「前向き駐車」「バック駐車」どちらがしやすいのでしょうか。高速道路のSA・PAでは、"前向き駐車しかできない”駐車場が増えている一方、それをバック駐車に改める動きもあります。

3年半ぶり完全復旧したPAは「前向き駐車強制」になっていた

閉鎖されていた西湘バイパスの西湘PA(下り、神奈川県小田原市)が2023年4月29日(土)にリニューアルオープンしました。2019年台風19号による高波で壊滅的な被害を受け、仮営業、全面閉鎖を経て3年半ぶりの完全復旧です。津波に備えた地盤の嵩上げや、海側にあった建屋を山側に移設するといった抜本的な災害対策が施されました。

もうひとつ、駐車場にも大きな変化がありました。それは、小型車用の駐車マスが「前向き駐車」オンリーになったことです。

被災前の小型車駐車場は、U字型の通路(一方通行)に対し、両サイドに“斜め後方”向きの駐車マスを配置し、バック駐車を前提としたものでした。今回はそれを“斜め前方”向きにしています。U字の中間の駐車マスは縦に2マスつながっているものの、その間にポール(ボラード)が設置され、通り抜けできなくなっています。

バックで停めて前進で出ることも、できなくはなさそうですが、かなり鋭角に切り返す必要があり、駐車場の手前には「前向き駐車でお願いします」との看板が立っています。

この構造にした理由について、報道公開時にNEXCO中日本の担当者へ聞いたところ、駐車エリアの構造を考慮しつつ、「繁忙期も想定し、頭から入れるようにして停めやすくした」と話していました。確かに西湘PAは全国でも最も海に近いPAのひとつで、眺めはバツグン。遮るもののない朝焼けなどを望めることから、正月などは混雑します。

実は、こうした「前向き駐車」前提の駐車場レイアウトは近年、新東名など新しいSA・PAで多く採用されています。しかし、デメリットもあり、レイアウトを改めた箇所もあります。

「前向き駐車強制」をやめて「バック駐車強制」にしたところも

新東名の静岡SA上り線や浜松SAの上下線は、駐車場の拡張にあわせ、通路に対し斜め前方向きの駐車マスを、斜め後方向きに引き直し、「バック駐車・前進出庫」へと変更しています。

というのも、通路の左右から同時にバック出庫するクルマどうしの衝突事故が発生していたそう。ちなみに変更前は、駐車車両の前方に歩行者用通路があるため、「頭から出る」ことができない構造でした。

バック出庫の際は、反対側から出庫するクルマがルームミラーに映りにくく、相手を認識しづらかったと考えられます。しかし、斜め後方に引いたマスへバック駐車する構造であれば、駐車マスの端までルームミラーに映るので、直角配置の駐車マスよりもバックがしやすいということでした。

また、そもそも「バックの方が駐車しやすい」という利用者の声も、駐車場レイアウトの変更に反映したと、NEXCO中日本は話していました。

しかしながら、「バック駐車がどうにも苦手」という人も少なくありません。そうした人には前向き駐車のほうが確かに停めやすいでしょう。混雑時を想定すると、駐車時にもたつかれるよりも、前向き駐車で素早く停めてもらい、出庫時は、クルマがいないタイミングを見計らって、ゆっくり出てもらう――その方が効率的にはよいのかもしれません。

リニューアルオープンした西湘PA下り線には小型車駐車場に対し「前向き駐車でお願いします」との看板が(乗りものニュース編集部撮影)。