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 空き巣や不法侵入者が家に入ってくるという被害はどこの国でも後を絶たない。防犯カメラや緊急アラートなど、様々な手段が講じられているが、イギリスでは数十年前からこんな方法で、防犯対策を行っているようだ。

 それは、1960年代初頭に開発された特殊な塗料『Anti-climbing paint(よじ登り防止塗料)』で、これを家の塀やフェンスに塗り、いつでも「ペンキ塗りたて状態」にする。

 この特殊塗料は、黒や赤など異なる色が揃っていて、見た目は普通のペンキと変わらないのだが、一度塗ると乾燥せず、触れると塗料がべっとりとついて、簡単に洗い流すのは困難になるという。

 確かに手や服にペンキがべっとりつくのは嫌なので、敬遠する侵入者もいるかもしれない。だが、使用においてはメリットとデメリットがあるようだ。

【画像】 防犯に使用する非乾燥のアンチクライミング・ペイント

 1960 年代初頭に、イギリスの「Camrex Paints」によって開発されたアンチクライミング・ペイント(Anti-climbing paint)は、今でも家庭用品店や通販などで入手可能で、安価かつ効果的な侵入防止対策法として使用されている。

 アンチクライミング・ペイントは、その名の通り犯罪者が建物にアクセスしようとするのを阻止するように設計された「よじ登り防止塗料」だ。

 特別なタイプの厚い油性コーティングからなるこの塗料は、防犯対策としてすぐれた効果を発揮する。

 というのも、一度塗ると3年間は乾燥せず、べとべとしたままの「ペンキ塗りたて状態」なのだ。

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image credit:Wikipedia

 壁や欄干、フェンス、パイプ、屋根など、犯罪者がよじ登りそうな場所のほとんどに使用でき、夏でも冬でもその保護特性を維持することが可能だ。

 この塗料、表面上は通常のペンキと同様に光沢があり、中が濡れている状態になっている。

 侵入者がよじ登ろうとして、この特殊ペンキが塗られた部分をつかむと、塗料の表面が破損し、中のやわらかい塗料がねっとりと手につく仕組みだ。

 となると、建物には触れた痕跡が残されることになるだけでなく、手に塗料がついたまま逃走する犯人も、特定される可能性が高くなる。

Anti-Climb Paint. Screw You!

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意図しない訴訟問題に発展する可能性も

 この特殊塗料は滑りやすい性質があるため、自分の建物をこの塗料でコーティングする人は誰でも、責任免除のために塗料の使用を警告する標識を設置する必要がある。

 また、一般大衆が特殊塗料の影響を受けないようにするための注意が必要となり、通常、2.4メートルという特定の高さより上に塗ることが推奨されている。

 強盗や不法侵入者に対しては、塗料が意図したとおり機能するが、逆に意図しない物的損害や重傷を引き起こす可能性もあり、予期せぬトラブルへと発展することもあるようだ。

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photo by iStock

 2015年には、イギリスで、この塗料にまつわる隣人トラブルが発生した。

 隣家の子供たちに、壁によじ登られて窓ガラスを割られたりするという迷惑行為を受けていた高齢者の男性が、この塗料を壁などに塗って子供たちを撃退しようとした。

 案の定、子供たちは手や衣類にべっとりと塗料をつけて帰宅。すると子供たちの母親が、「家のカーペットや家具が塗料で汚された」などと損害賠償金をめぐって男性を訴えたのだ。

 一部の法域では、たとえ不法侵入者であっても、万が一よじ登ろうとして塗料で滑って怪我をした場合には、塗料を塗った家の所有者が怪我の責任を負わなければならない可能性もあるそうだ。

 つまり、この特殊塗料の利点の一つである、「接触するものすべてに付着するため、侵入者を特定しやすくなる」という事実が、欠点となり得る場合があるということなのだ。

Dave Investigates 'Anti-climb' paint.

 なお、一度手や衣類に着いた塗料は、簡単に洗い流すことができない。

 特別な溶剤を使用しない限り、この塗料は従来の塗料を落とすために使用されるほとんどの化学薬品に対して、非常に耐性があるそうだ。

 ということで、アンチクライミング・ペイントは、効果的な侵入防止対策法としては役に立つところもあるが、訴訟に巻き込まれる可能性があることから、実際に使用する前には慎重に検討することが勧められている。

 というか、私のようなうっかりさんの場合には、ペンキを塗ったことをわすれて自分がうっかり触ってしまい、涙目が止まらないという事態になりそうで怖すぎる。

References:Anti-Climbing Paint – A Non-Drying Coating That Could Land Users in Hot Water/ written by Scarlet / edited by parumo

 
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いつでもペンキ塗りたて状態。侵入者を撃退するため「乾かない塗料」で塀や柵を塗る方法