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(写真:PIXTA)

全国でもがんの罹患率が最も低い沖縄県でよく食べられている豆腐には、女性の体をがんから守る作用があるという。その仕組みと効果的な食べ方を専門家が教えてくれた。

女性の2人に1人が一生のうちになるというがん。「国立がん研究センター」の最新データ(’19年調査)によると、全国で女性のがんの罹患率がもっとも低いのは沖縄県だ。とりわけ女性のがん死亡数が最も多い大腸がんとその次に多い肺がんでは、沖縄県の罹患率は全国でも最低。

そんな沖縄県県庁所在地である那覇市は、豆腐の購入額が全国1位(総務省家計調査。2人以上の世帯、’20〜’22年の平均)だという。沖縄県民は、年間6千959円も豆腐にお金をかけているのだ。

豆腐好きの県民性を沖縄県栄養士会の村濱千賀子会長が語る。

「沖縄独特の『島豆腐』は硬めでくずれにくく、炒め物や煮物、揚げ物などさまざまな調理法で食べられます。みそ汁や、にがうりを炒めるゴーヤチャンプルーにも豆腐が不可欠。風邪や疲労回復にはやわらかい豆腐をだし汁で食べる『ゆし豆腐』も人気です」

そんな豆腐好きの沖縄県民。がん罹患率の低さとも関係がありそうだ。

「世界中の調査研究を統合して分析する『メタアナリシス』という調査で、豆腐などの大豆製品による乳がんの予防効果が確かめられています」

こう語るのは、東京大学医学部附属病院放射線科の中川恵一特任教授。がん予防のメカニズムはどのようなものなのか。

「乳がん細胞は、女性ホルモンのエストロゲンと結合して、がん細胞の分裂・増殖を促します。大豆製品に含まれる大豆イソフラボンはこのエストロゲンと化学構造が似ているため、エストロゲンと勘違いした乳がん細胞の受容体が結合して、エストロゲンをブロック。がん細胞の増殖が抑えられるのです」(中川先生)

さらに、豆腐に豊富に含まれる大豆イソフラボンには、大腸がんや肺腺がんのリスクを下げるという研究も報告されている。

武庫川女子大学国際健康開発研究所の家森幸男所長(京都大学名誉教授)が解説する。

「がん細胞は、健康な人の体の中でも毎日発生しています。免疫などによって退治されずに残ったがん細胞は、新しい血管を作る『血管新生』を起こして、血液中の栄養を吸収し増殖しますが、大豆イソフラボンにはこの『血管新生』を抑える効果があり、がん細胞が栄養を取り込むことができなくなるのです。

また血中で女性ホルモンと似た働きをする大豆イソフラボンは、血管の内皮細胞の遺伝子に働きかけて一酸化窒素を作り出します。この一酸化窒素によって動脈が拡張し、血液もサラサラになって血栓ができにくくなるのです。また、血圧を低下させ、動脈硬化を抑える善玉コレステロールを増やす効果もあります」

がんと深い関わりがある高血圧症や糖尿病などの生活習慣病の予防も期待できるようだ。

■豆腐をしょうゆで食べるのはもったいない

そんな“スーパー食材”である豆腐。より健康的な食べ方を、家森先生が教えてくれた。

「呼吸して取り入れた酸素の2%ほどは、体内でほかの物質を酸化させたり遺伝子を傷つけたりする『活性酸素』に変化。この活性酸素は、大豆イソフラボンによって作られる一酸化窒素の効力を弱めてしまいます。

そのため、豆腐は活性酸素の働きを抑える抗酸化力が高い、ゴーヤやパプリカなどの野菜と組み合わせるのがおすすめです」

また“調味料”にも注意が必要だ。毎日のように冷や奴にして食べているという人も多いと思うが、淡泊な味だからと必要以上にしょうゆをかけていないだろうか? 家森先生が続ける。

兵庫県で調査したところ、豆腐や納豆などの大豆製品をしっかり取っている人は、大豆製品をあまり取っていない人と比較して1日の食塩摂取量が4〜5gほど多いことがわかりました。天然サプリともいえる大豆製品をせっせと食べても、高血圧を招く食塩を過剰に取ると、せっかくの効果が失われてしまうのです。

世界中の長寿食を見てきましたが、蒸し料理は食材の味が凝縮されるため、塩分が少なくてもおいしくなることがわかっています。豆腐は、しそやしょうが、ねぎなどの抗酸化栄養素が多く含まれる香味野菜と一緒に電子レンジで蒸し調理をするのがおすすめです」

前出の村濱さんによると、沖縄料理にもだしを活用して、薄味に仕上げるものがあるという。

「沖縄には『ンブシー』という豆腐と野菜をだしだけで蒸し煮にする調理法があり、へちまやゴーヤなどを使った味つけの薄い豆腐料理をよく食べています」

ただし、大豆イソフラボンは、さまざまな健康効果がある一方で、摂取量には注意が必要だと、中川先生。

「豆腐なら1日の摂取量は1丁程度までがよいでしょう。健康にいいからと、大豆イソフラボンをサプリなどで過剰摂取するのはやめましょう」

健康の強い味方、豆腐パワーでがんから身を守ろう!