医師からの指導やダイエットなどを理由に、日常的に「糖質制限」を行っている人は少なくないと思います。メリットもデメリットもさまざまある糖質制限ですが、中には「夜、眠れなくなった」「なかなか寝つけないようになった」といった睡眠への影響を感じるケースもあるようです。

 糖質制限と睡眠には、どのような関連性があるのでしょうか。著書に「血糖値を自力で下げるやり方大全」(フォレスト出版)がある、内科医・糖尿病専門医の市原由美江さんに聞きました。

自律神経の乱れによって睡眠に影響

Q.そもそも、糖質制限を行うことで体にどのような変化が起こるのですか。

市原さん「脳は糖質をエネルギーとして利用するので、糖質制限により、記憶力や集中力の低下などを自覚することがあります。また、糖質制限をするとおかずの摂取が多くなり、結果として塩分過多になる傾向があります。こうなると血圧が上がりやすくなり、腎臓にも負担がかかります。

一方、糖質制限をすると血糖値が下がりやすくなるので、例えば『食後高血糖』の影響で食後の眠気やだるさを自覚していた人は、これらが改善する可能性があります」

Q.糖質制限を行うと、「夜、眠れない」など睡眠に影響が出ることがあるのは事実でしょうか。

市原さん「事実です。自律神経には交感神経と副交感神経があり、日中の活動している時間帯は交感神経が、寝る前などのリラックスしている時間帯は副交感神経が優位になってバランスを取っています。糖質制限によって記憶力や集中力の低下が起こり、日中の生活リズムが乱れると、自律神経まで乱れて、睡眠に悪影響を与える可能性が考えられます」

Q.どうしても糖質制限が必要な場合、悪影響を抑えながら行うためのポイントや注意点とは。

市原さん「そもそも、医学的に“糖質制限が必要な状況”はありません。糖質制限は一時的にブームになりましたが、長期的にみると死亡率が上がるなどのリスクが多く報告されています。糖質制限をすることで体重は減りますが、筋肉も減るので代謝の悪い体になり、結果として太りやすくなるのです。

また、糖尿病で血糖値を気にする人が糖質制限をすることがありますが、糖質を制限すると、代わりに脂質やタンパク質、塩分の摂取量が多くなります。そのため、腎臓の負担が増えたり、脂質の代謝に異常が生じる『脂質異常症』が悪化したりと、体への悪影響が起こります。

今は、適量の糖質を取る『糖質コントロール』が主流です。1食あたりの糖質を50グラム前後、多くても70グラムにとどめるように意識してみてください。ちなみに一般的な食事では、主食以外の糖質は約20グラムです」

オトナンサー編集部

糖質制限が「睡眠」に影響?