WBCヌートバー選手が、日本チームの主力として大活躍したのは記憶に新しいところ。野球に限らず、どんなスポーツでも、颯爽と現れてチームの危機を救う救世主が必ず登場します。

ということで、本日のテーマは救世主について。ちなみに、山本が仕事で疲れた時に助けてくれるのは一杯のビールです。

野球はチームの総合力の戦いではありますが、ひとりの選手の存在によってガラッとチームが変わることがあります。「ケミストリー(良い相乗効果)」と言い換えてもいいかもしれません。

みなさんは「救世主」というと誰が思い浮かびますか?

今年のWBCでのヌートバー選手は、まさに救世主だと思いました。もちろん、彼ひとりの力で優勝できたとは思いませんが、彼がチームに加わったことで欠けていたピースがカチッとはまり、チーム力が劇的に向上したように感じます。陽気なキャラクターも含めて、まさに侍ジャパン救世主だったのでしょう。

ちなみに、この連載の編集担当さん(40代)の回答は、1988年から1991年まで巨人に在籍した、台湾人選手の「呂明賜(ろ めいし)」でした。同時期にはクロマティさんなど外国人スター選手がいて、登録人数制限により出場機会は限られていたものの、主力選手の怪我で掴んだチャンスをモノにした呂明賜さんは、あっという間に巨人の人気選手になったそうです。

私の愛するヤクルトでいうと、2021年から所属するオスナ選手でしょうか。チームの主軸を担うだけでなく、意欲的に日本の野球に取り組んでくれたおかげで、リーグ連覇を果たし、2021年には日本一になることができたと思っています。

一方で、チーム状況が苦しい時でも、必ず救世主がいます。それは、未来を明るく照らしてくれる存在です。

ヤクルトの成績があまり良くなかった頃、ホームラン王争いをするバレンティン選手はファンの心のよりどころでした。野球ファンは強いチームを応援するわけではなく、好きなチームの勝ち負けに一喜一憂するものですから、そのチームのポジティブな要素を常に見つけなくてはいけません。そういう意味で、バレンティン選手があの頃のチームの救世主だったことは間違いないでしょう。

それまで目立たなかった選手が覚醒するパターンもありますね。シーズンにひとりは現れるこのタイプの救世主も応援を楽しくしてくれます。

2020年シーズンのヤクルト長谷川宙輝(はせがわ・ひろき)投手も、まさにそんな存在でした。育成ドラフト2位で入団したソフトバンクでは、最後まで支配下登録が叶わなかったものの、2019年のオフに支配下登録選手としてヤクルト入りすると、翌年の春キャンプから1軍に帯同し、シーズンでも活躍しました。

その年はコロナ禍で選手が次々と離脱していきましたが、その中で、最後までチームを助けてくれた長谷川投手の存在にヤクルトファンはどれだけ救われたことでしょう。可愛いらしい顔も相まって、九州からやってきた"天使"に見えたくらいです。

結果的に2020年はリーグ最下位に終わりましたが、長谷川投手が私たちの気持ちを明るくしてくれたことは忘れません。今年はファームでの調整が続いているようですが、今後の活躍を心から期待しています。

みなさまの思う救世主、教えてくださいね。
みなさまの思う救世主、教えてくださいね。

育成での入団から"大化け"する選手もいますね。ソフトバンク千賀滉大投手(現メッツ)や甲斐拓也捕手もそう。支配下登録を勝ち取ってチームの主力となっていく様子は、やはり救世主と呼ぶに相応しい存在だったと思います。

他にも、ソフトバンクでは育成から大成した選手がたくさんいますね。WBCに追加招集された牧原大成選手、"代走の切り札"周東佑京選手もそう。

ソフトバンクの豊富な資金力が大きく後押ししている部分もあるでしょうが、育成出身の選手の活躍は他球団のファンでも嬉しいものがあります。常に泥臭く、アグレッシブプレーをする姿は胸を打ちますし、そんな選手に夢を託したり、自分自身と重ねたりする方もいるでしょうね。

今シーズンの「救世主候補」の筆頭は、DeNAのバウアー投手でしょう。

レッズ時代の2020年に、MLBの最優秀投手賞にあたるサイ・ヤング賞を受賞した投手が来日する、というニュースは大きな話題になりました。バウアー投手が2軍戦で登板した4月16日外出していたのですが、家にいる父から連絡が来ました。

「今すぐ、バウアーが投げている試合を見たほうがいいよ」

そうして、DeNAが配信している動画を見て本当に驚きました。

変化球のキレは抜群ですし、何より目をひいたのがコントロールの良さ。ランナーを背負ったときのギアの上げ方も超一流。ランナーを背負った時のほうが、ストレートも速く感じましたし、キレの増した変化球がバシバシ狙ったところに決まるんです。

そして思いました。

横浜優勝、あるかも」

現在、5月上旬の1軍登板を目指して調整中のバウアー投手。ヤクルトファンとしてはツラいところではありますが、バウアー投手の活躍でプロ野球が盛り上がるのは素晴らしいこと。そして、そんな超一流選手を攻略してこそ、ヤクルトリーグ3連覇が見えてくるというものです。

果たして、バウアー投手はDeNA救世主になるのか。5月の登板が今から楽しみですね。それではまた来週。

★山本萩子(やまもと・しゅうこ)
1996年10月2日生まれ、神奈川県出身。フリーキャスター。野球好き一家に育ち、気がつけば野球フリークに。
2019年より『ワースポ×MLB』(NHK BS1)のキャスターを務める。愛猫の名前はバレンティン

構成/キンマサタカ 撮影/栗山秀作

【画像】山本萩子キャスター 2023年春の最新画像!

野球の「救世主」について語った山本キャスター