チャットGPTについていくつかの、大きな動きがありました。

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 今後の世界的な普及を阻害していた、イタリアの利用停止が解除されたのです。

 イタリアのデータ保護監督当局は4月28日、対話型AI「チャットGPT」に対する使用制限を解除すると発表しました。

 これは、米国の開発企業OpenAIがイタリアの要求に応じて、個人データの管理やユーザーの年齢確認に関する改善策を提示したためです。

 イタリア当局の発表によれば、OpenAIはAI学習に使用される個人データの収集および処理方法に関して、ウエブサイトで情報を公開することに合意しました。

 また、利用者の年齢確認を行うために生年月日の入力を求めることになります。

 さらに、欧州では利用者が自分の個人情報をAI学習から除外するための手続きを提供することができるのです。

 ここに至る経緯を簡単に振り返りましょう。

 2023年3月末、イタリア当局が個人データが不正に収集された疑いがあることを理由に、チャットGPTの使用を一時的に禁止すると発表しました。

 また、13歳以上のユーザーを対象とする年齢確認手続きが不十分であると指摘し、OpenAIに4月30日までの改善策の提出を要求しています。

 4月5日には、OpenAIとオンラインで会議が開かれ、イタリアおよび欧州における個人情報保護に関する話し合いが行われました。

 チャットGPTは、インターネット上の膨大なデータを学習し、ユーザーからの質問に自然な文章で返答することが特徴です。

 2022年11月の公開以降、短期間で世界各地に広まりましたが、個人データの不適切な収集や著作権問題への対処が課題となっていました。

チャットGPTによる国会答弁

「AIが作成した質問を岸田首相に投げかけたい」と、新型コロナウイルス対策の特措法改正案などを審議中の内閣委員会で、立憲民主党の中谷一馬議員が申し出ました。

 チャットGPTによって作成された質問は、「改正案は地方自治体や医療関係者の意見を十分に考慮しているか、また関係者からの反応はどのようなものか」というものです。

 この質問はわずか20秒で生成されたといいます。

 岸田文雄首相は、「感染症対策を行ってきた地方自治体や医療現場の意見を取り入れ、問題点に対処しながら策定された。改正案は、寄せられた意見や要望に対して十分に対応している」と回答しました。

 中谷議員は、AIによる首相答弁も紹介し、「AIが作成した答弁の方が、もしかすると首相の答弁よりも誠実で的確であるかもしれない」と指摘したのです。

 3月28日に、私が岸田派の勉強会でチャットGPTの講師を勤めた翌日の出来事になります。

「オープンAI」のCEO来日

 チャットGPTの運営会社である「オープンAI」のCEO(最高経営責任者)、サム・アルトマン氏が総理大臣官邸を訪問し、岸田総理大臣と会談しました。

 会談後、アルトマン氏は報道陣に「非常に良い会談だった。岸田総理とAI技術の利点、欠点をどのように改善していくかについて意見を交換した」と語っています。

 また、岸田総理は官邸を出る際に、記者団に「新しい技術が登場し、利用される一方で、プライバシーや著作権などのリスクも懸念されている現状について話し合った。国際的なルール作りに関しても意見を交換した」と語りました。

 アルトマン氏はその後、自民党の「デジタル社会推進本部」の会合に出席し、「AIの開発が技術革命をもたらすと信じており、日本が果たす役割は非常に重要だと考えている」と述べました。

 会合参加していた初代デジタル大臣の平井卓也デジタル社会推進本部長から直接話しを聞いたところ、会合でアルトマン氏は日本に新たな事業拠点を設置する意向を示したとのことです。

 会合後、アルトマン氏は記者団に対し次のように語りました。

「日本でいくつかのプロジェクトを始め、『チャットGPT』を日本語や日本文化に適合させた優れたモデルにしたい。日本の研究者とも協力したい。数か月後には再び日本を訪れる予定だ」

 チャットGPTに指示を出す、プロンプトという手法については、サム・アルトマン氏は、チャットGPTの方で改善が進むのでコツを覚える必要がないといっていたのです。

 しかし、同席者である日本で生まれた、オープンAI日本担当のシェイン・グウ氏は、ほかからも人間のように自然な対話形式でAIが答えるチャットサービスが登場するので、プロンプトこそAIと対話する上で最重要だと述べていたそうです。

 私と平井本部長は、シェイン・グウ氏の考えに近いものがあります。
どんなに優れた人材でも、生かすも殺すも指導者次第です。

 AIに優れた仕事をさせるのは、利用者の力量にかかっており、使い方次第ではないでしょうか。

グーグルの副社長も来日

 先進7カ国(G7)デジタル・技術相会合が群馬県高崎市で開催されました。その出席のために海外のIT大手企業の幹部たちが続々と来日しています。

 米グーグルのミカエラ・ブロウニング副社長は、平井卓也デジタル社会推進本部長と会談し、AIについて意見交換しました。

 もちろん今後出てくるであろう、チャットGPTの対抗馬と呼ばれるグーグルの対話型AI「Bard」について、かなり具体的な話しをしたそうです。

 G7デジタル・技術相会合の出席企業は、この機会を重視しており、積極的に関係者と会談を設けています。

 AI企業の日本詣でが相次ぐ中、デジタル社会推進本部は、積極的に対話型AIの活用を推進していくということです。

 その中でも日本語でAIに指示ができる、プロンプト教育に力を入れ、英語優位のプログラミング教育からの脱却を目指したいということろではないでしょうか。

 プロンプトこそ、対話型AIとのコミュニケーションの要になると予想されます。

 先生が質問して生徒が答えるという教育ではなく、回答力よりも質問力を鍛える教育が求められるでしょう。

人とAIの二人三脚

 チェスの世界的な大会でIBM人工知能である「Deep Blue」が、1997年にチェスの世界チャンピオンであるゲーリー・カスパロフに勝利しました。

 このニュースは世界中を駆け巡り、チェスでさえAIに取って変わられると思われたのです。

 これによって、チェスの大会は終わってしまったのではなく、翌年に驚くような出来事が起きました。

 人間とAIの協力プレーが行われるようになったのです。

 チェスにおいて、人間とAIの協力プレーが行われる形式は「ケンタウロス チェス」または「アドバンスド チェス」と呼ばれています。

 この形式では、人間のプレーヤーとAIがチームを組み、一緒に試合を行うのです。

 この考え方は、1998年にかつての王者であったゲーリー・カスパロフが提唱し、それ以降様々な形で実施されています。

 ケンタウロス チェスでは、人間のプレーヤーが自分の知識と直感を活用し、AIは数百万通りの局面を高速で計算して最適な手を見つける力を活用します。

 この協力によって、人間とAIがお互いの強みを生かしながら、より高いレベルのチェスの対局が可能になります。

 実際に、人間とAIのチームは、単独でプレーするAIや人間よりも強いのです。

 このような二人三脚の試合は、人間とAIがお互いに協力し合いながら問題解決や意思決定を行うことの可能性を示しており、チェスだけでなく、様々な分野で応用される可能性があります。

 だからこそAIに指示を出す、プロンプトが重要なのです。

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