何かと狭くて、何かと信号が鬱陶しいイメージの高田馬場駅前です。

「昔ながらの街」に変化の動きが

「学生街」として下町の雰囲気が残る新宿区高田馬場駅前が、再開発で変化していきます。とはいっても、周辺が丸ごと変わるのではなく、ゾーンごとに段階的に事業が進められていく予定です。どうなっていくのでしょうか。

再開発の土台となるのは、2018年に区が策定した「高田馬場駅周辺地区まちづくり構想案」と昨年7月に策定された「同まちづくり方針」です。2017年の東京都の「都市づくりのグランドデザイン」で高田馬場の将来像が定められ、具体化に向けて方針が練られてきました。

再開発の背景として、エリア内で建物の老朽化が進んできたことがあります。建て替えが進むにあたって、自由奔放に建て替えさせるのではなく、街の「あるべき姿」に沿った形で建物や街区を作っていこうというのが、行政主導の街づくり計画です。特に高田馬場駅周辺は狭い路地が残り防災面でも課題があるため、街路をどの幅でどこに敷きなおすかといった「街の再構成」も図られます。

「方針」では、高田馬場駅周辺エリアを「ただの乗り換え駅」という存在だけでなく「駅前エリア自体が生活の拠点となるようにしたい」という思いが込められています。

具体的には「共同化と高度利用等による、バラエティあふれる都市機能の集積…広場空間の形成…」などと書かれていますが、一般的には要するに「高層の複合ビルを建設し、テナントを高さ方向に集約し、生まれた土地を歩行者空間へ配分する」という形になります。高層複合ビルは「平面な街」より遥かにキャパシティがあるため、映画館やホテルなど、今まで足りなかった街の機能を呼び込めるようになります。

一方で駅前通りは、広い歩道に低層店舗が並ぶ「歩いて楽しい」街並みにする予定。高層ビルへ機能を集積することで、スペースに余裕が生まれたからこそ実現できる風景です。また昔ながらの商店街が並ぶ北側の早稲田通りやさかえ通りも、「賑わいのある商店街」として活かしていくとしています。

「あれが不便、これも不便」な高田馬場駅、どう変わる?

今までの話は再開発の一般的な話。高田馬場駅特有の「不便な点」は、再開発でいくつも変わっていきます。

●駅西側にまともな交通施設が無い→「西口駅前広場」を整備
とにかく「西側が狭く不便」という高田馬場駅。JRのガード下の狭隘な出口「戸山口」が西側にも抜けられるようになっていますが、北側の早稲田通りに抜けるメイン改札「早稲田口」周辺と合わせ、路地が狭くて収容力に乏しく、街を行き来する人々と流れが交錯し混雑が著しいままです。そこで西側に駅前広場を整備し、タクシーや一般車用のロータリーを整備。駅前の混雑緩和を図るとしています。

●駅の西側と東側が移動しづらい→駅の中央部に「東西自由通路」を整備

とにかく西と東が分断状態となっているのを解消し、ホームの北端と南端にしかない改札のほかに「新改札口」も設置するとしています。「構想案」では、ホームをまたぐ橋上駅舎で東西をつなぐほか、デッキは駅前通りのさらに東側へもつなげるイメージとなっています。

●東側ロータリーの「向こう側」へ行くのが不便→東側広場は「歩行者専用空間」に
バス停が分散していてどこから乗ればいいか分からない→バスのりばを集約
早稲田口から東へ歩く場合、ロータリー内にある歩行者用信号を2つも抜ける必要があります。青信号の時間が短いこともあり、なかなか駅前から出られずストレスがたまる存在です。

そこでこのロータリーを丸々無くし、歩行者用広場にします。ここに東西線への入口が大きく開口する構想もあります。タクシーのりばは先述のとおり西側広場へ機能を移設、バスのりばはロータリー周辺と早稲田通り沿いに分散していたのを1か所に集約し、駅東側ゾーン内で再配置します。

バスのりばの移設先については「構想案」で「BIG BOX1階」「ロータリー東側の3区画」「戸塚第二小学校の1階部分」の3案が挙げられています。改札口からは離れますが、先述のとおり東西の空中デッキが整備されれば、橋上駅舎の改札から直結されることとなります。

他にも「構想案」では、狭いホームを解消するため、駅全体の東西への拡幅や、一部線路の「地下化」「立体化」も案として提示しています。

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再開発のスケジュールですが、まずは「駅東側ゾーン」を優先して進めるとしています。まだ「機運の高まり」レベルの状態であり、都市計画決定や事業化など行政上のスタートを待ち望む協議会が、調整や調査検討を進めています。

山手線の高田馬場駅(画像:写真AC)。