自分と他人の人格が入れ替わってしまう展開はフィクションの定番。その事実に戸惑ったり、まったく違う境遇を謳歌したり、受け止め方はさまざまだが、無名作家と入れ替わった“最強漫画家”は、自分自身を超えるために漫画道を突き進む――。

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石山諒(@ryoishiyama33)さんが「ガンガンJOKER」(スクウェア・エニックス)で連載中の漫画『龍とカメレオン』は、天才漫画家と天才を憎む無名漫画家、入れ替わった二人がお互いのプライドを懸けてぶつかり合う漫画家バトルを描いた作品だ。SNSで「本気で面白い漫画に出会えた」「続きが気になる」と注目を集める同作。2023年4月21日(金)のコミックス第1巻発売を機に、ウォーカープラスでは本作の見どころや制作の裏側について作者の石山さんに話をうかがった。

■「自分自身」に漫画家として勝利せよ!新人からリスタートする天才の“漫画道”

主人公の「花神臥龍」は、累計発行部数1億5000万部を誇る人気漫画『ドラゴンランド』の作者。8年続く連載作もエンディングが近づき、漫画家として脂が乗り切っていた花神。だがある日、不慮の事故でアシスタントとともに階段から転落してしまう。

意識が戻った花神は、自分の体がアシスタントで新人漫画家の「深山忍」と入れ替わってしまったことに気付く。自分の体を探しに向かうと、そこにはやはり、深山の意識が入っていた。事態を確認する花神に対し、深山は「人気漫画家・花神臥龍」として生きていくと宣言。その姿勢が許せない花神は、「新人漫画家・深山忍」となった自分が描く漫画で、入れ替わりの事実と、自分こそが花神臥龍であることを証明すると宣戦布告する。

無名の上、同業者や出版社の人間からも態度の悪さで鼻つまみ者になっていた深山忍。だが、深山となった花神はそんなことは毛ほども気にせず、持ち込んだ新作ネームで編集者を圧倒。「花神臥龍」を完全にコピーし連載を続ける深山に対し、正々堂々作品をもって勝負を挑む――、というストーリーだ。

■「とにかく熱いストレートな漫画を」手に汗握る漫画バトルが生まれたワケ

正反対の境遇になっても、“龍”のごとく威風堂々と振る舞い漫画への情熱を燃やす花神と、龍を模倣する“カメレオン”として我が世の春を謳歌する深山、二人の熱い“漫画バトル”を軸に描く同作。さまざまな作家が交差する漫画界で、ブレずに自らの道を邁進する花神臥龍の痛快さに惹きこまれる作品だ。

作者の石山さんがこれまで出会った漫画家の「漫画愛」が凝縮されているという主人公・花神の誕生秘話をはじめ、本作の舞台裏について話を訊いた。

――『龍とカメレオン』が生まれたきっかけや、最初のアイデアについて教えてください。

「漫画家を題材にショート漫画を描いた事が最初のきっかけです。そのお話自体はボツになったのですが、漫画家のドラマを描く事に手応えを感じそこから構想を練り始めました。

最初は新人漫画家を主人公に、大人気漫画家と入れ替わり四苦八苦しながら人気作の続きを描くお話でしたが、それでは主人公が辛そうだったので今の形に変えたという経緯があります」

――花神臥龍は入れ替わりを編集に公言するなど、その器の大きさに惹きつけられるキャラクターです。花神を描く上での軸はなんですか?

「花神に特定のモデルはいませんが、軸は僕自身が出会った漫画家さん達の漫画愛みたいな所だと思います。そこから『豪快で強い!でも自己中心的じゃない良い奴!』みたいなキャラクター性を目指して言動は考えています。それが僕の中の理想の主人公像なんだと思います」

――作中、花神が漫画を描く場面やその作品が荒れ狂う龍のイメージで描かれるのも爽快です。

「1話目で、主人公のネームを読んだ編集者が胸を龍に斬られるイメージの見開きがあるんですが、あそこを描いて味を占めました。漫画家漫画なので画面がどうしても地味になりがちで、かといって好き勝手なイメージを毎度絵にすると何でもアリになってしまって“納得感”が薄くなるかなと。“龍が何かをする”という縛りが在れば『ああ、今回は龍をこういう風に使うのね』と読者が納得してくれて、楽しめる要素の一つになると思い描いています」

――花神と深山がバチバチぶつかり合う熱いストーリーで、「熱意」のようなものを読んでいて強く感じます。

「熱意は大切にしています。職業漫画という事もありますが、登場キャラクターは、方向性はどうあれ仕事、すなわち漫画に対しては熱くあって欲しいと思い描いています。ただ一番熱いのは主人公である花神で、熱を広げていくのも花神、中心はいつでも主人公というのが、漫画の基本として忘れない様にこだわっているポイントだと思います。そしてそれに対立する深山も、弱く見えない様に特別力を入れているキャラクターです」

――二人以外の漫画家や編集者も数多く登場しています。今後はさまざまな漫画家の姿が描かれるのでしょうか?

「お話が進めばドンドン増えていく予定です。花神がいろんなタイプの漫画家や編集者と出会いバチバチにぶつかったり、意気投合したりと、賑やかになっていくと思います!是非期待していてください!」

――4月21日にはいよいよ単行本第1巻が発売となります。読者に向けてメッセージをお願いします。

「とにかく熱いストレートな漫画を目指して描きました!経験から描いたエピソードも多いです。1巻に収録されている打ち切り漫画家と編集者のお話は、ドラマという括りなら一番の読み所なので是非!今後はキャラクターも増えてより熱く、密度濃く描いていきますので応援よろしくお願いします!」

取材協力:石山諒 / スクウェア・エニックス

『龍とカメレオン』 (C)2023 Ryo Ishiyama/SQUARE ENIX

無名漫画家と入れ替わった超人気作家。体は変わってもその心は変わらず漫画道を突き進む!漫画家バトル漫画『龍とカメレオン』/(C)2023 Ryo Ishiyama/SQUARE ENIX