対話型AI「ChatGPT」は文章を生成できるAIとして注目を集めています。今後「ChatGPT」の活用によって、日常生活やビジネスにどのような変化が起こるのか。日本最大級のAIライティングアシスタント「Catchy」の事業責任者である古川渉一氏が、ITライター酒井麻里子氏との共著『先読み!IT×ビジネス講座 ChatGPT 対話型AIが生み出す未来』(インプレス)において解説します。
文章生成機能に注目が集まる対話型AIの「ChatGPT」。こうした人工知能の活用は、ビジネスや日常生活にどのような影響を与えるのでしょうか。ITライターとして活躍する酒井麻里子氏(以下酒井)が聞き手となり、株式会社デジタルレシピ取締役・最高技術責任者である古川渉一氏(以下古川)が、「ChatGPT」の今後について対話形式で解説します。
創作活動に役立てる
ビジネスなどの実用的な分野だけでなく、創作の分野でも文章生成AIを使うことはできるのでしょうか? 文章生成AIを使った小説などの現状を聞いてみました。
AIは小説も書ける!
酒井:小説などの創作でも、文章生成AIは使えるんでしょうか? 創作は「人間だからできるもの」というイメージもありますが……。
古川:小説を生成するAIは、じつは日本ではChatGPTが登場する以前からかなり活発に使われているんですよ。
酒井:小説に特化したツールがすでにあるということですか?
古川:日本発のサービスなら、「AIのべりすと」「AI BunCho」などがあります。
酒井:「AIのべりすと」の場合、小説の書き出し部分を入力することで、続きを生成できるんですね([図表1])。
古川:キャラクターの設定や、会話と地の文の比率、改行の量といった小説の細かい部分の設定もできます。
酒井:一気に続きが生成されるわけではなく、数行ずつ書き足されていって、納得がいかない場合は再生成もできるんですね。試行錯誤しながら、理想の形に近づけていけそうです。
古川:生成のテクニック次第では、かなりクオリティの高い作品を生み出すこともできます。実際に、文学賞の「星新一賞」では、2022年にはAIで作られた作品が入選しています。
酒井:そもそも、AIを使った作品で文学賞に応募できるのですか?
古川:星新一賞の場合、応募規定で「人間以外(人工知能等)の応募作品も受け付けます」と明記されているんです。
酒井:募集要項に書かれた、(人工知能の作品を応募する場合は)「連絡可能な保護者、もしくは代理人を立ててください」という注意書きはなんだか不思議な感じですね。
古川:これは先進的な試みの1つではありますが、創作の領域でもAIの活用は少しずつ受け入れられ始めていると思います。
酒井:でも、やっぱり現時点では、AIを使って小説を書くことに対して、批判的な見方をする人もいるのでしょうか?
古川:もちろん、肯定的に受け入れる人ばかりではないと思いますよ。小説投稿のプラットフォームによっては、完全にAIだけで作った作品の投稿に一定の規制を設ける動きも出ています。
酒井:画像生成AIなど、ほかの生成系AIの創作でも同じような課題や議論を耳にします。しばらくの間は賛否いろいろな声が挙がるのかもしれないですね。
AIが標語や俳句を作ることは可能?
酒井:AIが苦手な創作の分野もあるんでしょうか? たとえば、標語のような短いものは、かえって難しかったりしますか?
古川:そんなことはないと思いますよ。標語については、キャッチコピー生成の要領で作ることができます。さらに、過去の標語コンクールの入賞作品を学習させて、それらしい標語を作るなんていうことも可能かもしれません。
酒井:なるほど。一定の型があるものはAIでも比較的生成しやすいということですね。俳句などはどうですか?「季語を必ず入れないといけない」など、独自のルールが多いので難しそうです。
古川:ChatGPTそのままでは難しいと思いますが、これも俳句に特化した学習をさせることで可能になるかもしれませんよ。
酒井:あらかじめそれぞれの季節の季語を学習させておいて、指示をするときに「春の季語を必ず1つ使ってください」と指示するようなイメージでしょうか?
古川:そうですね。特定の目的に合わせたテキストを生成したい場合は、ChatGPTやGPT-3などのモデルそのままではなく、目的に合わせた調整を行うことで最適化が可能になります。
酒井:その調整次第では、いろいろなジャンルの創作でAIを使える可能性があるということですね。
酒井:小説など創作分野でのAI活用が、想像以上に進んでいることに驚きました。今後はAIと人間の協業で作られた作品もたくさん生み出されるようになっていくのかもしれません。
古川 渉一
株式会社デジタルレシピ
取締役CTO
酒井 麻里子
株式会社ウレルブン
代表・ITライター
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