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 細菌といえば、土の中や澱んだ水の中にいるものと思うかもしれない。だが、彼らは空にもいる。驚いたことに、それらは抗生物質への耐性すら備えているのだ。

 『Science of The Total Environment』(2022年12月29日付)に掲載された研究では、カナダフランスの研究チームが、空に浮かぶ雲の中で大量のスーパーバグ、薬剤耐性菌の遺伝子を発見したと報告している。

 一体なぜそんなところに、しかもよりにもよって薬剤耐性菌がいるのだろうか? どうやら細菌は想像以上に舞い上がりやすく、それゆえに地上の活動は空の上の雲にまで影響を与えているようだ。

【画像】 空に浮かぶ雲の中にスーパーバグ、薬物耐性菌

 従来の抗生物質が効かない「薬剤耐性菌」は、スーパーバグとも呼ばれ、世界の医療にとって重大な脅威とみなされている。

 厚生労働省のレポートによれば、それで亡くなった人は2013年に少なくとも70万人。2050年には1000万人に増加すると予測されている。

 その脅威から身を守るためには、細菌そのものだけでなく、それがこの地球のどこで発生し、どう移動しているのか知ることが大切だ。

 ラヴァル大学(カナダ)とクレルモン・オーヴェルニュ大学(フランス)の研究チームは、フランスにある標高1464メートルのピュイ・ド・ドーム山山頂で、2年間にわたり雲を採取。そこに含まれているものを分析した。

 すると、雲の中には水1ミリリットルあたり約8000個の細菌がいたばかりか、同じ量の水に薬剤耐性菌の遺伝子が平均2万以上も含まれていることがわかったのだ。

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 そうした細菌は、雲の種類によっても違いがあった。海を通過した雲と陸を通過した雲では薬剤耐性菌の種類が異なり、とりわけ陸を通過した雲には家畜に使われる抗生物質に耐性を持つ細菌が多く含まれていた。

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なぜ雲に細菌が存在するのか?

 本研究の筆頭著者であるラヴァル大学のフローラン・ロッシ氏は、今回の研究について、「雲にほかの自然環境と同レベルの薬剤耐性菌の遺伝子が含まれていることを示した初のもの」と、プレスリリースで述べている。

 ロッシ氏によると、雲の中で見つかった細菌は、普通なら植物や土の表面に生息しているものだという。それがなぜ雲の中で見つかったのだろうか?

 どうもそうした細菌は、風や人間の活動によってエアロゾル(気体中に浮遊する微小な液体または固体の粒子と周囲の気体の混合体)となり、大気中に舞い上がってから雲になっているようだ。

 また薬剤耐性菌の遺伝子が大量に含まれていたのは、畜産業で使用される抗生物質が主な原因ではないかと推測されている。

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photo by Pixabay

 しかも、こうした細菌入りの雲は、薬剤耐性菌の遺伝子を拡散させる運び屋であるとも考えられるという。

 今後の研究で、人間のどんな活動が細菌の排出源になっているのか突き止めることができれば、より効果的な封じ込め作を考案できるかもしれないとのことだ。

References:Scientists discover antibiotic resistance gen | EurekAlert! / written by hiroching / edited by / parumo

 
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空に浮かぶ雲の中から薬剤耐性菌の遺伝子を大量に発見