーフード株式会社代表は、2023年初めから、理由もなく中国への生牡蠣の輸出が許可されなくなったという。両国の関係当局は、輸出入企業のプロセス、規制、条件についてより具体的な指導がなされることを望んでいる。

キャッサバ業界においては、ベトナムキャッサバ協会のニェム・ミン・ティエン常任副会長が「ベトナムは毎年300万トン以上のキャッサバスターチ製品を中国に輸出しているが、その多くは非公式な輸出である」と語った。「輸出を促進するためにはまず、国境貿易政策の安定が必要である」とティエン氏は続けた。

「何か変更があった場合、突然の変更で企業の生産と事業に大きな損失が発生することを避けるため、各企業のための合理的な調整時間も必要だ」(ティエン氏)

産業貿易省は、ベトナムが国境ゲートでの農産物の混雑を克服するため、国境貿易活動において非公式枠から公式枠へ徐々に移行していくと発表した。

国境貿易活動に関する政令14/2018の改正に関する草案によると、同省は2025年1月1日から非公式カテゴリにおける輸出を減らすことを提案している。行商人が行うような非公式な輸出は、より厳しい品質とトレーサビリティ(食品流通における情報を消費者が確認できる仕組み)の基準を満たす必要がある。

2028年からは、商品は公式な割当のもとで陸路国境を経由してのみ輸出されるようになる見込みだ。

ドリアンをはじめ、多くのベトナム農産物が公的な割り当てで中国に輸出されている。(写真:thoibaonganhang.vn)